タイムトリップ・タイムワープ

自分の中にもう一つ違う時間が流れていると気がついたのは、23歳の時だ。それまでは、急に襲い来る感情をなんと名付ければ良いのかわからなかった。悲しみは時と場所を選ばなかった。一人で歩いている時、誰かと笑っている時、映画を見ている時、夜眠る前。どれほど「今」が満ちていても、御構い無しに胸を横切る。ある時、これは「悲しみ」か?と考えた。けれどその形容詞で表すには、その感情は一瞬で、残響ばかりが大きいのだった。

(つづく)

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