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“デザイナーの孤立”を(ほんのりと)味わってみて

事業会社のデザイン組織作りに関して、勉強会とかWeb記事でよく見かけるデザイナーあるあるの2トップは
「デザイナー、組織内で孤立する問題」
「デザイナー、やること多すぎて独り潰れゆく問題」かなと思っています。

長らく制作会社で受託でデザインやってきた私は、これらのあるある話に「そうだよねーそうなるよねー」と共感して理解した気になっていたのですが、数日前より業務委託の形で事業会社の常駐デザイナーを始めたところ、実感を伴って理解できてきました。

面白いので余裕あるうちに自分の言葉で整理・分析してブログ記事化しておこうと思います。
あ、愚痴じゃないです。まだ愚痴が出るほど稼働してないです。

デザイナーは2人以上でないと機能しない

デザインワークは、1人で取り組んでると段々と客観視が出来なくなります。いわゆるイケア効果的なやつで、自分で作ったものに対してはどうしても過大評価をしてしまいます。自分のアウトプットを素晴らしいものだと思い込んでないとデザインなんてやってらんないですし。

一方で、デザイナーは「自己のアウトプットを過大評価してしまうもんだ」という事実を一般論として知っています。ので、「いま作ってるコレ、他人から見たら全然しょぼいんじゃねぇのか?」と常に不安を抱えています。

その心理を差し引いても、デザイナーは「自分の作ったものは正しいのか」と常に脳内で問い続けています。
デザインには画一的な正解は存在せず、作り手の数ぶん、ユーザーの数ぶんの正解があるためです。

そんな心理状態でアウトプットするので、他者からの「それは良くない、間違ってる」という指摘に弱いです。「やはり違ったか」と素直に耳を傾けてしまいます。

一方で、指摘者が非デザイナーの場合、その指摘には納得しづらいです。
どういう視点から来た指摘なのか?個人的な好みなのか?その指摘が正しい根拠は?と疑問に思いますが、大抵の場合その疑問は上手く言語化できず、言語化できたとしても、指摘者側もまた上手く説明できないものです。

結果、段々とデザイナーが自分で考えるのをやめて、「納得できない指摘をそのまま受け入れて形にするだけの人」になってしまい、何も主張しない、「孤立した」状態になってしまうのではないでしょうか。

では、「デザイナーを100%信頼して、何も意見せずに好きなように作らせれば良いのか」というと、それもダメです。デザインには多様な視点、多面的な意見が不可欠ですし、独りで作ると「自分の作ったものへの過大評価」から抜け出せません。それもまた「孤立した」状態と言えます。

ここで、デザイナーがもう1人その場にいるだけで、状況は大きく変わってきます。
誰かに「お前の考えは間違ってる」と指摘された時に、デザイナー視点(≒ 俯瞰的なユーザ目線)を持つ第三者が「いや、間違ってないよ」と言ってくれれば自信を持って考えを主張できますし、「たしかにそこは直すべきだね」と言ってくれれば納得してスムーズに次へ進めます。

デザイナーが実力を100%発揮するには、2人以上居なければならないということ、断言できます。

デザイン作業のペース・労力を知られていない

非デザイナーからデザイン作業を依頼された場合、ほぼ間違いなく、恐ろしく短い期間でのアウトプットを期待されます。
デザイン作業は試行・改善を繰り返すものであり、どんな小さい単位のタスクであっても複数のボツ案・再考が発生します。
ですが、依頼者から見えるのは最終的なアウトプットのみです。過程を丁寧に可視化して説明するデザイナーもいますが、このあたりは同種の制作業務に就いた経験をもたない人に理解してもらうのは難しいです。

あと、「なぜ期待された期間内でアウトプットできないのか」を説明するのは「自分は無能だ」と主張するようで心理的にツラいです。その説明に労力を割くモチベーションが湧かず、要求をそのまま受け入れて品質低いアウトプットを出してお茶を濁しがちです。
(品質を落として、かつ体力的に無茶すれば、大抵の場合は作業期間を3分の1くらいに圧縮できます。場合によっては10分の1以下にもなります。が、そのアウトプットは負債となり、より多くの修正要求を生み出す源となる可能性大です。)

よく耳にする「UIデザイナーが何もかも押し付けられて潰れる話」はこのあたりに起因するものと思われます。

そんな状況に陥りつつある時に、「そんな短期間で出来るわけないじゃん」とか「そんな品質で世に出したらダメだろ」と客観的な意見をくれる同僚デザイナーが1人でもいれば、事態はだいぶマシになります。

(なお、デザイン作業に時間を要する理由として「ボツ案・再考」を挙げましたが、他にも多様な要因があります。このあたりを詳しく書くと記事が3万文字くらいの超長文になってしまうので、それはまた別の機会に。)

デザインチームを野球に例えてみる

書籍「デザイン組織の作り方」にて、デザイナーの種類に以下7つあることが説明されています。

・プロダクトデザイナー
・コミュニケーションデザイナー
・ユーザーエクスペリエンス・リサーチャー
・デザインプログラム・マネージャー
・サービスデザイナー
・コンテンツストラテジスト
・クリエイティブテクノロジスト

さらに、デザイン組織に置くべき4種のリーダー職も説明されています。

・デザイン部門長
・デザインマネージャー/デザインディレクター
・クリエイティブディレクター
・デザインプログラムマネジメント・ディレクター

無論、これら11個の職種を担うメンバーが必ずしも必要なわけではなく、兼務したり非デザイナーで補ったりするのが一般的です。

ということを踏まえて、デザインワークを草野球に例えてみます。

野球は9つのポジションがありますが、野球というゲームには必ずしも9人必要ではありません。
子供が広場で草野球するような状況をイメージしてみてください。
ピッチャーが内野手を兼ねてたり、センターが居なくて2人で外野守ってたり。そもそも外野なんて無かったり。

野球というゲームを成り立たせるに、1チームに最低限必要な人数って何人でしょう。私は2人だと考えます。ピッチャーとキャッチャーの2人で、ゲームはギリ成立します。

けど、ピッチャー1人では成立しません。相手チームの打者全員に振り逃げされて、アウトが1つも取れません。
(打者全員デッドボールで潰すとか事前に敵チームのドリンクに毒仕込んどくとか、まあ手段は無くは無いですが、それはもはや野球ではないかと。)

デザイナーも同じだな、と思うのです。1人では成立しない。バットで打ち返す人だけじゃダメで、ミットで受け止めて投げ返す人が必要なのです。

(1人で活躍しているように見えるデザイナーも世の中には居ますが、この人らにも、傍にデザイナー視点で語り合える人が居るのでしょう。きっと。)

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などと、書きなぐりつつ考えを整理してみました。

よーし、まずは組織内にもう1人デザイナーを加えることを主張するところから始めよう。

や、その前にまずは業務で役に立って、信頼を得るところからかな...。
まあ焦らずいきますよ。

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続編的な記事書きました。


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