見出し画像

しっぺ、デコピン

子供の頃、あっち向いてホイの派生で「しっぺ、デコピン、馬場チョップ」という遊びがあった。
「あっち向いてホイ」の代わりに「しっぺ、デコピン、馬場チョップ」の掛け声で3回連続であっち向いてホイを行い、「しっぺ」で指と顔の向きが合ったらしっぺを、「デコピン」ならデコピンと、そのタイミングの罰ゲーム執行される遊びだ。
しっぺ、デコピンという一般名詞に続いて急に馬場という固有名詞が出てくる。それなのに違和感がないのはジャイアント馬場の知名度ゆえだろう。
とは言え、ジャイアントカプリコのCMくらいでしか馬場を知らなかった自分は、馬場がどんなチョップを使っていたかも知らずに相手の頭に手刀をしていた。(ちなみに、今も知らない。)

しかし、ジャイアント馬場と言えばチョップだろうか。いや、ランニングネックブリーカーだろう。

それなのに実際には「しっぺ、デコピン、馬場ランニングネックブリーカー」ではなく「しっぺ、デコピン、馬場チョップ」が使われている。きっと何か理由があったに違いない。
そこで、馬場ランニングネックブリーカーが採用されなかった理由を考察してみた。

①言葉尻が長音になっている

「馬場チョップ」の場合、最後の「プ」のタイミングであっち向いてホイをする。その前の「ッ」も相まって、あっち向いてホイのタイミングが取りやすい。
しかし、「馬場ランニングネックブリーカー」の場合、最後が長音になってしまっているので、これではタイミングが取りづらい。タイミングがずれればどちらかが後出しをすることになり、子供同士ではズルいズルくないの言い争いになってしまい、遊びどころではなくなってしまうだろう。

②言葉が長い

「しっぺ、デコピン、馬場チョップ」は声に出してみるとわかるが、実に語呂が良い。「しっぺ、デコピン」とトントンと言葉が出て、「馬場チョッ」で一拍おいて「プ」でポンッと言葉が出る。まるで「別嬪さん、別嬪さん、一人飛ばして別嬪さん」のような語呂の良さだ。
対して、「しっぺ、デコピン、馬場ランニングネックブリーカー」は流石に長い。「しっぺ、デコピン」でトントンと言葉が出るのに「馬場ランニングネックブリーカー」でダラダラとしてしまう。
また、チョップと違い、ランニングネックブリーカーは「ランニング」「ネック」「ブリーカー」の3つの単語が合わさってできた言葉だ。幼い子供がこれを理解して正確に発音することは困難と言わざるを得ない。ブリーカーまで言えてあっち向いてホイにたどり着くまでのハードルが高くなってしまい、ゲーム性が損なわれてしまう。

③危ない

ランニングネックブリーカーは走ってすれ違いざまに相手の首に腕を掛けてリングに落とす技だ。相手は後ろ向きに倒れるため、後頭部から落ちる危険性がある。
また、リングやマットがあれば良いが、教室の床やグラウンド、道路などは地面が硬いため、ランニングネックブリーカーをすることで大怪我をしてしまう恐れがある。あっち向いてホイで負けたにしては罰が重いと言える。下手をすると罰を執行する側もダメージを負ってしまうだろう。

以上の3点の理由により、馬場ランニングネックブリーカーの採用を諦めて馬場チョップにしたと推測する。当時の人にしても断腸の思いだったであろうが、ゲーム性に重きをおいたその決断を尊重して「しっぺ、デコピン、馬場チョップ」で遊んで頂きたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?