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世界に誇るインストバンド”toe” ワンマンに行ってきた

今日も今日とて心臓に触れてくる。我々の心の薄皮を、きれいに剥がして、生身の心臓に、触れてくる。それがtoeだ。ギターを揺らしながら吠えまくる美濃さん、山ちゃん、スティックの化身のように見える柏倉さん、全身でビート刻む山根さんを薄目で眺めながら、わたしはほぼオーガズムに達していた。

photo : http://www.toe.st/

 新譜”That's Another Story”発売を記念した、久しぶりのワンマンライブ@恵比寿リキッドルーム。わたしは愚かにも発売日ぼーっとしていて、あっという間に完売したチケットを取り忘れたわけだが、行けなくなってしまった友人が譲ってくれたおかげでこの機会に恵まれた。

toeのライブはオーガズムなのだ。鎖骨の下から、音の洪水が心に、直に入ってくるのだ。正直、乳揉まれてるんじゃないかと錯覚するくらいだ。うんそれは錯覚だ。

多層に折り重なった美しい音。爆音なのに、まるでせせらぎに見出す無数の水脈のよう。

観客を包む音の群れ。眩しくて直視できない、初夏の光の筋の群れのよう。

で、ありながら、心臓のど真ん中に差し込んでくるかのような、強く、鋭く、熱い刃物の感覚。

美しくて切なくて、熱くて優しくて、力強い。

リキッドに詰めかけたファンたちはワンマンの希少さを知っているから、みんな目に灼きつけるような表情で彼らを見つめていた。みんなが熱に浮かされたようで、真冬の恵比寿なのにまるで熱帯夜だった。

彼らのパフォーマンスは命がけだ。ライブのたびに命を削っているようなパフォーマンス。比喩表現ではなくて、本当に心臓にカンナかけている感じ。ロスタイムを表示するデジタル時計が一気に加速する感じ。あの迫力。あれじゃ2時間もライブは持たない。だからtoeのライブはだいたい1時間半くらいに、凝縮されている。

楽器を捨て置くようにしてふらふらしながら最初に去るのはいつも山ちゃん。後に美濃さん、山根さん、柏倉さんが続く。全員当然、汗でびしょぬれだ。

アンコールの拍手は、祈り。まるで祈り。みんなが祈る様に手を鳴らす。もう終わってしまった。でもまだあの曲を聴いていない。だから頼む、もう一度。もう数分でも。

姿を現した彼らが、絶対最後に『グッドバイ』をやるってわかっているのに、山ちゃんが、アンコールのくだらないMCをやめて、あのメロディを歌い始めると、それだけで泣けてしまう。別に、別れた彼氏と毎晩「グッドバイの尺だけ」って言いながら、曲が流れている7分間、電話していた思い出は関係ない。全然関係ない。グッドバイは男どもが去れども、永久に、永遠に、不朽の名曲。

アンコール後も、誰も動かない。きっともう出てこないってわかっているのに、祈りのような拍手は数分続いた。全員で、興奮と、名残惜しい気持ちを共有しながらリキッドを後にする。

生きることのあられのなさを、生きることの遣る瀬なさを、生きることのかけがえのなさを、おもいださせてくれる彼らのライブ。

toeは本当に無双。何もかもを超えている。

世界にも熱いファンが散らばっている。このEU tourのTrailerは何回観てもいい。ヨーロッパの音楽好きたちの興奮ぶりにこちらまで興奮してしまう。ヨーロッパのファンたちが、『グッドバイ』のイントロでトランスして全員歌いだすところとか、ほんとこのDVDのハイライト。

いつまでも、また、時々、toeのライブが見られますように。

本当に最高だった。

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