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所詮ままごと

既婚者の先輩に言われた。
「うーん、いいんじゃない。いいけどまあ、おままごとみたいだね。」

恋愛というものは常に一時の幻影で、必ず亡び、さめるものだ、ということを知っている大人の心は不幸なものだ。 ―坂口安吾

 Photo by the TOWN ( Directed by Ben Affleck)

 自分のなかに、もう残ってなんかいないと思っていた愛情を見つけてしまったときに、意外な打撃を受ける。もう疾うに愛情の芽生えなんて諦めたのに、突然訪れる「いとおしい」にたじろぐ。

 処女喪失から十余年、自分自身の恋の尻軽に幻滅し、自分自身の愛の欺瞞にほとほと嫌気がさした結果、恋人なんぞ面倒なだけの代物と切り捨てて、30代、敢えてセフレを選んだはずなのにそれでもまだ立ち上がってくる「愛」に眩暈がする。

 こんなことは書いたって仕方ないんだ。何にもならない。もとより彼とわたしの間にあるのはセックスでしかないのだから、つらつらとわたしたちのセックスについて書くことになるだけだ。俗悪で露悪的、いっとき騒がれ笑われはしてもただ単に現代のアラサー(というかただのサー)独身女の悲しい生態を晒して、ものものしい幸福に包まれたはかばかしい生活を送る訳知り顔の既婚者の皆様に哀れがられるだけである。

そうさ、わたしだって何度も止めようと思った。

がしかし。

恐ろしいのだ、この愛が。

 こんなもの、いつ潰滅してもおかしくない。いつ破滅してもおかしくない。この愛は、それでも湧いてくるのだ。どれだけ傷ついても構わない、ぜんぶ差し出そう、とさえ思わされるのだ。
 あんな冷血漢の腐れ外道の色狂い相手に、驚くべきことに、愛が、かの愛が、立ちあがってくるのだ。

 救いようがない。ほんとに救いようがない。救われないからやはり書くしかない。

 これはわたしが彼を愛したという話である。
 ああ、すでに、聞くに堪えない。

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