図0

なくてはならない存在になってはいけない論(または、「デザイナーは不倫相手のようで在れ」)

こんにちは。UIプロトデザイナーのノムラです。
UIプロトデザイナーて何やねん、て思った人は https://goo.gl/5eDMnL をどうぞ。


しばらく前からなのですが、受託でデザインする人間は
「なくてはならない存在になってはいけない」と思っています。

ここ10年くらい、へっぽこフルスタックデザイナーとして生きてきました。
“フルスタック”と言ってみましたが、実際は無軌道に全力疾走してたら何だか色々身についてた、という具合です。

基本的に、予算と納期が無茶でなければ選り好みせずに仕事受けてきました。
ビジュアル作りもUI設計もフロントエンド実装も。調査とか講習会とかも。HTMLもCSSもJSもActionScriptもXAMLもC#もVBもJAVAもPHPもSwiftもMovableTypeもWordPressもAngularも。仕様書作成もテストも。

多様な領域をそつなくこなしてきた、などと言うスマートなものではなく、未知の領域に踏み込んでは四苦八苦しつつ切り抜けてきました。

そんな風に働いてるとどうなるかと言うと、お客様から頼っていただけます。
お客様からすると「コイツ大概のことはなんとかしてくれるぞ」と思える外注先が居るのは心強いようで、重宝がられます。
こちらの四苦八苦七転八倒ぶりも伝わっているようで、義理も感じていただけるようです。

一度信頼を得れば継続的に仕事をいただけます。
そんなこんなで長期的に仕事をいただいていると、いずれお客さんはあることに気づきます。

「コイツに仕事断られたらプロジェクト回んねえぞ」と。

その一方で、四苦八苦七転八倒して作成したデザインデータおよびソースコードは、往々にしてメンテナンス性に欠けます。
未知の領域を学習しつつの制作は、技術に対する知識・常識が備わっていない状態で進行しがちです。
するとアウトプットが無駄にオリジナリティ満載となり、
ガチで「コイツにしかデータいじれないじゃねえか」状態に陥ります。

お客さんにしてみれば、その状態は単純に脅威です。
そしてその脅威を取り払うべく、対策が講じられます。
すなわち、お客さんが離れていきます。

これって結局のところ、私の配慮不足と怠慢が原因なわけです。
請け負った業務に対して、「汎化」「手法の整理」「デファクトスタンダートの適用」といったこと(ひっくるめて「プロセス化」とします)が出来ていないから、悪い意味で「なくてはならない存在」になってしまう。
お客さんにとっての「頼れる存在」から「居ないとやばい存在(脅威)」に
なってしまうわけですね。

プロは「誰にも作れないものを作る」だけではダメで、
「その手法をプロセス化する」ところまでやらねばいけないわけですね。

「プロセス化に成功して『誰でも作れる』状態にしてしまったら、結局他所に仕事奪われちゃうんじゃない?」と懸念する方もいらっしゃると思いますが、その点はあまり心配ないと思っています。

きっちりプロセス化して、メンテナンス性の高いアウトプットを提供出来たならば、お客さんからは「何かの事情でこの人が外れてもプロジェクトに支障ない → 安心して仕事を任せ続られる!」と思ってもらえます。
そうなれば、なおさら頼りにされることでしょう。
(さらに言うと、既存プロダクトのアップデートを惰性的に継続依頼されるのでなく、新規の、チャレンジングで面白い案件を振ってもらえることが期待できます。)

いつ関係が切れても問題ない相手になることで、お客さん側は関係を切る理由が無くなる、というわけですね。
いつでも別れられるからこそズルズルと別れられない、という爛れた異性関係みたいなもんですね。うん、これを「デザイナーは不倫相手のようで在れ」論と呼ぼう。(バズれ)

(この図、妻に見られたら肋骨2〜3本引っこ抜かれるな… )


受託デザイナーで在り続けるにあたって他業者との差別化は必須であり、
他所ではできないことを出来なければいけない、というのは当然のことです。

ただ、お客さんが自分に依存してしまうような状態を作ってはいけないのだ、と言いたいです。それは結局お客さんにとっての脅威になります。
信頼と安心を持続するには、お客さんにとって「いつでも離れられる状態」を作ることが重要です。

「誰にも出来ないことをやってのける」のはクリエイティブ職としては当然のことだが、「誰にも出来ないことを誰でも出来るようにプロセス化する」ところまでやらねばいかんのだ、と宣言し、自分を奮い立たせる今日この頃です。

以上、「受託デザイナーは、なくてはならない存在になってはいけない」論(または「デザイナーは不倫相手のようで在れ」論)を述べさせていただきました。

追記:補足記事を書きました。

(最後までお読みいただき誠にありがとうございますの意を込めて)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?