「意志」に頑張らせるより「仕組み」に頑張らせる


「やばいーーー!今日も起きられなかった。」
今日も、この一言とともに起きました。

毎年の年末にやっている恒例のイベントがあります。翌年の目標を立てることです。一昨年から毎年、入れている目標が朝4時起きです。

目の前の仕事以外にも、将来への投資として勉強をしたい。そして、運動もしたりなど、より充実した生活をスタートさせたいと思うのですが、毎日、目の前の仕事や日常の生活に没頭すると、自己投資ができるほどの余力などどこにもなく、あっという間に数ヶ月、一年が過ぎていきます。

そこで、今年こそはと目標にしたのが4時起きです。早起きして、朝の2時間を自己投資の時間にしようと考えたのです。夜、テレビを見ていると、寝る時間が遅くなり、起きれないと考え、テレビまで処分して約2ヶ月。それでも一向に4時に起きる気配が感じられません。

今朝も、自分との激しい奮闘の末、やっと5時半に目が覚めました。
「このままだと、だめだなあ。私ってなんてだめな人だ。
もうーー。明日こそは絶対に4時に起きるぞぉぉぉ!」。

心の中でそう叫びながら、落ち込んだ顔で出勤すると、上司が
「どうしたの?朝から、この世の終わりみたいな顔をして。」
と笑いながら声をかけてきました。今朝も、アラームを何個も消して、
やっと5時半に起きたことを伝え、素直に悩みを打ち明けました。
すると、上司は爆笑し、「そのままいくと、アラーム早消し大会に出場できそうだね~俺が応援団長をやるよ!」と面白くて仕方がない顔をしました。

所詮は根性なしだと思って笑ってるんだなぁ。そう思いながら内心落ち込んでいると、上司は話を続けました。
「もしかして悔しいと思ってるの?」
「そうなんです。既に一週間、毎日チャレンジしているのに、
今日もやっと5時半に起きたんです。本当に悔しい。
私はこんなもんじゃない。何か良いアドバイスがありますか?」
「アドバイスの前に、一つだけ質問をしよう。
君はなぜ自分が起きれないと思う?」
「うんー。やはり絶対にこれをやりたいという意志とか根性が足りてない。結局、私が意志の弱い根性なしだから、ダメなんですかね」
とつぶやくと、上司から以外なコメントが返ってきました。

「意志の問題にするからダメなんだよ。」
「どういうことですか。」
「多くの人が陥る罠でもあるんだけど、何か目標を成し遂げようとしてうまくいかないと、必ず意志が弱いことを問題にする。でも、実は問題は全然違うところにある」。

ん?強い意志があればなんでもできると、心底思ってきた私はまったく納得ができず、どういうことか聞かせてほしいと、更に質問をしました。
「確かに君の思う通り、何かを成し遂げる上で、強い意志や根性といったものは、極めて重要だ。それがないと何も始まらない。しかし、それだけでは物事は成し遂げられない。なぜかと言うと、人間は意志だけで自分を律し、自分を変えられるほど強い存在ではないからだ。
人の言動は、98%が無意識(潜在意識)によって決められる。
逆のことを言うと、意識することでコントロールできる言動は2%ぐらいということである。だから、どんなに強く意志を持っても、
2%ぐらいの効力しか発揮しない。じゃ、どうすれば良いかというと、

無意識のうちにできてしまうような策を、
自分の日常に仕組みとして導入しないといけない。

仕組み?これまた難しいことを言うなあ。
「つまり実践が大事ということですか。」
「実践が大事だということより、いつどんな状況でも、決めたことを決めた通りに実践し続ける為の策が大事だと言える。それが習慣になってしまって、無意識のうちにできてしまう状態、つまり仕組みを作ることが大事。」
「なるほど。」
「その仕組みさえあれば、毎日のように自分と戦い、自分を奮い立たせる労力も要らない。毎日、自分は根性なしだと反省することも必要ない。ただただ、歯を磨き、顔を洗うように、やるだけである。」

上司が言いたいことは、なんとなく分かる気がしましたが、仕組みという言葉だけでも難しそうな気がし、そんな複雑なルールを作れば作るほど、面倒だからやらなくなるんじゃないかという疑問が浮かびました。すると、上司は、むしろ簡単なことを仕組みにして初めて機能するのだと言うのです。
「君の言う通りに、覚えるだけで難しそうな仕組みだったら、
継続しなくなるから、自分の弱点を良く捉えて、
それを最も簡単に対処できそうな方法を見つけることが大事だ。」
「例えばどういうことですか?」

「今から、俺が社会人としてデビューして間もない頃に、早起きようとやったことを言う。俺は昔、一度目が覚めてもすぐ二度寝する癖があり、
毎日のように遅刻して上司に怒られていた。何度も悔しい思いをし、明日は絶対に二度寝せずに早起きすると決めたものの、翌日もやはり一瞬は起きたものの、ふかふかの布団の誘惑に負けてしまって、またアラームを消して二度寝してしまう。
どうすれば良いかいろいろ考えた結果、一度目が覚めたら、自分との葛藤を繰り広げる間もないぐらい、すぐにそのまま立ち上がるようになればいいんだと思い、その為の対策を考え始めた。先ずは帰宅道に文房具屋に寄って、アラーム時計を4つ買い、その4つの時計を5分刻みで鳴るようにセットし、家の4つの隅に一つずつを置いた。そして最後のアラーム時計の隣に、下着とシャツと靴下とその日にやるべきことのTodoリストを置いた。布団に戻らずに、アラームを消したらそのままシャワー浴びに直行する為だった。

翌日、想像できるでしょう。5分刻みで家の4つの角からアラームが鳴りっ放し。寝たくても寝られない。それを消しに回るうちにどんどん目が覚め始めた。最後のアラームに辿り着いた時、それでも二度寝の誘惑はあったものの、前日準備しておいた下着が目に入り、これでもまた寝てしまうのは、
あまりにも自分自身が情けないという気持ちになった。
さらに、Todoリストまで目に入ってくるので、目が覚めていった。
そして、そのままシャワー室に向かった。
すっきりした頭で、いつもより充実した朝の時間を過ごして会社に向かう時の気持ちの良さとは、毎日起きられない自分を責め、上司に怒られることを恐れていた昨日までの自分とは比べ物にならない。
そうなると、当然翌日も継続しようという気持ちになる。
しかも、翌日も、4つの角から鳴り続けるアラームと準備していた下着とTodoリストによって、自分との戦いや葛藤等何一つ労力をかけずに、
自然と起きてしまう。

この簡単な仕組みで、遅刻する癖を完全に直し、更に朝の時間を利用して、何年も前からチャレンジしようと決心ばかりしていた、英語の勉強をスタートさせた。更に、そんな自分に誇りを感じられて、毎日を良い気分でスタートできるという素晴らしい結果が得られた。正に、「意志」に頑張ってもらい自分を変えたのではなく、「仕組み」に頑張ってもらいながら自分を変えたのである。」

「確かに、話を聞くだけで熱意とか根性とか自制心といった意志が強かろうが弱かろうが関係なく、誰でも起きれそうだなぁ」という思いと同時に、仕組みの大切さがなんとなく分かりそうな気がしました。

帰りの電車の中で、上司との会話を思い出しました。
「意志に頑張らせるのではなく、仕組みに頑張らせる」。
自分にはまったくなかった発想でした。
どういうことなのか、もう一度、それまでの自分と比較して考えてみると、新しい目標を立てる等、何かを成し遂げよう、もしくは何かを改善しようとする時、私はまず、それを絶対やり遂げると強く決心することからスタートしていました。要するに「意志」を持つことから始めるのです。

しかし、意志を重要視するがあまり、意志の力のみに頼りすぎていて、
肝心な「確実に行動するためにどうすれば良いか」ということに目が行っていなかった。当然ながら、確実な行動ができていなかったので、変わることも、目標が達成できることもなかったのでした。また、目標を成し遂げられなかったら、意志が弱い問題だと思い込んでいました。

上司が話してくれたことは、要するに、意志を持つことも大切だけど、それと同じくらい大切にすべきが、確実に目標に向かって行動をする為にどうしたら良いかを考え、それを習慣化してしまうこと。難しく複雑なことは習慣化できない自分の弱さも受け入れ、なるべく簡単にすぐにできることを考えてみる、といったことでした。

自分の問題に気づいたと同時に、この考え方だと変われそうな気がし、
最寄り駅のショッピングモールによって、アラーム時計を4つ買って、
早速上司の真似をしてみました。すると、翌朝、奇跡のように4時起きに成功したのです。
それ以来、私は何かを変えたい、もしくは目標にして成し遂げたいと思う時は、必ず「意志」と「仕組み」を同時に工夫するようになりました。
また、なかなか達成できないなぁと感じたら、自分の意志の弱さを責めるのではなく、当初に決めていた仕組みをきちんとやれているのか、
もしかすると自分が継続できるような仕組みになっていないのではないか、という視点で考えるようになりました。

「意志」に頑張らせるより「仕組み」に頑張らせる 

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