見出し画像

オーディオは自分の好きなアーティストを目の前にフワッと立ち上げてくれる。


オーディオの試聴をするときに、お店ではリファレンス(オーディオの良さを伝える)用の音源を用意しています。当店の場合はレコードで試聴いただいていますが、どのオーディオもストリーミング再生も可能ですので、レコードとストリーミングの音源を聴き比べたりすることがあります。

まず最初にお客様が普段聴いていらっしゃる音源を聴いていただいて、そのあと、店のオススメの音源を聴いていただくような流れでいつもご案内しておりますので、お気軽にリクエストしてみてください。

当店ではじっくりお聴きになりたいお客様のために30分のリスニングルーム貸出しを行っています。お気軽にお問合せください。電話03-6252-5443


さて、オーディオの良さを最大限引き出す音源というのはあります。長年レコードを触っていると、良く鳴るレコード、鳴らないレコードというのがわかるようになるのですが、良い音のレコードというのは、その時代の売れているアーティストと思っていただいて、間違いないです。

古いレコードだとあんまりいい音じゃないのでは?と感じているお客様も多いのですが、それは間違いです(きっぱり)。
以前、マイケルジャクソンのスリラー(1983年作品)と2000年代のアーティストの作品を聴き比べたお客様が音の良さがいいという理由でスリラーをご購入されたことがありました。
音質の良いレコードというのは、その時代に予算をふんだんにかけられて作られたものがほとんどです。

幸せのおすそ分け

以前、こんなコラムを書いたことがあります。

演奏する人の知力、体力、イマジネーションが最高潮の時に、名盤は生まれると思っています。ハッとするようなアレンジ、楽器の使い方、ハーモニー、メロディ。
名盤が産まれる瞬間、想像するだけでワクワクします。録音したスタジオの雰囲気とか、働く人達とか。

例えばKaren Carpenterの声。あんな歌声を目の前で聴いたら、おそらくびっくりを通り越して、失神するのではないかと(笑)
参加ミュージシャン、エンジニアは彼女の歌声を聴いて、「この音楽を広く多くの人に楽しんでもらいたい」と心の底から願ったと思うんです。自分の仕事人生を賭して臨んだろうなって。

マネージャーはもとより、スタジオを掃除してた人、コーヒーをいれてくれるおばちゃんにいたるまで、何度もレビューされる音源を鼻歌交じりに歌えるようになったりして。。。

音源のリリースはその場にいた人が味わった至極の時間「幸せのおすそ分け」なんだろうと思うんです。レコーディングはそんな「マジックな時間」の連続だったはず。

音楽のポータビリティ化が進んで久しく、リスナーは手軽に音楽を楽しめる環境が整いました。どこにいてもストリーミングで、あらゆる音楽が楽しめる。もう、まるで大きな試聴機が目の前にあるみたいな環境です。
音楽を作る側の想いとは関係なく、この状況はおそらくずっと変わらないと思います。
でも、本当にそれでいいのかなと、ふと考えたりします。

音楽は自分の気持ちを代弁してくれる大切なものです。そんな音楽を手軽に楽しめることは最高ですが、ミュージシャンがスタジオにいた時に奏でた「幸せのおすそ分け」、「マジックな時間」にリスナーが少しでも近づくことができたら、人はもっと音楽を好きになってくれるかもしれない。ほとんど人が今まで感じたことがない、この究極の音楽体験を提供する場をつくることは、自分が仕事をする上で、一番大切にしている夢です。

その場にいた人たちが感じた想い

時代とともに音楽業界も省力化の波にさらされ、結果として、作品にかかわる人が少なくなったことが、聴き心地に影響しています。

お客様にはレコードは古くて、音があまりよくなく、そこがノスタルジーを誘う。というようなことをイメージされている方がいらっしゃいますが、
このコラムを通じて、ひょっとしたら違うかも?と思ってくれたらと思っています。
究極のオーディオはその場の空気を含めて再現し、目の前にアーティストをふわっと立ち上げてくれるものです。あー、自分が好きだった音楽はこんな雰囲気だったのかと腑に落ちた時、今まで以上に人生が豊かになるはずです。そんなときに、自分のお気に入りのレコードがそばにあったら最高だと思っています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?