なぜバンクシーは絵を細断する必要があったのか?【前編】Who is Banksy?

正体不明のまま、世界的に有名になった稀有なアーティスト「BANKSY(バンクシー)」。10月5日、オークション・ハウスの老舗「サザビーズ」で、彼の代表作『赤い風船と少女』が104万2000ポンド(約1億5500万円)で競り落とされました。

が、落札を知らせるハンマーが「カッコーン!」と鳴り響いた次の瞬間、オークション会場にはどよめきと悲鳴が上がりました。

ご覧の通り、額縁にあらかじめ仕掛けられた”シュレッダー”が突然作動し、『赤い風船と少女』が切り刻まれるという前代未聞の事態に陥ったのです。

「1億5500万円がバラバラになる!」 いったい何が起こったのかわからないまま、スタッフが慌てて額縁を外しに走るも、時は既に遅し。作品の下半分は完全に裁断されてしまったのでした。

高値が付いたのに、なぜアーティストは作品を破壊したの? オークション・ハウスの人はグルだったの?              

バンクシーを既に知っている人も、今回初めて知った人も、さまざまな疑問や憶測が飛び交う作品を一緒に考えていきましょう。

そもそもバンクシーってどんなアーティスト?

まず正体不明のアーティスト”バンクシー”は一体何をしてる人なのか。

この人の肩書きには、毎回悩むところです。もともとグラフィティアートからスタートしているバンクシーですが、ステンシルシート(型紙)を使った独特の手法、シンプルでわかりやすいメッセージは、いわゆる地下鉄や高架下でみかける”スプレー缶で自分の名前を変書体として壁に刻む作品”とは一線を画しています。

そして作品は、グラフィティ・アートにとどまりません。2005年には有名な美術館や博物館に白昼堂々、自分の作品を勝手に展示したり、2010年には映画監督として映画『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』を撮ってアカデミー賞にノミネートされました。また2013年にはニューヨーク市内で1か月間、毎日ゲリラ的に作品を投下するプロジェクトを行ったり、2015年には風刺たっぷりのアートな遊園地『ディズマランド』(写真下)を期間限定で建ててしまったり……と規模もスケールもどんどん拡大しました。

つまり、手法のルーツはグラフィティ・アートにあるものの、グラフィティアーティストが狙う「壁」を物理的な「壁」に限定せず、バンクシーは「市民の自由や平和を奪うもの」と拡大解釈することで再定義した。その壁に向けて絵を描いたりパフォーマンスを行うことで、見えなくなっている社会の境界や権力による分断という「壁」を改めて見えやすくする、つまり可視化させる……という活動へとシフトしていきます。


わたしが2004年にロンドンでインタビューをしたときに肩書きを尋ねると「アーティストと呼ばれるのは別に構わないよ。正直、どう呼ばれようと気にしないな」と丸投げでした。実際アート界やこの社会では「どこの誰」が作品を作って、「誰」によって作品が評価されたかによって評価されがちですが、バンクシーは、いくら有名になっても、自分が何者であっても、「どこの誰」ではなく「何をどう描いたか・作ったか」を観て、作品に注目してほしいと願っているから正体不明を貫いてるのではないかと思ったのもこの頃です。2000年代初頭に、自ら「芸術テロリスト」と名乗っていた時代もありましたが、肩書きを付けるとしたら、まさに、”アートを使って既成の価値観や権力に揺さぶるアクティヴィスト(活動家)”が近いのかもしれません。

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なぜバンクシーは絵を細断する必要があったのか?【前編】Who is Banksy?

鈴木沓子

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鈴木沓子

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