動物界の”ラストサムライ” 偽汽車事件
明治元(1868)年9月、元号を「明治」と改めた日本では、政治・社会・文化などあらゆる面で大きな変革が行われた。かつての侍たちは刀を捨て、街路にはランプが灯り、馬車や人力車がガラガラと音を立てて行き交う――
かつて「江戸」と呼ばれた街は、「東京」という新しい都市へと変貌しつつあった。
こうした新しい時代の息吹はなにも都市部にのみもたらされたのではない。地方の村々、いや、さらにその奥、動物たちが暮らす野山の中にさえ、「文明開化」という西洋から来た魔物は轟音をたてて押し寄せていた