ビジュアルファシリテーションが活用される6つの領域って?

こんにちは。ビジュアルファシリテーターの和田です。
ここ最近、カンファレンス等のイベント、ワークショップ、SNS、会議など、さまざまな分野で、手書きでの可視化や活動促進を見る機会が増えましたね。

私達グラグリッドでは、東海大学富田誠先生と共に、「手書きでの可視化による、活動促進(=ビジュアルファシリテーション※)の役割と、活用される領域」を明らかにする研究を進めてきました。
この研究は、「ビジュアルファシリテーションが活用される領域と役割」というテーマで、2018年6月24日に開催された、日本デザイン学会 第65回春季研究発表大会にて発表しています。

今回の記事では、その研究で見えてきた、ビジュアルファシリテーションが活用されている6つの領域についてご紹介したいと思います。

※ビジュアルファシリテーション:グラフィックレコーディングや、グラフィックファシリテーション、ビジュアルプラクティス等を含んだ、視覚的なファシリテーションの総称であるビジュアルファシリテーション。詳しくは『ビジュアルファシリテーションってなんだろう?~シベットのMAP to the VIZ WORLDを読み解いて探る~』をご参照ください)

研究をはじめた理由~コンテクストに合わせた活用を、実践者・活用者が行えるように!~

私、そして共著者であるグラグリッドの三澤、東海大学の富田先生、いずれも様々な分野で、多様な目的のビジュアルファシリテーションの実践を重ねてきました。その数、500以上。

実践を重ねる中で切実に感じたのは、「ビジュアルファシリテーションといっても、用いるコンテクスト、目的は多様だ」という点でした。
しばしばこのコンテクストや目的を読み取って、関わっていく部分は、暗黙知的なものです。

「コンテクスト別にVF の特性を明らかにできれば、コンテクストに応じて活用方法を変えることができ、価値ある場の再現性が高まるのではないか」

「ビジュアルファシリテーションの実践者・依頼者が、コンテクストに合わせて適材適所な手法を選択し活用していけるようにしたい!」

そう私たちは考え、ビジュアルファシリテーションが活用されている分野を横断的に捉え、コンテクストと特性を明らかにしていく研究を開始しました。

VFが用いられるコンテクストを横断的に考えるにあたり、VFの手法や効果などが論じられている43文献を選定。文献から手法を抽出し、さらにそこから役割とコンテクストを明らかにするというアプローチをとりました。

※↑文献例。文献一覧は、文末に記載しています。

43文献からコンテクストを読み解いたところ。企業での会議、アイデア発想、教育、市民活動、デザイン、経営会議、組織の対話の場、福祉、コーチング、まちづくりなど、多様なコンテクストがあることがわかりました。

こうして読み解いたコンテクストを統合し、ビジュアルファシリテーションが活用されているコンテクストとしての典型的な領域6つを導き出しました。
この典型的なコンテクスト=領域は、一般的に用いられる産業や職業分野での分類ではない点がポイントです。
領域を導き出すにあたっては、「企業」「教育」「福祉」、といった既存の分野で分類するのではなく、社会的変化や実践者へのインタビューをもとに、ビジュアルファシリテーション手法のコンテクストを演繹的に統合し検討していきました。

ビジュアルファシリテーションが活用される、6つの領域

「ビジュアルファシリテーションが利用されている典型的なコンテクスト」として導出した、6つの領域。一つずつ解説していきます。

【企業内の創造的活動】
「企業内の創造的活動」は、経営戦略立案実行や、イノベーション創出を目的とした企業の活動です。(私達グラグリッドの「サービスデザイン」も、新規自重創出のためここに含まれますね。)
ビジュアルファシリテーションは、調査から立案、実行のプロセスまで幅広く、事業を営むための様々な議論の質を上げるために関わります。

【住民参加型都市計画】
「住民参加型都市計画」は、1989年以降の世田谷区のまちづくりを起点とした、豊かな自然環境・文化的環境に恵まれた居住環境を守り育むための取り組みです。エコシステムを構築するために住民と行政がともに考え、その考えをうけて設計者がかたちにしていくという点に特徴があります。
世田谷区のまちづくりで体系化されたノウハウは、神戸市や福岡市など様々なまちづくりに影響を及ぼしました。
日本で初めて「ファシリテーション・グラフィック」「グラフィックレコーディング」というキーワードが使われた分野でもあります。

【コミュニティと組織開発】
「コミュニティと組織開発」は、市民によるコミュニティ活動や、企業内での組織開発が含まれます。
自発的に参加者が活動に関って創ってゆくことが目的で、対話に重点が置かれている点が特徴です。対話の中で、ビジュアルファシリテーションは、参加者が主体的に考え、行動していくための基盤として用いられます。

【学びと教育】
「学びと教育」は、アクティブラーニングに代表される、学びの場で生徒が能動的に学ぶための活動です。学習者の主体的な学びの姿勢を引き出すことが目的です。
ビジュアルファシリテーションは、問いかける時、理解する時、学びを深める時など、一連の過程で能動的な学びと生徒の成長を支援します。

【福祉と対人援助】
「福祉と対人援助」は、発達障害を持つ人のサポートや包括的地域ケアの実現等の福祉分野や、コーチング的な関わりを含んだ活動です。深い相互理解に基づいたコミュニケーションを行い、人の支援をしていくことが目的です。
様々な人々の特質や状況を理解し、生活をかたちづくってゆく過程において、ビジュアルファシリテーションが用いられます。

【話し合いの基礎】
「話し合い方の基礎」は、特定のコンテクストを含まず汎用的なものです。

この6つの領域を見てみると、様々な分野でビジュアルファシリテーションが用いられていることが見えてきます。
ただし、必ずしも1つの組織が1つの領域にいるわけではなく、状況に応じて様々な領域にいたり、時には2つの領域を横断している状況もあります。

例えばサービスデザインにおけるビジュアルファシリテーションの場合、新規事業の創出のため「企業内の創造的活動」が領域としてあげられます。
加えて、サービスデザインのプロセスの中では、しばしば「コミュニティと組織開発」の領域に含まれる、ビジュアルファシリテーションの関与も存在しています。
組織横断で取り組んでいくためには、質の高い議論を支える土台が大事。異なる立場の人たちが思いを持って、自発的に関わっていくことが必要とされているのです。

次の記事では、様々な領域を横断して見えてきた、ビジュアルファシリテーションの9つの役割について解説していきます!

参考文献

・堀 公俊, 加藤 彰:ファシリテーション・グラフィック,日本経済新聞出版社,2006
・清水 淳子:Graphic Recorder,ビー・エヌ・エヌ新社,2017
・Christine Chopyak:Picture Your Business Strategy 戦略をイラスト化するグラフィック・ファシリテーション・スキル,McGraw-Hill Education,2013
・Sunny Brown:The Doodle Revolution,Portfolio,2015
・James Gibson 他:アイデアスケッチ,ビー・エヌ・エヌ新社,2017
・Chris Risdon:The Anatomy of an Experience Map,Adaptivepath,2011
・Mary Jo Bitner, Amy L. Ostrom, Felicia N. Morgan:Service Blueprinting: A Practical Technique for Service Innovation,California Management Review 50(3), 2008
・日立製作所:エクスペリエンスデザインの取り組み,赤門マネジメント・レビュー10(7) p.533-544,2011
・まちづくりハウス:住民参加のまちづくりを学ぼう!-アメリカのまちづくり手法をワークショップ形式で学んだ記録, まちづくりハウス, 1991
・世田谷まちづくりセンター:参加のデザイン道具箱,財団法人世田谷トラストまちづくり,1993
・世田谷まちづくりセンター:参加のデザイン道具箱 PART-2 プロセスデザイン:事例とワークブック,財団法人世田谷トラストまちづくり,1996
・世田谷まちづくりセンター:参加のデザイン道具箱 PART-3 ファシリテーショングラフィック デザインゲーム,財団法人世田谷トラストまちづくり,1998
・上田信行・中原淳:プレイフルラーニング,三省堂,2013
・小見まいこ:教育ファシリテーション入門~人と集団が成長する場をつくる,特定非営利活動法人みらいず,2016
・藤原友和:教師が変わる!授業が変わる!「ファシリテーション・グラフィック」入門,明治図書出版株式会社,2011
・デビッド・シベット:ビジュアルミーティング 予想外のアイデアと成果を生む「チーム会議」術,朝日新聞出版出版,2013
・博報堂HOWプロジェクト:わかる!ビジネスワークショップ~共創型戦略構築プロセスが実行力を生む,PHP研究所,2003
・青木将幸:市民の会議術ミーティングファシリテーション入門,ハンズオン!埼玉出版部,2012
・C.Alexander:[環境設計の手引]パタン・ランゲージ,鹿島出版会,1984
・武山政直:サービスデザインの教科書,NTT出版,2017
・マーク・スティックドーン/ヤコブシュナイダー:THIS IS SERVICE DESIGN THINKING,ビー・エヌ・エヌ新社,2013
・Peater Merholz 他:SUBJECT TO CHANGE,オライリー・ジャパン,2008
・情報デザインフォーラム:情報デザインの教室,丸善丸善,2010
・野村恭彦:フューチャーセンターをつくろう,プレシデント社,2012
・スコット・ドーリー他:Make space,‎CCCメディアハウス ,‎2012
・David Sibbet:Visual Teams Graphic Tools for Commitment, Innovation, and High Performance,,2011
・David Sibbet:Visual Leaders,Wiley,2012
・David Sibbet:Graphic Guide Team Performance/2.0 Version,1993
・ちょんせいこ:元気になる会議-ホワイトボード・ミーティングのすすめ方,,2010
・Brandy Agerbeck :The Graphic Facilitator's Guide: How to Use Your Listening, Thinking & Drawing Skills to Make Meaning,,2009
・Harrison Owen:Open Space Technology A User's Guide,株式会社ヒューマンバリュー,2007
・James Kalbach:マッピングエクスペリエンス ―カスタマージャーニー、サービスブループリント、その他ダイアグラムから価値を創る,オライリージャパン,2018
・大塚 毅彦:ビジュアルシンキングとリードフォーアクションを活用したイノベーション教育への取り組み
・関 美穂子, 富田 誠:一対一の対話の場における視覚化の手法
・川原 諭, 上村久美子, 二瓶智充:介護・福祉業界及び地域包括ケアにおけるグラファシ・グラレコの可能性
・鈴木 沙代, 細田拓成, 杉原早織. 上田雅継, 宮崎稔也, 奥野美里, 凸凹フューチャーセンター :発達障害者を含む対話の場におけるグラフィックファシリテーションの活用事例
・鈴木 沙代, 太田敏一, 渡部守義:グラフィックファシリテーションを活用した授業の試み
・安武 伸朗:グラフィックレコーディングの表現手法からアクティブラーニングの成果を考察する
・岩崎 奨吾, 臼田 ありさ, 白川 友博, 新川 由理, 永原 拓弥, 小池 星多:ダブルケア問題をめぐるステークホルダーの関係性
・原田 泰:デザイン、街に出る 5: 旅するデザインの道具としてのドキュメンテーション
・原田 泰, 上田 信行:経験の現像所,2008
・田坂逸朗:ワールドカフェのハーベストに関する研究,2016
・Art of Hosting Nagatoro:Art of Hosting Nagatoro,http://aohj.vision/about_the_training/,2018年1月20日アクセス




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