スクリーンショット_2018-03-27_18

2018年シーズンレポート③|苦渋を飲んだ沼津戦。敗戦に見た5つのポジティブなポイント。

J3リーグ、沼津戦はまたしてもホーム黒星に終わった。
北九州のファン、サポーターの落胆は計り知れない。

0-2という結果、1勝2敗という現実、12位という順位、3417人という観客数…
数字だけを見ればとても褒められた結果ではない。
掲示板に荒れた言葉や嘆き、諦めが飛び交うのも分からないわけではない。

だがしかし、その数字だけでは表すことの出来ない、確かな手応えとかすかな光明を見たゲームでは無かっただろうか?

もちろん、サッカーにタラ、レバは通用しない。
今の順位、実力は現実として受け入れる必要がある。

だが、この3戦を経て、チームの成熟は確かなものになりつつあるように見えた。
言うなら、蛹が脱皮して蝶となり、美しく羽ばたく直前のもがき…
そう信じれば、今の状況は決して悲観するものではないはずだ。

沼津戦で感じた、チーム成熟への5つの手応え

①安藤由翔の覚醒
あの試合で、多くの人の心を鷲づかみにしたのは、安藤の献身的で情熱的なプレーだった。
攻撃参加はもちろん、守備ではエンドライン際まで下がり、何度も沼津のチャンスを潰した。
かと思うとすぐに前線に駆け出し、攻撃の先陣を切る。
その姿はまるで、日本代表の原口元気を彷彿とさせるものだった。

安藤は3戦連続の先発出場。
この試合までに1G1Aを上げる活躍を見せている。
しかもこの試合は2回目の中3日。
どれだけ体力的に厳しいかは想像するしかないが、少なくともフィジカル的に絶好調とは言いがたかったはずだ。
なのに、あの運動量。
あの情熱。
あの献身。

イメージして欲しい。
もし、あの沼津戦で安藤の体調が万全だったとしたら…
いや、タラレバはやめよう。

次節は1週間後。
体調を万全に戻した安藤が左サイドで躍動する姿は、いまから私達の胸を熱くしてくれる。

②本山雅志の復調、フル出場
本山雅志が、ついにフル出場を果たした。
これほど嬉しいニュースはない。
しかも、ただ最後までピッチに立っていただけではない。
攻撃ではトップ下に近い位置で躍動し、何度もチャンスを演出した。

圧巻は前半24分。
沼津のコーナーキックのリバウンドを奪取した本山がドリブルで25m近くの独走。
沼津の選手1人を振り切り、左サイドの安藤にフィードしたプレーだ。

まるでボールの来る位置が分かっていたかのようなポジショニングの妙。
全盛期ほどでは無いにしても、一瞬で相手を振り切るドリブルは健在。
そして、瞬間的な状況判断からの絶妙な左サイドへのパス。

残念ながら、そのパスはわずかに安藤には合わなかったが、これは安藤のコンディションが中3日で重たかったせいだと分析したい。
”普段の安藤”ならきっとあの位置がベストで、そのままGKと一対一になっていたに違いないのだ。(またタラレバを使ってしまったが…笑)

ボールへの嗅覚。
疾風迅雷のドリブル。
正確無比なパス。
天才・本山雅志復活の第一歩を示すには、十分なプレーだったと思う。

これから、さらに本山の調子が上がり、周囲にフィットしていくと思うと、鳥肌がたつ。
変幻自在で正確無比な本山のプレーが、ギラヴァンツ北九州の選手たちを躍動させていく日は近い。

③連携面の向上
この試合は残念ながらパスミスが目立った。
確かにそれは事実だ。
にも関わらず、かなりいい連携の攻撃が過去2戦より増えていた。
そうは感じなかっただろうか?

ポストに当てたシュートは2本。
もちろん、フィニッシュには課題がある。

が、シュートまでいけないまでも、連動した躍動感あるプレーは随所にあった。

中3日で重たいカラダ、先発5人が入れ替わるという別チームのような状況にあっても、だ。
これは間違いなく連携の向上だと言える。
試合を重ねる毎に、ギラヴァンツ北九州は進化しているのだ。
しかも、スタメン11人ではなく、サブやその日ベンチ入りしないメンバーも含め、チーム全体で、だ。
これが今後の躍進の土台になることは間違いない。

そもそも、沼津は監督が就任してから5年目のチーム。
組織として完成度が高いのは当たり前だ。
それに対してギラヴァンツ北九州はまだ始動して3ヶ月がいいところ。
沼津との絶対値で比較して、連携面を判断するのは無理がある。

きっと、森下監督の目指すトータルフットボールは、ギラヴァンツ北九州所属の全選手が連動する究極の形を目指している。
そして、その完成はきっと、遠くない未来だ。

④ベンチ層の厚さ
これは③とも密接に関わる部分だが、明らかに去年よりベンチ層が厚い。
池元、花井、福田がいまだにベンチに入らない状況ながら、中3日でメンバーの半分を入れ替えるだけの余力がある。
もちろん、強烈なフォワードがいてくれたら、と願う気持ちはわからなくはない。
決定力不足は間違いなく課題の1つだ。
だが、それを補うべく、それぞれの選手が爪を研ぎ、スタメン出場を虎視眈々と狙う今の状況はものすごく頼もしい。

ここに池元、花井、福田が加わり、連携面が整った時、初めてギラヴァンツ北九州のトータルフットボールはスタートラインに立てる。
まだまだ、これから上がっていく要素しかない。
誰が出てもワクワクするメンバー。
今年のギラヴァンツ北九州は、そういうチームになろうとしている。

⑤監督のビジョンとベンチワーク
勝てば称賛され、負ければ叩かれるのは監督の宿命だ。
とは言え、森下監督はかなりの勝負師であることは間違いない。

まずは可変式3バックシステム。
PSMの札幌戦以来の登場だったが、こうしたシステムオプションを持っていることは今後のリーグ戦において頼もしい限りだ。

さらには2点ビハインドになった瞬間の2枚替え。
これだってかなり勇気のいる決断だと思うが、森下監督は躊躇しなかった。
あえて去年の監督を引き合いに出すことはしたくないが、座して死を待つようなベンチワークだけはしてほしくない。

判断の速さは、それだけで1つの武器になる。

残念ながら、琉球戦、沼津戦は図らずもベンチワークが機能したとは言い難い。
が、一方でそれは、まだチームが成長段階だからだという現実もある。
今はまだ積み重ねている段階。
森下システムの真骨頂が発揮されるのは間違いなくこれからだ。

以上の5点が、今節の沼津戦から見えたポジティブな点だと思う。
その他に村松大輔や前田央樹の躍動、川上竜の献身なども良かった。

もちろん、ネガティブな要素だってある。
決定力不足はいまのところ改善の兆しが見えたとは言い難く、平井将生が孤立しがちなのは早急に改善が必要だろう。

ディフェンスはハイボールの処理をもっともっと徹底してほしい。
あるいはそれはゴール前でのマークのズレなのかも知れないが…

でも、そんなネガティブも全部含めて、結局は伸びしろでしかない。
大丈夫。森下ギラヴァンツなら、間違いなくここから巻き返してくれる。

と言うか、ファン、サポーターがそれを信じなくて、誰がそれを信じるというのだろうか?
まだ、興味関心を抱いていないその他大勢の北九州市民に対して、誰がこのチームの魅力を語るというのだろうか?

下を向いてるヒマはない。
愚痴を言うくらいなら、熱く選手を鼓舞しよう。

次節はアウェイ長野戦。
また、タフな戦いが待っているのだから。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?