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グラフィックレコーダーから見た「社会デザイン」~早稲田まちづくりシンポジウム2018レポート~

「科学技術の進化や、政治経済の状況の変化に伴って出てくる、新しい社会ニーズ。これに対して、社会のシステムをアップグレードしてゆく必要がある。人間がよりよく変えていくには、どんなことが大事なのだろう?」

そんな問いかけから始まった、早稲田まちづくりシンポジウム 2018「社会デザインと計画論の未来」。

「まちの物語を紡ぐ」「情報技術で関係を結ぶ」「小さなもののデザインで繋ぐ」。この3つの視点から、新しい社会のしくみを人間がつくっていくにあたっての共通点、大事なことを見出し、考えていく場となりました。

グラグリッドでは、三澤が「情報技術で関係を結ぶ」セッションで講演を行いました。また、和田・小野もシンポジウムのグラフィックレコーダーとして参加しました。

今回は、3セッションを描いたグラフィックレコーダー(和田)の目線から、シンポジウムについてレポートしていきたいと思います。

実践から見る「社会デザイン」の多様な関わり方

基調講演は、早稲田大学社会科学総合学術院 教授 早田先生による「社会デザインを再定義する」。

社会デザインの定義と系譜、発展の方向性、これから大事なこと(社会デザインを行う市民のコンピテンシー、人材育成の場)について語られていました。

この問いかけを受けて、現場での様々な実践から、社会デザインを考えるセッションへ繋がります。

【セッション1:「まちの物語を紡ぐ」】
セッション1は「まちの物語を紡ぐ」。
演劇、写真、映画、それぞれの方法は異なりますが、まちに潜在している物語を紡ぎ、人々をつなぐ取り組みをしている実践者たちのセッションです。

▼登壇者
石野由香里氏(俳優・演劇ワークショップ主宰)
沼田真一氏(映画づくりワークショップ主宰 / 早稲田大学社会科学部)
松本篤氏(コミュニティ・アーカイブ主宰 / remo[NPO法人 記録と表現とメディアのための組織])

印象的だったのは、それぞれ形や観点は異なっても、様々な人の想いや体験を形にして共有することで、人々がつながり、それぞれが再び物語を見出し、新たな発見をしていく・・・というプロセスの共通点でした。

また、そのプロセスの根底にある思いもパネルディスカッションで語られていました。「人とひととはわかりあえない」「だからこそ、未来を切り開くために語り合い、形を作り、つながるのだ」。

グラフィックレコーディングには、それぞれの登壇者の形や観点の違いとプロセスの共通点、そして根底となる思いを描きました。

【セッション2:「情報技術で関係を結ぶ」】
セッション2は「情報技術で関係を結ぶ」がテーマ。
オープンデータ、サービス開発、絵を使った可視化。「一見全然つながりがわからなさそうなセッションですね(笑)!」と、司会の早稲田大学社会科学部 藤原先生の声掛けでセッションははじまりました。
藤原先生がブータンの情報化を語られた後、問いかけた「その状況にあわせて、関係を結ぶときに、どのように有効な情報技術を選ぶのか?」「新しい情報技術を導入するためにとるべき方法は?」というテーマ。
このテーマが、セッション2の登壇者たちをつなぎます。

▼登壇者
石塚清香氏(オープンデータ / 横浜市役所)
三澤直加氏(グラフィックレコーディング / グラグリッド)
花村創史氏(スポットコンサル / ビザスク)

三澤の講演では、様々な可視化の手法とその活用領域の広さをご紹介しました。そのうえで、多様化する可視化の目的の背景にある「創造的活動の意義の多様化」と、そこで人が手書きで描くことの価値についてを論じてゆきました。

一見テーマがバラバラに見えるセッション2全体ですが、グラフィックレコーダーの目線からは、セッション全体を通じて「見えない情報を、いかにして扱うか?」という問いが見えてきました。

登壇者3名、3つの事例に共通しているのは、オープンにすること、共有すること、何かしらの形で「見える」「扱える」ような形にする、ということ。

そして、そこを支えるのは、まぎれもない、人間によるチームだと述べられていたのが強く心に残りました。人間が、相手を理解しようとし考えるからこそ生まれる価値ある情報や、予想もしてなかった関係性ーそんな点を中心にグラフィックに描いていきました。

【セッション3:「小さなもののデザインで繋ぐ」】
セッション3は「小さなもののデザインで繋ぐ」。
身近にある小さなものに、新たな価値を付加していくことで、つながりをうみだしきた実践者達が語るセッションです。

▼登壇者
新井利昌氏(埼玉県熊谷市 / 農福一体ソーシャルファーム)
曽和治好氏(京都府宮津市 / 竹の学校)
菅生琢磨氏、門間優花氏(宮城県名取市 / 宮城農業高校農業経営者クラブ)

ソーシャルファームでの野菜、竹の手ぼうき、北釜クイーンメロンを使ったデザートなどの商品。
それぞれ生み出している形こそ小さいのですが、そこから生まれているものの大きさに、グラフィックを描いていた私たちは圧倒されていきました。

ソーシャルファームが生みだす、新しい経済圏。
竹の手ぼうきが生みだす、新しい発想や文化の継承。
北釜クイーンメロンの商品がうみだす、食べた人の笑顔や、地域産業の発展。
こうした見えない大きなものが、どんどんグラフィックでは可視化されていきます。

セッション3の終盤でいただいた、グラフィックレコーダーからのセッションふりかえりの時間では、こうした小さなものが生みだした「目に見えない大きなもの」の存在についてをお伝えしました。
また、その背景にある登壇者たちの「守りたい」というそれぞれの思いがあるという共通点を、会場へフィードバックしました。

「この『守りたい』という気持ちこそが、新たな発想へとつながるのだ。」
司会の早稲田大学社会科学部 落合先生がおっしゃっていた一言が、とても心に響きました。

各セッションのまとめから見えた、ビジュアルファシリテーターの社会の中での位置づけ

シンポジウムの最後には、基調講演と3セッションを通じて見えてきた、キーセンテンスの紹介、展望を早稲田大学社会科学部の先生方がお話されていきました。

その中で、人が絵を用いて可視化することについても述べられていました。

「グラフィックは、言語をこえたコミュニケーションができるというところに価値を感じた。
現在の社会では、外国人住民など、住んでいる人や関わる人は多様化してきている。今まで来ない方に来ていただくのに大事なのは、無作為抽出で『ぜひ、きていただけないか?』というお誘いと、わかりやすい翻訳ではないか。」

「見えると、非対称性、不平等が見えてくる。それをどうしていくのか?」

早田先生の基調講演資料には、こんな一節があります。

社会デザインは時間とともに劣化し、社会的ニーズに応えられなくなっていく。社会デザインはアップグレードを行うが、多様な考え方がある。

早田宰(2018),社会デザインを再定義する,社会デザインと計画論の未来

シンポジウムを通じて、グラフィックレコーダーの私達が描いたのは、まさにこの文章そのものでした。

・ICTのような技術発展、東日本大震災、働き方に対する変容など、実践者の背景にある、様々な変化
・変化に伴い生まれた、従来の定義の「まちづくり」では補いきれなくなった、やっかいで大変なこと
・市民の力で行われた、様々な形でのアップデート

この絶え間ないアップデートとしての社会デザインを担う一端として、私たち(グラフィックレコーダー含む)ビジュアルファシリテーターは「手で描くこと」で大きな力になることができる。

先生方のお話を伺っていくなかで、改めてこれからの社会の中での、ビジュアルファシリテーターの位置づけの大きさ、大事さを確信しました。

これからも、手で可視化することを通じて、ダイナミックに変化する社会の中で、社会をアップデートしていく人たちと一緒に走っていきたいと思います!
えいえいおー!!


おまけ:
今回のイベントでは、グラグリッド三澤・和田・小野に加え、大学生インターンである真内みずほさんも一緒にチームを結成。グラフィックレコーディング実施を後方から支えてもらいました。

グラグリッドの大学生インターンも、これからどんどん活躍していきます。ご期待ください!

(和田)

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新たな文化を創る活動を、一緒に歩んでいけるのを、とても楽しみにしています!


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