ワークショップを通じて、日本との差異を見る。Service Design Global Conference 2018@Dublinレポート2

昨年10月に参加したService Design Global Conference 2018、レポート第二弾です!以前「新しいサービスデザインの挑戦が見えた!SDGC2018@Dublinレポート」という記事では、主にカンファレンスについてご紹介しました。
今回の記事では、様々なセッションと平行して行われたワークショップについてご紹介したいと思います。2日の間に参加したいくつかのワークショップから、2つの内容のご紹介に加え、ビジュアルファシリテーターとしての視点から見た日本との差異についてもお伝えします。

Facing your fear of the citizen

アイルランド、コーク州の行政の内部で行われた「市民を理解する」ためのワークショップのミニバージョン。
年齢や職業、家族構成などの情報を元にペルソナを完成させ、更に「そのペルソナが置かれている環境下でどんな不安があるのか?」「その不安はどう解消していけるか?」を簡易に考えるもの。
いわゆる統計などのデータ的な概要把握ではなく、「現実の市民にはどんな生活や背景があり、どんなことに直面し、どんなことを恐れているか?」を親身に感じるためのスタディでした。
「どんな不安、恐れがあるか?」を付箋に書き貼っていくのですが、台紙がちょうど時期だったハロウィーンにちなんで「蜘蛛の巣」に。ワーク内全体に遊び心が効いていたのが印象に残っています。(そういった雰囲気まで計画していたのは、ここぐらいでした。

Bulletproof Services:Prototyping Service Resilience

一度考えたサービスが様々な状況下においても粘り強く維持できるよう、事前に問題を想定していくワーク。実際に問題が起きる前に「想定できる問題への対応予測を立てる」ことに主眼を置いています。
様々なバックグラウンドを持つ参加者でも共通して話せるように、お題は「宿泊サービス」。(海外でのカンファレンスでは皆どこかに泊まってるので、誰でも理解できる)
オリジナルのカードから、その宿泊サービスで起こる「想定問題」を選び、その問題が起こっている模様をグループ内で模擬的に演じます。
一通り問題のロールプレイを終えた後、「事前予想」 「準備」 「モニタリング」など6つの項目から「 より強くしなやかなサービスにするために何ができるか?」をディスカッションしました。
研修的な企業教育的でもあり、企業に特化させ実践にも応用できそうです。

国内での実践における細やかな点に気付く

サービスデザインという大枠の中で展開されるワークショップでは、様々なアイディエーションや、顧客理解、組織における障壁やサポーターの予測、コミュニケーションの要は何かという検討など、私たち日本の現場でも行っているようなアジェンダがありました。むしろ取り組み方や方法に大きな差はなく、ぶつかる壁や課題も共感できることが多い印象です。改めていうまでも無いかもしれませんが、言語や文化的な背景は違えど、今まで通りのやり方からの脱却や、市場やユーザーへの理解を改めていく動きは世界に共通しているのですね。

そんな共通、共感することが多い中。こぞって「実践の中ではファシリテーションが重要」とはいうものの、参加したワークショップ内では進行に特化したファシリテーションで進められるものが多い印象でした。

カンファレンス内のワークショップは各回とも90分と短時間だということもあり、手厚いファシリテーションが必要な側面もあまりなかったとも言えます。

例えばワーク中にグループから挙げられた質問に対して、グループ内での検討や議論をして合意を得ることが必要なシーンでも、ファシリテーターが一方向からの解を与える場面がありました。また、拮抗しているディスカッションを見守るような寄り添い方や、ちょっと停滞しているグループに必要なヒントを出すような促しなどが、あまり見受けられなかったのは少し不思議にも感じます。意外とこういう部分は私たちの方が得意なのかもしれません。

ビジュアルファシリテーターとして見るワークショップ

ワークの開始前後など、自己紹介で出身国や普段の仕事を訊き合うのですが、ビジュアルファシリテーター(ビジュアルファシリテーション)という言葉が軒並み通じました。手描きの絵を交えてのディスカッションは馴染みがあるようで、ちょっとうれしくも感じました。

ただ、そういう役割の人がいるよね、招いたりするよね、という感じで、自分たちで絵をや図を描いてディスカッションを促している人は、一部の方に限られました。大体の人は「ペンを持つ=文字を書く」という感覚が強いようです。何人かに尋ねたところ、デザイナーがビジュアルファシリテーター的な役割で、ディスカッションに入っているとのことでした。

同じように絵や図を描いてコミュニケーションをしていた方に尋ねたところ「『カンタンなものでいいんだから、みんなも描いて!ほら、◯に手足を付けたら人になるでしょ?』と、いつも言われていたから、描くようになったのよ。」という背景をうかがえました。このような促しが力となり、会社でも全員が描く方針になったそうです

お互いに「こうやって言葉で通じないことも補えるしね!」と話しをしつつも、私たちのように「ビジネスに於いて手描きビジュアルを実践的に取り入れ、それを強みにしているサービスデザインファーム」というのは新鮮に映ったようです。

非英語圏から発信することの重要性

グローバルに展開しているコンサルティングファームが入った海外サービスでは、アジア各国や日本のような非英語圏にサービスデザインのプロセスを用いてローカライズの展開をする場合でも言語や文化圏の違いがあるにもかかわらず、その辺りの調査や導入がシームレスに行われています。しかし、ドメスティックにサービスデザインを主な事業としている企業ではまだこの垣根が大きいようです。自国や英語圏での文化的背景をそのまま持ち込んでしまうことで、本来進めたいことの中で誤解や軋轢が生まれ、苦戦してしまうという話をうかがいました。

英語圏ではケーススタディが行き交うのも難しくなく、サービスデザイナーやストラテジックデザイナーが国を行き交う事業も多く見られました。しかし、アジア圏、こと日本における実践的なサービスデザインについては、SDN Japana Chapterの牽引に依る点が大きく、まだ個々の情報の行き来が乏しい印象でした。

文化的な背景や、その地その地での暗黙知などを理解するための丁寧な理解を経た上で、本来の実践を進める必要があります。そのためには各国での実践事例は大きな助けになるはずです。

noteでの発信を初めて約1年。今後はこういった草の根的な発信と併せて、私たち自身の取り組みをより広く伝える方向にも力を入れていきたいと考えています。自分たちの実践を、より広く世の中に問いかけていくことで、新たに生まれるもの、見えるものがあるんじゃないかとワクワクしています。(なごや)

★★★

文具について、ひとつだけ

ところで、なぜワークショップ中、どこもかしこも油性ペンを配布するのか。ワークショップといえば、シャーピー(油性ペン・細字/上の写真に見える緑のキャップのペン)とばかりに。水性マーカーが無いわけでもないのになぜ!と不思議でなりませんでした。

誰も油性ペンの裏写りを気にしないのか?というと、そんなことはなく。みんなそれぞれ「裏に通るといけないから」と、壁に貼られた紙に書く時には下にもう一枚紙を挟んだりするんです。こればかりは、ナゾなままです。

おまけ:現地で使える、SDGCワークショップ参加術

SDGCの会期中に行われるワークショップは、マスタークラス以外はカンファレンス費用の中に含まれているので、別途費用がかかることはありません。
そのせいか、事前申し込み制の割に、当日キャンセルも多く出ます。「しまった!申し込み忘れた!」という人も、ワークショップが行われる部屋まで行っちゃいまいましょう!
その場で「申し込んでないけど、キャンセル待ちしたい」と伝えると、その場で待機させてくれます。(名前を訊かれる程度)
実は現地に赴く前、気付いたときにはワークショップの参加申し込みは全て満席になっていたのですが、3回ともその場待機で参加することができました。

人気のプログラムでも、「それなら♪」とテーブルごと追加席が出たりするので、諦めてはいけません。もったいないので行きましょう!!

(なごや)

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