見出し画像

個人で、チームで、専門領域で。可視化に役立つおすすめ書籍12冊

「ファシリテーショングラフィック」「グラフィックレコーディング」「リアルタイムドキュメンテーション」「ビジュアルファシリテーション」等、多様な呼ばれ方で知られるようになった、可視化の手法たち。
私達も、可視化に興味を持っている方から「どんな本を読んだらいいの?」という質問を受けることがあります。

「どこでどうやって活用したいのか?」によって、おすすめできる本は様々。そこで今回は、ビジュアルファシリテーターの本棚の中から、アプローチごとでおすすめの書籍をご紹介します!
(入手しやすい、日本語の書籍を今回はご紹介します!海外の書籍はまた今度♪)

▼アプローチ3種
(1)可視化を自分でとりいれてみたい~視覚文法を学ぼう!~
(2)チームで可視化を活用したい~チームの思考をレベルアップ!~
(3)自分の専門分野の中で活用したい~プロセスの中で活用しよう!~

(1)可視化を自分でとりいれてみたい~視覚文法を学ぼう!~

一つ目は、自分がグラフィックレコーディング等、可視化を行う人が学ぶ、視覚文法からのアプローチです。

▼ファシリテーション・グラフィック―議論を「見える化」する技法 (ファシリテーション・スキルズ)  堀公俊(著)、 加藤 彰(著)
2006年に出版された本ですが、2018年現在も視覚文法を学び、議論で活かしていきたい初心者の方へおすすめです。議論の場で書くためのライティング方法、レイアウトはもちろん、「どの発言のどの部分を取り上げるのか」「うまく要約できない発言への対処法」「進行と記録を両立させるには」といった実践にあたってのファシリテーター向けのお困りごとについても詳しく解説されています。


▼元気になる会議-ホワイトボード・ミーティングのすすめ方
 ちょんせいこ(著)
会社や地域など様々な場所で「絵を描く」という方向よりは「会議をわかりやすく構造化するための書き方、進め方」に重点をおきたい人におすすめ。会議室によくあるホワイトボードを活用する手法が簡潔に書かれているので、とりくみやすいと感じる人も多いと思います。

例えば、議論のフェーズにあわせたマーカーの使い方。発散=黒のマーカー、収束=赤のマーカー(囲む、線を引く、番号を振る等)、チームでの合意して活用していく事項=青のマーカーというように、内容に応じた色の指定がされています。カラフルなマーカーだと何を使っていいのか迷ってしまう、という思いを感じたことがある人にとっては、書いて促す障壁が大きく下がるはず!

また、「元気になる会議」というタイトルどおり、心の体力を温めるためのファシリテーターの問いかけ、どんな観点で参加者のつぶやきをひろいだすかがちりばめられています。


▼Graphic Recorder ―議論を可視化するグラフィックレコーディングの教科書
 清水淳子(著)
「会議の記録をするということには、日本は好意的で寛容」という文化を逆手にとって、場の記録を絵や簡潔な文章で可視化していくことで、場に貢献していこうという立ち位置の書籍です。

「ファシリテーションを行うことはハードルが高い」と感じている人が、絵を活用して一歩踏み出すのにおすすめです。「絵心がないなあ」「絵を描くことは苦手」と思っている人も、フルカラーのこの本を見ながら練習することで、文章→絵へしていくコツや、関係性の見えるレイアウト、それを活かした記録者としての問いかけができるような仕掛けになっています。

▼手描きで考え、伝える-図解表現使いこなしブックデザイン仕事に必ず役立つ 図解力アップドリル 原田泰(著)
デザイナーではない人が、「伝える、きれいにみせる、わかってもらう」ための視覚文法を学びたいときにおすすめの二冊です。
「図解表現使いこなしブック」は、「自分はこういう意図で書いたのに、なんだか伝わらないなあ」という人向け。意図を伝えるための方法、簡単な書き方、文法が網羅されています。手書きでどんどん書いて真似をしていきやすい!
「図解力アップドリル」は、より何かを作ろうと思ったときに開くのに線や色の持つ意味を、誰にでもわかりやすく説明してくれています。デザイナーがどんなことを考えてデザインをしているのか?を理解して、分かりやすく伝わりやすいものを描くヒントが満載です。


(2)チームで可視化を活用したい~チームの思考をレベルアップ!~

二つ目のアプローチは、チームで可視化を活用し、チームの思考をレベルアップするというアプローチです。視覚文法についても記載のある書籍はありますが、チームの思考の質を高めていくための図・絵の活用方法に焦点があたっているのが特徴です。

ビジュアル・ミーティング 予想外のアイデアと成果を生む「チーム会議」術 デビッド・シベット(著) 監訳:堀 公俊

チームで議論する時に、簡単な図や絵を用いて可視化することで、チームの成果にむけた行動を促そう、という書籍です。視覚文法を学んで、一歩先に進む働きかけをしたいと考えている方や、チームをマネジメントする立場の人におすすめです。
特に、本書で特徴的なのが「メタファー」の扱い方。「頭では理解できているが、腑に落ちていない」ことを突破する鍵として「メタファー」を挙げています。紹介している絵・図も、参加者が頭のみならず心から理解し、行動へつなげていくためのフレームワーク、活用方法が掲載されています。

↓例えば、雑誌をモチーフにした「カバー・ストーリー・ビジョン」。雑誌というモチーフを用いることで、未来のイメージを促します。

▼発想法 改版 - 創造性開発のために 川喜田 二郎(著)
川喜田 二郎氏が考案した、KJ法についての書籍です。「ビジュアルファシリテーションなのに、なぜ発想法?」「KJ法って、ふせんをグルーピングして整理する方法でしょう?」と思うことなかれ。KJ法の手法には、チームの思考をレベルアップするヒントがプロセスに組み込まれているのです。

KJ法には、以下のステップがあります。
・素材収集
・データの単位化
・一覧化
・グルーピング
・概念化
・再グルーピング
・図解化
・叙述化
このプロセスの一つ一つの注意点が、思考をレベルアップする鍵となっていくのです。データの単位化一つの時には「文脈が残るように」、グルーピングする際には「直感的に近づける(系統としてまとめるものではない)」、グルーピングしていくことで「ないものを見つける」、叙述化するという行為を経ることで「理解を深めて自分のものにする、違和感に気づく」といった具合です。

KJ法は、絵を描くものではなく、文章と関係の図解をしていくものなので、様々な人が取り組みやすいのが特徴です。

▼書いて使う 会議を変えるノート (プレミアムブックス版)
三澤 直加 (著), 杉田 麻耶 (著), 株式会社グラグリッド (著), 株式会社アイ・エム・ジェイ (著), 太田 文明 (監修), 赤石 あずさ (編集)

この本のおもしろいところは、タイトルにあるとおり「書いて使う」というところ。プロジェクトの成果にむけた効果的進め方を会議でできるような視点がノートにうめこまれています。
また、チームでノートを指さしながら、「会議終了後、みんなの気分は?」「プロジェクトの目的に向かって進んだか?」「それぞれの能力を発揮できたか?」「顧客/利用者の視点でアプローチできたか?」という問いで会議を振り返るといった使い方も。会議のふりかえりからも、相手へ興味をもったり、相互のずれや、解釈の違いを発見し、チームへ活かすことができます。

(3)自分の専門分野の中で活用したい~プロセスの中で活用しよう!~

最後に、専門分野のプロセスの中で、機能的に可視化を活用していこうというアプローチ。実は、この分野は可視化の活用のひろがりに対して、書籍はおいついていないように感じています(!)
その中でも、すでに書籍化されているものの中から、専門分野の文脈を踏まえて、どう参加者(まちづくりなら住人、教育なら生徒など)とむきあって、どんな手法で、どんな長期的な展望をもって行うか・・・というところが語られている書籍をご紹介します。

▼UXデザイン・サービスデザイン
マッピングエクスペリエンス James Kalbach (著), 武舎 広幸 (翻訳), 武舎 るみ (翻訳)
サービスブループリント、カスタマージャーニーマップ、メンタルモデルダイアグラムなど、カスタマー中心に価値を可視化し、チームで議論しながら新しい体験をうみだしていく手法が掲載されています。

▼まちづくり
参加のデザイン道具箱シリーズ(一社 世田谷トラストまちづくり発行)
1990年代、世田谷区からはじまった市民参加型まちづくり。その市民参加型まちづくりの手法の中に組み込まれた、可視化の手法や活用例を見ることができます。

▼教育
教師が変わる!授業が変わる!「ファシリテーション・グラフィック」入門 藤原 友和 (著)
教育ファシリテーション入門~人と集団が成長する場をつくる~ (みらいずworks発行)
授業の中で、どうやって可視化をとりいれていくか?を考えたいときにおすすめな2冊。
「教師が変わる!授業が変わる!「ファシリテーション・グラフィック」入門」は、板書とファシリテーション・グラフィックとの違いなど、学校の話し合い全般について使いやすい解説がされています。
「教育ファシリテーション入門~人と集団が成長する場をつくる~」は、目的に応じた授業のプログラムと、そのための可視化が解説されています。

-----------


実は、こうした分野ごとでの絵や図の活用については、現在は学会での論文での発表だったり、日本語で出版されていなかったり、実践型トレーニングの中に組み込まれていたりと、日本語の書籍で出会えないものも多々あります。
可視化の活用が進むことで、トレーニングや書籍として体系化されていって、多くの人が学び、体験する機会も増えていくでしょう。

ぜひ、こうした本をもっと知りたい、見てみたい、一緒に見てブックトークしたい方はグラグリッドにお越しください!
今回紹介した書籍のほか、海外の書籍、論文、周辺分野の書籍、幅広く揃っていて、ビジュアルファシリテーションについて深く考えるきっかけになること間違いなしです。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?