見出し画像

新しいサービスデザインの挑戦が見えた!Service Design Global Conference 2018@Dublinレポート

こんにちは、ナゴヤです。Service Design Global Conference 2018について、ようやくご報告ができます!
SDGCは今年で11回目の開催となる世界的なサービスデザインのカンファレンスです。サービスデザインのカンファレンスといえば、グラグリッドのパートナーである玉田がレポートをしていたServDes.もありますが、あちらが研究畑であるとすれば、こちらは実務畑のカンファレンスという棲み分けだと大まかに想像していただけると良いかと思います。

会期はSDN(Service Design Network)会員のみの日(マスタークラスと呼ばれるワークショップ、およびイベント)と、メインカンファレンス2日間、の全部で3日間。みっちりとプログラムが組まれていました。セッションやワークショップの数は約40。

メインの開催2日間は、ともに午前・午後に6トラックずつのパラレルセッション&ワークショップもあり、まさにサービスデザインのフェスティバル! 当然あらゆるもののがバッティングしているので、タイムテーブル片手に苦肉の策でどれかを選びます。

photo by Service Design Network Official

今回は初めて参加した上で感じたことや感触をお伝えし、次回は参加したワークショップの概要を、ビジュアルファシリテーターとしての視点も交えつつご紹介します。(ちなみに上の写真はカンファレンスのオープニングの模様。激しいドラムでお出迎え。)

今回のテーマは「Designing to Deliver」

SDGCは毎年テーマを掲げています。近いところで2016年度は「Business as Unusual」、昨年2017年度は「Service Design at Scale」、そして今年は「Designing to Deliver」と、練り上げたものを世に出していくことにフォーカス。世界的にある程度の実践がなされ、市場で数多く試走・実装していることがうかがえるテーマですね。

サービスデザインのプロセスでは個々の段階や担当部門だけではなく、横断的・包括的に全体のステークホルダーやサービス像を捉える必要があります。その中でも横断的な組織・プレイヤーの中にAIやディープラーニングなど、人物の役割以外のものが入ってくることが一つの新しいモデルとして示されました。

photo by Service Design Network Official

そういった新しい人物以外の役割は、使い方を間違えれば組織を、引いては社会を脅かすという目も見られています。そこで、よりスピーディな理解や実装に繋げるため、専門家が適切に組み入れることが勧められていました。自社組織の中に専門家がいない場合は外から呼び込みながらプロジェクトを運営しようという点も、インスタントかもしれませんが頷けました。

改めて見つめ直されている、サービスデザイン組織の在り方

複数のセッションで「Break Silo」という言葉が現れていました。(※サイロ=農場にある貯蔵庫)殻にこもって自社、もしくは該当するプロジェクトだけの狭い捉え方でプロジェクトを進めるな!と、このワードは力強く語られていました。いかに視野を広げ、プロジェクトの手足を外に向かって伸ばして世界を捉えるか?そのセンスも肝になるのではと感じています。

photo by Service Design Network Official

また、プロジェクト・ジャーニーという言葉も度々登場していました。Agileと交えて語られることもあり「全体像を把握し、そのプロジェクト自体のジャーニーに責任を持つ役割」の必要性を重視しています。ワークショップの中でも、プロジェクト自体が中長期であるのに対し、組織内での人事などによって肝心のジャーニーが分断されてしまったり、パートごとにマネジメントが変わってしまっては、一貫したコンセプトを維持できず破綻してしまう恐れも語られました。(ただこれはコンセプトの建て方、活かし方の問題でもあるのでは……と感じてもいます。)
こういう側面で私達はビジュアライズをフル活用し、人の入れ替わりや期の変わり目にも影響されないように仕組みごとデザインしています。

行政の現場の大変革

一方、現場としてどんな試みが為されていたか?それが今どんな状態にあるか?ということも、複数のセッションで話されていました。

興味深かったのはアイルランド第二の都市であるコーク州の行政で数年をかけて行われてきたサービスデザインプロジェクト。コーク工科大学と行政との出会いに始まり、行政(コーク州評議会)内にService rePublicというサービスデザインチームが立ち上がっています。行政業務のデジタライゼーションをメインにゴリゴリと内部改革を進めて行った様は、セッションやワークショップで何度も触れることができました。

コーク州のプロジェクトについてのセッション「Leading a Cultural Rebellion; it’s not as hard as you think」で登壇していたJulianneは、いわばマダム的であったことも興味を惹かれたポイントでした。(日頃接する中ではデザイナー的な雰囲気の方々が多いのです)
彼女が自分たちのチームを「REBEL(反逆者)」だと楽しげに、活き活きと語る中に登場するのも、皆デザイナーのイメージではなく「街の人、役場の人」というイメージでした。

サービスデザインエージェンシーの牽引の元、十数年来の評議会の人たちが、そのプロセスやエッセンスを掴み取り、自らが行政の在り方を変える立場を作り上げた話は、まだまだもっと聞いてみたい話でした。

現場に立つ人たちが実感していることで、まだ広く伝わっていないこと

セッション後のJulianneや、翌日のService rePublicのワークショップ、その他のワークショップなどで身近な人や主催の方々に質問をする中で、ひとつの共通項も見つかりました。日頃私たちも意識していることでもあるのですが、大事なのは「相手の文化を尊重し、その文化の中で伝わるよう言葉で導入していく」こと。決して「サービスデザイン屋が来た!ヤァヤァヤァ!」とはやらないこと。とにかく「私たちは理解者でありたい、共に歩んでいきたい」という姿勢で序盤は話しを聞いて、聞いて、聞いて、聞く。

その上で組織文化を変える一歩をチームとして踏み出し、常に隣に在りながらプロセスを歩んでいく。これは国や文化が違えど思いは同じだと実感して、とても嬉しくなりました。やれる、まだまだ変えていけると手応えのような予感を得ました。

文化におけるコンテクストの違い

また、様々なセッションを聞く中で、薄く疑問のようなものも湧きました。サービスデザインという言葉は「外から入ってきた」感がありますが、元々ある日本でのホスピタリティやサービスへの取り組みを、隅に置いてはいないだろうか?というものです。日本国内で実践していく上で見誤ってはいけない、センシティブな部分がこの点であると改めて感じています。

かねてから、
・行間を読むよりも文字通りしっかり伝える、ディベートや活発なディスカッションを交わすことがベースにある欧米の文化。
・行間を読み、余白を読み、思いやりや察することで互いに心地よく過ごすことをは半ば無意識に心がけるハイコンテクストな日本の文化。
この2つを同列で捉えて同じようにプロセスを導入すると違和感を持たれやすい点もあるんじゃないか?と感じていました。

しかし、今回のSDGCでのワークショップなどを通じて体験したことを踏まえると、私達はもっと第三者の立場を効果的に利用して、内側に入るメリットがあるんじゃないか?と感じました。そこには恐れずにクライアントのサービスの裏側に入り込み、組織が抱えるジレンマや課題を見える状態にして良いんじゃないか?むしろ必要なんじゃないか?!とも感じました。

これまではどちらかというと「部外者」「外部の立場」という遠慮から、クライアントから上がる課題の理解に留まっていた部分がある気もしています。そこから一歩踏み込み、組織の人たちにその見出し方を伝え、伴走して問題をあぶり出したり、解決する方法を模索できるかもしれません。そういったパートナーシップを通じて、自律的に自走しながら自分たちを分析できる組織づくりをサポートするサービスデザインはできないか?と考えています。そこに日本人のサービスデザイナーが挑戦する意味がきっとあると感じています。

元来育まれてきた文化、ホスピタリティとともに、私たちは私たちのサービスデザインの広げ方があり、それを知りたいと思っている国外の方々が多いことも知りました。あらゆる文化圏でのデザインの知見を持ち寄ることで、また生まれるものもきっとあるでしょう。まだハードルはありますが、今後はそういった発信もやっていきたいですね!

次回はワークショップの模様をお伝えします、どうぞお楽しみに!

次回記事はこちら


この記事が参加している募集

イベントレポ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?