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2017シーズン分析|なぜギラヴァンツ北九州は勝ち続けられなかったのか?〜新進気鋭の新将軍、5つの誤算〜

優秀な将軍は兵士を活かす。
これは古今東西、いつの時代であっても変わらない真理だ。

そしてそれは、サッカーにおいても同じだと思う。

先日、石川星稜高校サッカー部の初優勝までの30年の道のりを記した名著に出会った。
その主人公である監督のバイタリティと人間育成術には衝撃に近い程の感銘を受けた。

人を育てるのはやっぱり人だ。
そういう意味では、昨シーズンのギラヴァンツに足りなかったのはやはり『監督』だったのではないかと思う。
サッカーで言うところの監督は、少々過剰に表現するなら将棋の棋士。
選手は駒だ。
各特性を持つ駒をどう配置し、戦局を優位に進め、相手の王を取る…つまりはゴールを上げるか、と言うところに全てのスタートがある。
開幕前こそ期待された「新進気鋭の新将軍」は、最後まで「選手」と言う与えられた駒を使いこなすことが出来なかったように見えた。

今回は、その中でも、特に目立った新将軍の「誤算」を分析してみたい。

誤算①監督自身の経験値不足

2017シーズン開幕を前に、新監督が決まった時驚いた人も少なくないと思う。
J1,J2はおろか、J3ですら監督経験の無い原田氏に白羽の矢が立っていたからだ。

とはいえ、高校レベルのサッカーでは着実に実績を積んでいる。
不安半分、期待半分のなかで開幕戦を迎えた。
結果は1-1のドロー。
この結果に原田氏は「ほっとした」と感想を述べた。
しかし、残念ながらホーム開幕で、しかも15000人近い観客を前に、追いつかれてのドローゲームで「ほっとした」は無い。
厳しい言い方をすれば、原田氏のメンタルが勝負どころで一番弱気だったということだ。
この傾向はその後、アウェイでの連敗にも顕著に表れる。

残念ながら、監督経験の無さがそのまま自信の無さに繋がり、チームに悪影響を及ぼしたように思えてしまう。

誤算②選手の怪我

こればかりはどうしようもないが、開幕早々に試合を引き締めるべきベテラン選手に怪我が相次いだことは誤算と言うか、不運でしかなかった。
開幕前からリハビリ中だった本山雅志はともかく、シーズン序盤の山岸(交代出場の高橋はすごく良かった)を始め、西島や福田といったチームに安定をも足らずべきベテランが継続的に出場できなかった影響は少なくないだろう。

また、若手選手にも怪我が相次いだ。
ブレイクを予感させた小谷や、JFL新人王である茂、途中加入の安藤など、期待値の高い選手ほど、ピッチに立てない日が続いた。
本来であれば、ベテランの怪我に奮起し、爆発的な成長を遂げてほしかったところだが、そうならなかったのは残念で仕方ない。

誤算③若手選手の爆発力不足

これは、誤算②の怪我を踏まえても言えることだが、正直若手選手の爆発力には物足りなさを感じた。
特に、U-20代表選出の浦田や、福森あたりはもっと圧倒的な結果を残さないとダメだと思う。

チーム内競争がどれだけ激しかったのかは伺い知ることが出来ないが、すくなくとも上記両名には不動のサイドバックとしてギラの攻守を牽引して欲しかった。

先にも触れた通り、小谷にはややブレイクの予感があったが、茂は怪我前の出来としても物足りなさを感じる。
本来ならもっとやれる選手のハズだ。

そうできなかったのは監督の起用法や戦術浸透などにも問題があったかもしれない。
ただ、本気で上のカテゴリーを目指すなら、そんな言い訳などしている場合ではない。
「個人昇格」が目標だって構わない。
もっと泥臭く、「得点」という結果にこだわり抜いてほしかった。

誤算④センターバックの不安定感

加藤弘堅はいい選手だ。
安定的に守備が出来るし、ミスが少なく、足元のスキルもある。
だが、コンバード一年目からほとんどの試合でフル出場のスタメンとしてセンターバックを全うするだけの力があったかと言われると、疑問が残る。

守備感覚は高くても、対人的なフィジカルや、空中戦での競り合いの感覚、裏を取られたときの対処などはやはり本職センターバックには劣るだろう。
監督がどうしてあそこまで加藤のセンターバック起用にこだわり続けたのか、疑問しか無い。

例えば気持ちくんこと鈴木選手は即席センターバックの加藤より使えなかったということだろうか?
モチはモチ屋、ではないが、本来の慣れ親しんだポジションの方が、パフォーマンスは良いハズ。
そう思うのは別に素人考えでもないと思うのだが…

誤算⑤モチベーターの不在

ここは、本来監督が一番気にかけないといけない部分だと思う。
どんなチームでも、強いところにはモチベーターとなる選手がいる。
チームを盛り上げ、自ら走り、全体を鼓舞する。
キャプテンと同一人物である必要はないが、ある種キャプテンに求められる部分でもある。

さて、2017シーズンのギラヴァンツ北九州にモチベーターはいたのだろうか?

池元は優秀なフォワードだし、しっかりと得点も積み上げた。
ただ、キャプテンやモチベーターとなるタイプには見えない。
黙々と練習をこなし、試合で結果を出し、背中で若手を引っ張るタイプのような気がする。
これはもう、選手の能力とは別で、性格や個性と呼ばれる部分だ。
そして、これを見抜くのは監督の重要な手腕の1つだ。エースで地元出身だから池元がキャプテン、みたいな短絡的な考えだったとしたら残念としか言い様がない。

例えば先述の鈴木はある種モチベーター的な性格に思える。
だが、残念がらシーズンを通しての出場がほとんどなく、ゲームでチームを牽引する機会は無かった。

あらためて、2017シーズンのスタメンや、良く試合に出ていた選手を思い返して欲しい。

池元、平井、水永
安藤、小谷、茂、神崎
花井、小野寺、山藤、加藤
浦田、福森、刀根

見ての通り、テクニシャンは多いが、我を出してチームを鼓舞し、泥臭く走り、戦いを挑むタイプの選手がいない。

川崎フロンターレの中村や、ガンバ大阪の遠藤、鹿島アントラーズの小笠原みたいなバンディエラとまでは言わないが、やはり試合中にチームを率いて闘う「旗手」はスタメンの中に1人はいるべきだ。
唯一、GKの山岸はそのタイプに見えるが、チーム最後尾からの声出しは出来ても、ピッチを駆け巡ることは出来ない。

競り合いに弱かったり、終盤に追いつかれたり、アウェイで呑まれたのは、やはりチームの主役がいなかったことが原因の1つではないだろうか?それ故にまとまりを欠き、粘り強さを出せなかったと思えて仕方ない。


ここまで5つの誤算をまとめてみた。
もちろん、選手や監督に直接取材をしたわけではないので、勝手な妄想記事でしかない。
が、当たらずといえども遠からずな部分はあると思う。

この教訓を活かし、ぜひ2018シーズンはチーム一丸となって昇格を勝ち取って欲しい。

もう、開幕戦の感想で「観客が多くて緊張した、カラダが重かった」などと言った言葉は聞きたくない。
プロなのだから、観客が多ければ多いほど、通常を超越した高パフォーマンスを見せて欲しい。
いや、魅せて欲しい。

ギラヴァンツ北九州、2018シーズン開幕まであと2週間とちょっと。

闘う集団から、勝つ集団へ。

まずはJ3の頂きへ、選手、フロント、ファン、サポーター、みんなで駆け上がろう!

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