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5年ぶりの福岡、無人ホテルに泊まった2泊3日

北九州に住む義両親と最後に会ったのは、コロナ禍前の2017年だった。そろそろ子供の顔を見せないとねと行っていた矢先に雲行きが怪しくなり、義父が大病を患っていることもあり、帰省のタイミングはかなり慎重に伺う必要があった。

ANAの国内線片道1万円セールで家族三人分の航空券が幸いにも確保できたこともあり、連休前の4月に短い帰省を計画した。

1日目:福岡

羽田空港までは電車移動。本当は車で行きたかったが、駐車場のサイトをチェックすると数週間先まで予約で満車。航空券を確保したら、駐車場もすぐに抑える必要があるようだ。

都内や京都などの有名観光地のホテルの宿泊費が高騰しているというはニュースで何度も見ていたが、福岡も軒並みホテルの価格は上がっていた。

GW一ヶ月前の時点でホテルの半数近くは満室。ハイクラスのホテルは比較的空いているものの予算オーバーという状況。何より日本国内のホテルは1室3人以上で泊まれるホテルが少なく、ファミリートラベラーの選択肢は限られている。

今回宿泊したのは、楽天が運営する無人ホテル「RAKUTEN STAY 博多祇園」。楽天がホテルを運営していることは知らなかったが、他のホテルよりも1万円近く安く、サイトで見る限り室内も広くて清潔だったのが決め手になった。

Booking.comで予約すると事前に宿泊者の個人情報の事前登録を促すメールが届く。ここで登録しておかないと、チェックイン時にタブレットで入力する羽目になるだけでなく、海外から接続していると思われるオペレーターとのやりとりが発生する。フロントのタブレットは個体差があり、音声が聞きとりづらいので、事前にすべて登録しておくことをお勧めする。

呉服町駅で降り徒歩10分のところにホテルはあった。フロントに置かれたタブレットでチェックイン手続きを進めると、館内に入るためのオートロック解除キーと部屋鍵の番号が通知される。ここでオペレーターとのやりとりが発生したのだが、20分以上オペレーターにつながらない。つながっても音声が非常に聞き取りづらく、部屋に入れたのは到着から30分後だった。同タイミングでチェックインしていた人たちもやりとりに苦労していたようだった。

畳の小上がりの下に布団一式が収納されている。

部屋に入ると一般的なビジネスホテルより広い間取り。天井にはプロジェクターがあり、バス・トイレはセパレートで洗濯機もついていた。Wi-Fiの速度も申し分なく、1週間以上の滞在にも問題なく使えそうなホテルだった。

国内のビジネスホテルだと、ベッドと細長いテーブルと椅子だけでスペースに余裕がなかったり、ユニットバスでトイレ使用時の音にも気を使うような造りであることが珍しくない。それを踏まえると格安な料金でここまで室内が充実しているというのは驚きだった。もちろん省人化による人件費カットや、コップやカトラリーはIKEA製だったり、コストを抑える工夫は随所に見られる。朝食会場も無い。

洗面台には人数分以上のアメニティが用意されていた。スペースが広いのも嬉しい。

でも、それらのコストカットは宿泊客ーーとりわけ人のサポートに頼りたい類の人を除けば、全く問題ないものだった。ホテルのフロントに何かを頼むことなんて滅多に無いし、美品は何であれ清潔で充実していれば問題ない。朝ごはんなんてgoogle mapで探せばいい。


夕食は飛行機便を抑えたタイミングで予約していた南天神の「魚ト肴 いとおかし」。朝7時から営業する朝食が有名で、毎朝長蛇の列ができるらしい。この日もテーブルには全て予約で埋まっていた。



「こちらが今日のおすすめなので、スマホで撮影しといてください」
と促されて撮ったメニューボード。
人気店ならではの効率重視のオペレーション


刺身盛り合わせ。やはり福岡の魚は美味しい。
席でからすみを削って供される「大人のスパサラ」
穴子のたたき

久々の福岡で美味しい魚を食べれば酒も進む。いろんな料理を注文したが、特に美味しかったのは看板メニューだという「大人のスパサラ」と「穴子のたたき」。スパサラは肝を和えたスパサラに大量のからすみが乗った、ありそうで無い肴。とにかく酒が進む味で、普通のパスタ一皿分の量で出してほしいぐらい。

穴子のたたきは穴子を湯がいたもののようだ。脂乗りがよく、添えられたワサビと塩で食べた瞬間に唸った。骨も無く、絶妙な食感を生む板前の仕事がわかる一皿だった。

二時間弱滞在して店を出て、天神の中心地へ向かう。マスク着用率は半分程度、街はかつての活気を取り戻したようにも見える。飲食店はどこもにぎやかで、温暖な空気が心地いい。少し大げさだが人類は、人間らしい営みを5年かかって取り戻せたのだなと思った。

タクシーで移動。2軒目に寄ったホテル近くのクラフトビールの店「あおぞらブルワリー」は、繁華街の外れに位置しているにも関わらず賑やかだった。

醸造所併設の店内はできたてのクラフトビールが飲める。

ここ数年でクラフトビールの醸造所が急増したように思う。旅先・出張先では地元の醸造所併設のバーで飲む楽しみができた。京都醸造のブログによれば、国内には約700の醸造所が存在し、この10年間で3倍近くにまで増えているという。一方でクラフトビールが占めるシェアは国内ビール市場の2%程度だという。改めて気付かされるビール市場の規模。


あおぞらブルワリーの下にある居酒屋のフードも注文できるとのことで、一口餃子を注文。
フルーティーなHazy IPAと柚子胡椒の利いた餃子は最高の組み合わせ。

2軒目は2杯で切り上げて早々に帰宿。飲み始めたのが17時だったので、22時頃には入浴も済ませて就寝した。

なぜか、ホテルのプロジェクターでボディビル関連の動画を見る。越智家いつもの夜。

2日目:福岡→北九州

義両親の住む北九州に移動するため、ホテルをチェックアウト。朝食は近くにある「喫茶ブルックリン」。店内撮影不可なので写真は無いが、喫煙可能なレトロな喫茶店で、注文を受けてから作るシンプルなハンバーガーとコーヒーのセットが500円。嫌煙で無ければお勧めしたい店だ。

駐車場奥の建物がブルックリン。

福岡から北九州には新幹線で移動。金券ショップでこの区間の新幹線の取り扱いはなく、自由席に乗車した。30分ほどで到着し、駅のコインロッカーに荷物を預けて商店街を南下。旦過市場を目指す。


去年、2度の火事があったエリアはプレハブ小屋が立ち並び、新しい店舗を再開発しているようだった。一方で被害をまぬがれた店舗は以前と同じように営業。やや観光客向けの雰囲気もあるが、東京のアメ横や京都の錦市場と比較するとグッとローカル感があり、売られている食材も魅力的なものが多い。できたてのおでんの種やしめの浅い〆鯖など昼酒には十分な惣菜がリーズナブルな値段で手に入る。

数日間の滞在であれば、ここで刺身、ぬか炊き、すり身の天ぷらなどを買い込んで部屋飲みすると最高だろう。明日には帰京する我々は買い食いしつつ通りを散歩。ふらっと入ったラーメン屋で本場のとんこつラーメンを食べる。醤油ラーメン以外は食べたくないと、生意気なことを言っていた娘も、初めてのとんこつラーメンは想定外に美味かったようで完食していた。

その後、小倉城近くのスターバックスでチェックインの時間まで休憩。通りは賑わっていて、マスクのことを忘れればコロナなんて無かったんじゃないかと錯覚してしまうような雰囲気。

おがた家のとんこつラーメン。居酒屋の居抜きで入ったような広い店内でゆったり食事ができた。

北九州の宿もRAKUTEN STAY。小倉駅近くにあって、空港行き高速バスのバス停からも近いし、繁華街も目と鼻の先。

こちらの部屋は大きめのベッドが1つ、奥の畳スペースに布団を二人分敷くスタイル。福岡の部屋にはあった洗濯機は無く、その代わりにキッチン周りが充実していた。長期滞在も問題なくできそうで、非常に快適。ここに滞在したら毎日市場に行ってしまうだろう。

トイレは脱衣スペース内
ビジネスホテル価格で、このバスルームはありがたい

夜は義両親と共に外食。駅前商店街の中にある「炉端のくろ兵衛」。福岡の人が、県外の人をもてなす際に欠かせないのは烏賊の姿造り。ゲソの部分は天ぷらにしてもらった。

福岡に来たら一度は食べたいイカの姿造り。ここまで透明度の高いイカは見たことないと娘も感動

さすがに義理の両親を前に料理写真を撮るわけにはいかず、写真は上の2つのみ。その代わりに子供と義両親の3ショットをたくさん撮った。

東京から持ってきた一眼レフのなかにメモリーカードが入っていないことに気づき、それが悟られないようにiPhoneでも撮影したのは、ここだけの話だ。

モノレール駅で義両親を見送って、帰宿する途中で小腹が空き、目についた焼きうどん屋に突入。テイクアウトOKとのことで、大盛りのホルモン焼きうどんを注文。蓋を開けた時の卵の黄身が嬉しい。三人でシェアしつつハイボールとともに流し込んだ。

焼きうどんきつねのスタミナ焼きうどん。ホルモンのもやしの入ったソース味のうどん。
テイクアウトは大盛り無料だったのも嬉しい。

3日目:帰京

三日目は北九州のソウルフード、シロヤのパンをホテルで食べた後、チェックアウト。ここで部屋にお土産を忘れるトラブルがあったが、チェックアウト後もホテルのエントランス、部屋のキー解除番号が生きていて難なく回収できた。こういう気の利かせ方はありがたい。

駅前のバスターミナルから高速バスに乗って北九州空港へ。空港内は閑散としていて、飲食店も少ない。セキュリティを通過する前に食べ物・飲み物は買っておいたほうがいい。

それにしても、無人ホテルは思ったよりも快適だった。考えてみれば、ホテルのフロントに世話になることはほとんどないし、騒音の心配も部屋が広かったせいか特に気にならなかった。次回の旅行でも今回のような無人ホテルがあれば、最優先に予約するだろう。

魚が大好きな自分としては九州方面には何度でも行きたい。次はどこに行こうか。

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