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ガール・オン・ザ・トレイン

新幹線ではなぜか泣いてばかりいる。

車窓には、凍り付いた道路と固くなった灰色の雪、その手前に、わたしの頬と涙が映っていた。わたしには実は全然、いま、男の子なんて必要ないという事実を認められたことで、わたしは安堵していた。

Photo by "the Girl on the Train"

たくさんの見知らぬ人に囲まれて一人である、という環境が好きだ。持ち込んだ本に没頭し、1時間ほどで我に返って目を挙げ、車窓を眺めると、思考がざーっと流れ出す感覚がある。

往路はその時々の男のこと。復路は家族や生活のこと。

本当はずっと思っていたことが溢れやすいのだ。

年末年始を前に、二人の男にそれぞれ連絡するか、しないか、をわたしはぼんやり考え続けていた。車窓を流れゆく何もない冬の田畑を眺め、わたしはずっとそこにあった答えに、言葉を与えた。「別に、どっちにも連絡したくない」。

本心がそうなのは、ずっとわかっていた。

が、わたしはいま、「結婚しないままでいればいずれ孤独な女扱いされてしまうかもしれない」という不安から、33歳にして目の前に現れたさほど好きではない二人の男をみすみす手放してはならない、というお家芸の「べき論」に囚われているのだった。

それが「”幸せになっていく女”がやるであろう行動」だから。会社に行って「それで彼氏はできたのか」と聞かれたときに「一応できましたよ」と答えられるから。だよな。

またか。おまえはまたそれをやっているのか。

社会規範に照らした「べき」の窓枠に身体を合わせること。

もういいじゃないか。おまえは孤独な人間だ。セックスは好きでも、男と長い時間を共にするのは苦手だ。一人でいることを心から愛している人間だ。たとえそれが、大多数の人間には理解されづらくても、もう変えようがない。

それを、なんとか、できる範囲で、社会規範に合わせようとして、望んでもいない男となんとか幸せに付き合おうとするなんて、心からの望みではないでしょうに。しかも結果として二股かけてるわけだし。そうやって無理するから結局、規範からはみ出ているわけだし。向かないんですよ。

わたしはもっと孤独な男がいい。もっと孤独で、もう少し寂しい、そういう男がいい。明るくて素直な男の子たちよ。さらばだ。

When you are a loner,there is nothing more satisfying than finding another loner to be alone with. -The Americans/Claudia said.



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