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詩)中目黒のルーシーとチャーリーブラウン

ルーシーとチャーリーブラウン 中目黒駅で待ち合わせ
お決まりのように ルーシーは5分遅れてやって来て さ行きましょ とチャーリーに目で合図 
「3年ぶりだね」ずっと前に会ったきりのような気もするし昨日会ったばかりのような気もするよとチャーリーはニコニコ話すんだ
3年ぶりに中目黒のカフェ そこは木製のドアを開けると外階段から二階に上がるお洒落なところさ
ルーシーはさっと席に着く 綺麗なハンカチを膝に置いて「ちゃんと手を拭かなくちゃね」とチャーリーをみる
チャーリーはぼくだってそうさ 当然さとキョロキョロしながら しわくちゃのハンカチを出して
「ほらね」と得意そうにルーシーを見返す
スヌーピーカフェへようこそ お話しはつもり積もっていると思いますがここに居られるのは人生のうちの90分だけです 
メニューから注文が決まりましたらおよびください
ルーシーはチャーリーとメニューをみる ハンバーガーを四つに切ってサラダとポテトがついたセットとミニドッグにポテトがついたセットがいいなあ そうだね それはにしよう
ルーシーはきちんと座って待っている セットが来た 
ルーシーはハンバーガーを四つに切ったひとつをとりわけ 「このままかぶりついたら顎が外れそうだわ」ナイフとフォークで綺麗に切り分ける
それを見てチャーリーも四つに切ったひとつをかぶりつかないで ナイフで切ってみるんだが どうしてだろう ルーシーはあんなに綺麗に切れるのに 上と下がズレちゃう

食べてばかりはいられない 3年ぶりのおしゃべりを人生のうちの90分でやらなくちゃ チャーリーはそれでねとか自慢の本のここはねとか話すとルーシーの眼が一瞬キラリとひかる 「その本の一番いいところ教えて」チャーリーはどんどん早口になって一生懸命にしゃべるんだ あっ時々口からハンバーガーの破片が飛び出しているのをルーシーはちゃんと見逃してなかったけどね

中目黒のルーシーとチャーリーブラウンは人生のうちの90分はあっと言う前に制限時間に近づいて来た それでもコーヒーを追加注文して最後まで時々沈黙もあったけど 距離のあることもよくわかっているけど 言葉でハグしあったのさ 

中目黒のルーシーとチャーリーブラウン 
あっという間の人生の90分
話足りないけれど足りないくらいがちょうどいいのさ
ルーシーはさ帰りましょと歩き出し チャーリーはそうだねとついて行く
目黒川の桜が芽吹く少し前 チャーリーはルーシーがずっとしあわせでありますように そう思いながら 歩いていたんだ
ルーシーは? ルーシーはマイペース。もちろんさ

2022年に詩集を発行いたしました。サポートいただいた方には贈呈します