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複雑さと向き合うことができるビジュアライズのパワー~EuViz2018レポート1~

こんにちは、三澤です。デンマークから帰国いたしました。
デンマークで参加していた、国際的なカンファレンス「EuViz」を終え、今、学びを振り返っています。

EuViz」は、Visual thinking をファシリテーションやイノベーション創出や、組織開発などに活かしている人たちが、そのノウハウをシェアしたり高め合うためのカンファレンスです。これまで参加したどの国際的なカンファレンスよりも、学際的で人間的。多様な職業の人が、互いに心を開いて歩み寄り、互いに学び合うような場でした。学びとして得るものがたくさんある一方、理解しがたいものや未消化のものもいっぱいあります。

そこで、このnoteでちょっとずつテーマを切り出し、深く掘り下げていこうと思います。まず第一弾として、キーノートスピーチでも扱われた「複雑さ」について書きたいと思います。

(カンファレンスの概要についてはこちらのレポートをどうぞ。)

こんな分野の人たちも?!その多様性にびっくり

いろんな国から集まった200人くらいの参加者たち。話していると、その活動のフィールドが本当に多様。普段私たちが関わり合えないような、科学者、生物学者、心理学、教育学、銀行員なども。
そして面白いことに、みんながそれぞれの文脈で「描いて考えないと成り立たない!だから描いてる。」と教えてくれました。必要だから、仕事でグラレコをつかったり、自然に絵でコミュニケーションをとっているんです。

さまざまな場所、状況で、それぞれにコミュケーションの課題が起きているということを知りました。むしろ、日本以上に多文化が混在する世界では、本当に深刻な状況なのかもしれません。

社会の複雑さ、課題の複雑さ、そして、ビジュアルプラクティショナー※2が提供できる価値の複雑さ、さまざまな複雑さが混在しているように感じました。

複雑さって悪者じゃない!

そんな中、オープニングキーノートで、頭の中のモヤモヤをスカッとさせてくれる講演がありました。bikablo®※1 のMartin HausemannとKarina Antonsの講演です。タイトルは、

「STOP REDUCING COMPLEXITY」

絵を書くのに「やみくもに、複雑さを減らすの、止めませんか?」という強烈なメッセージです。実践者の悩みにダイレクトに響いてくるとてもおもしろい内容でした。

複雑な絵よりも、シンプルな絵が良い!と思いましたか?
もちろん、複雑な情報を「絵」にすること自体、その情報をわかりやすくしてくれるし、捉えやすくしてくれます。しかし、時に、「絵で書く」ということを、ビジネスの文脈で活用しようとすると、「わかりやすくしてはいけない時」「シンプルに表現してはいけない時」があります。

例えば、組織が多くの問題を抱えていて、自分たちでその問題に立ち向かわなくてはいけない時は、文脈や関係性などを含めた複雑な状況を描き出すことが大事になります。問題をシンプルに表現してしまっては、実態を知らないまま、わかったつもりになってしまいます。

書く絵、一つのさじ加減で、そこにいる人の見える世界が変わるからこそ、絵を書く人に、高いファシリテーションの意識が必要になってきます。

こんな風に、ビジネスでビジュアルファシリテーションを活用しようと思った場合に、参加者の状況がどのような状態なのか?どんなことが課題になっているのか、その複雑さをしっかりと理解していかなくてはいけないのではないか?ということを、伝えてくれた講演でした。

複雑の性質を理解すると、見えてくる!

そして、その複雑さを理解するために、複雑な状態を「コンプレキシティ」と「コンプリケーテッド」 に分けて考えていきました。

(Martinの発表資料より)

【Complexity コンプレキシティ】
= 複雑, 煩雑
: the state or quality of being intricate or complicated.(Google 翻訳)
【Complicated コンプリケーテッド】
=複雑, 繁雑, ややこしい, 煩わしい, 入り組む, 
consisting of many interconnecting parts or elements; intricate.(Google 翻訳)

同じ「複雑さ」を表す英語ですが、「繁雑」と「煩雑」の使い分けと、ちょっと似ているところがありますね。

「煩雑」は、「事柄が込み入っていて煩わしいこと」
「繁雑」は、「なすべき事柄が多くごたごたしていること」

【Complexity コンプレキシティ】な状況では、そもそも考え方がもやもやしている状態。だから、人が対話をとおして考えていく絵が必要になります。一方で、【Complicated コンプリケーテッド】な状況では、要素が多すぎて理解がおいついていない状況。整理しながらストーリーを語っていくような絵が必要です。

私たちは何ができるのか?

複雑さを理解した上で、ビジュアルプラクティショナーはどのように関わることができるのか?可能性を考え、議論するためにこの図が示されました。

(Martinの発表資料より、複雑さと向き合う活動マップ)

スケッチノーター、ビジュアルストーリーテラー、グラフィクレコーダー、ビジュアルファシリテーター、チャンジコンサルタント、などが、例としてプロットされていますが、これは話し合いのキッカケとして置かれたもの。この場では、実際に自分たちは何ができるのか?どんな複雑さとどんな風に向き合っているのか?について話し合い、シェアしていきました。

(公演中に書き出された、複雑さが起こす課題と解決策)

私たちグラグリッドでも、さまざまなクライアントのさまざまな課題と向き合うという状況があります。それぞれの要求の違いを知り、それぞれを最適な状態でマネージメントすることの大事さを日々感じています。
そんな、私たちにとって、このMartinのメッセージは、これからの活動を明るく照らしてくれるものになりました。

(Martinの Opening keynoteのグラレコ by Malte von Tiesenhausen)

(Martinの Opening keynoteのグラレコ by Brandy Agerbeck)

複雑さと向き合うためのビジュアライズ

世界的にダイナミックな変化がおき、さまざまなことが複雑になっている現代の社会では、「絵」が担う役割は壮大。そして、まだまだ広がりを見せています。それを理解しているかどうかで、ファシリテーションの質が大きく変わってくるのだと感じました。

複雑さを受け入れること。
複雑さの真意を知って、向き合うこと。
そのために、自分はどう向き合えるのかを知っておくこと。

これからの荒波の航海方法を学んだ気分です。
(三澤)


関連レポート
国際的なビジュアルファシリテーターの祭典 EuVizにやってきました

注釈
※1 bikablo®
bikablo®は、ビジュアルシンキングのトレーニングでは世界で最も有名で多くの受講生を排出している会社。私たちグラグリッドでも、bikablo®の本を好んで使っています。

※2 ビジュアルプラクティショナー
ビジュアルプラクティショナーとは、グラフィックファシリテーションやグラフィックレコーディングなど、さまざまな視覚化のメソッドを活用し、自分たちの活動の中で実践している人たち。コンサルタントや、デザイナー、組織開発、コーチング…、いろんな職業の人がいて、それぞれにこのビジュアルシンキングのメソッドを活用しています。

※3 EuViz 2018
( EuViz conference 2018 / IFVP conference 2018 )
「EuViz」は、EuVizはヨーロッパのビジュアルプラクティショナーのコミュニティ。Visual thinking をファシリテーションやイノベーション創出や、組織開発などに活かしている人たちが、そのノウハウをシェアしたり高め合うためのカンファレンスです。
通常EuVizはヨーロッパだけでカンファレンスをしているのですが、今年は、世界的な組織であるIFVP(International Forum of Visual Practitoners https://www.ifvp.org/ )のカンファレンスと共同開催し、世界レベルになりました!

EuVizの情報はこちらからも見られます
www.euviz.com
Flickr (写真アルバム)
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Hashtag: # euviz2018 # todawornottodraw

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