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「サービスデザイン」とは何か 〜チャレンジするための再定義〜

この十数年の間で「サービスデザイン」は世界的に注目されるようになりました。大企業や行政、投資家や支援団体が、これからの時代に必要な“システム”として認識し、取り組み、参入するようになってきています。銀行に病院、飲食店やホテル、車メーカーや保険会社、ショッピングにツーリズムなど、さまざまな分野の事業戦略に活用され、その効果が認められだしたからです。

また、IT技術の発達や人生観の変化など、大きな社会背景が影響していることは言わずもがな。商品の価値は、いまや「顧客」が決める時代になっています。消費するだけのモノは価値を失い、利用体験の豊かなモノが求められ、顧客みずからが育て生み出すモノへと、商品のあるべき姿は変化しています。そんなビジネスのあり方をまるっと創造できるのが、サービスデザインの面白いところでもあります。

さて。私、三澤は今、若者に向かって「サービスデザイン」を説明しようとしています(先日紹介した記事)。この先鋭的で複合的なサービスデザインという魔物を、一体どう説明したら良いのか?これまで、たくさんの試行錯誤をしてきました。

SIRI先生に聴いてみたら、こんな回答が返ってきました。Wikipedia…。

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サービスデザインとは、サービスの質と、サービス提供者と顧客の間のインタラクションの改善を目的として、人・インフラ・コミュニケーション、そしてサービスを構成する有形の要素をプランニングし、まとめあげる活動である。多くの観察をまとめて、スケッチやサービスプロトタイプなどで、コンセプトやアイディアを視覚的に表現する。(Wikipedia,2018年4月25日現在)

課題解決型のサービスデザインとそのための具体的なアプローチがわかりやすく説明されています。しかし、もっと新しいビジョンを作り出せるサービスデザインの可能性を説明したい!そして、もっと柔軟にいろんなアプローチを試せるワクワク感を伝えたい!そんな思いをもとに、さまざまな文献を読みあさり、複合的にこんな定義(プロトタイプ)をつくってみました。

多様な分野が連携しあうことで、
顧客にとっての経験を強化し、従業員の満足度を高め、
最新技術を活用しながら企業目標を追求し、
それらを通して事業の成功という最終目標を目指す取り組み。

この定義を学生に説明したところ、学生からはびっくりする解釈が返ってきました。「先生!新しい体験型のイベントをやって、顧客の経験を強化して、従業員も楽しめて、商品も売れたら、それってサービスデザインですよね?」

NOOOOOOOOO!!! 違う。違うよ。それ、勿体なさすぎる。

そうなんです。この定義には、時間の概念や、サスティナビリティの重要性についての配慮が欠けていたのです。そこで、改めて、サービスデザインのプロセスを1つずつ、わかりやすい言葉で噛み砕き、大事なポイントをおさらいすることからはじめました。知った気になっている言葉をしっかりと捉え直さなくては、これからサービスデザインを学ぼうとしている人に伝わらないと思ったから。そして、できるだけシンプルに、このようにまとめてみました。

サービスデザインは、
人にとって「価値ある体験」を生み出し、
持続する「ビジネスのしくみ」をつくるデザイン


これが、私達のサービスデザインの定義です。さらに、これらの言葉の意味をもう少し補足します。

「人」=顧客だけでなく、提供者も、サポーターも、ファンも、間接的に関わる人も全てのステークホルダーを人と考える。
「価値ある体験」=特定の人の心の底にある欲求を満たすような、本質的な価値を提供できる体験。
「生み出す」=0から1を創出することも、1を10に膨らますことも。新しい姿を生み出す創出行為。
「持続させる」=一過性でなく恒常的に提供できるシステムを持続させること。提供側システムを強化しながら、社会におけるエコシステムを保持することが必要だと考える。
「ビジネスのしくみ」=事業の経営視点をもって、リソースを活用しマネタイズする戦略と、そのしくみが再現性をもったシステムであるもの。
「デザイン」=抽象的に本質を捉えながら、具体的に新しいビジョンを提案することができる創作行為としてのデザイン。

どの言葉を使い、どんな角度から説明すれば、納得しやすいのか?人によって、理解の仕方は様々です。複雑で未知のものほど、正しく伝えることは難しい。でも、正確さを重視しすぎて専門用語を使うほど、小難しくてわかりにくく、辛いものになってしまいます。私達がやりたいことは、そういうものじゃない。

楽しく!ワクワクする!みんながついつい参加したくなる、しくみづくりなんです。

(三澤)

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