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ビジュアルファシリテーションってなんだろう?~シベットのMAP to the VIZ WORLDを読み解いて探る~

「グラフィックレコーディング、ファシリテーショングラフィック、ビジュアルファシリテーションて何が違うんですか?」可視化の手法が広がるにつれて、そんな質問をいただくことも多くなりました。

そこで今回は、グラフィックファシリテーション創始者のひとりである、デビッド・シベット氏がVisual Leadersにて提唱した"MAP to the VIZ WORLD"を読み解きながら、「ビジュアルファシリテーションとは何か?」を探っていきます。

↑Visual Leadersの本の内容について語る動画にて、"MAP to the VIZ WORLD"が解説されています。

4つの可視化~MAP to the VIZ WORLDから読み解こう!~

シベットは、Visual Leadersの中で、可視化について4分類しています。
この分類名を翻訳すると、こんなかんじでしょうか。一つずつ見てみましょう!(以下分類説明は、上記動画の説明を理解しやすいようにかみくだいたものです。)

①グラフィックデザイン(GRAPHIC DESIGN)
デザインの専門職の人たちが行ってきた「可視化」。プレゼンテーションといった人と人とのコミュニケーションに関わるもの、雑誌やweb・アプリ・建築設計・地図のように人が利用するものなどのデザインが該当します。
視覚的に考えて、作って壊しながら、視覚的にアウトプットしていきます。

②データの可視化(DATA VISUALIZATION)
技術の進化に伴い、データの内容や量も進化していきました。複雑で量の多いデータを読み解くためにうまれたのがデータの可視化の分野です。科学の分野からビジネス等様々な分野に広がっていきました。

③ビジュアルファシリテーション(VISUAL FACILITATION)
シベットが先導しているのが、ここ「ビジュアルファシリテーション」。
絵や図、時には映像などのビジュアルで人々に働きかける取り組みを総称しています。

It's basically taking design thinking the tools of designers and and in some cases computerization visualization tools and applying them to group process and supporting people talking with each other and doing strategy doing organizational change.
(動画より書き起こし。太字は著者)

この取り組みに使われるものに、デザイン思考や、デザインのための手法たちも含まれます。また、動画を用いた働きかけなど、デジタルを利用した手法も近年は用いられています。
絵や図をグループのプロセスに適用することで、話し合いを助けたり、ビジョンを描いたり、組織の変革へつなげる力となることを目的としています。

④認知の可視化(COGNITIVE VISUALIZATION)
「あなたの頭の中でおきていること」の可視化です。どう出来事を理解し解釈し行動するかといたメンタルモデルや、「こうしたい!」というビジョンなどが含まれます。

※なお、シベットがVisual Leadersの中で扱っているのは、組織を変革するリーダーへ向けての「③ビジュアルファシリテーション」「④認知の可視化」の大事にしたい考え方や手法について、という点ご留意ください。

ビジュアルファシリテーションとは?

シベットの定義を読んで、私たちはビジュアルファシリテーションは『グラフィックやドキュメンテーションや映像等、様々な可視化のツールを用いて視覚的なファシリテーションを行う手法』の総称と捉えています。
ここには、グラフィックレコーディングや、グラフィックファシリテーション等の手法もこの中に含まれます。

注意したいのは、ビジュアルファシリテーションはあくまで「手法の総称」であるという点です。ビジュアルファシリテーションは、企業の戦略の企画や実行、チームビルディング、グループの問題解決、組織変革、まちづくり、市民活動やコミュニティ活動、福祉、教育など、様々な分野で活用されています。
当然、現場での目的、プロセス、働きかけるファシリテーターの役割、関わっていく人も異なります。

大事なのは、その現場の目的、プロセスに応じた手法の選択を行い、適切な関わり方を見出していくこと。新しいものやサービスを創造する会議と、コミュニティ活動の現場だと、ビジュアルファシリテーションが用いられる目的も描き方も大きく違なってきます。

▼新しいものやサービスを創造する会議の例
カスタマーの体験という本質を捉えて、新しいサービスをつくっていくことが目的でした。参加者、非参加者ともに容易に理解でき、知見を得られるようにすることで、組織での創造を促進するような描き方(時系列での体験可視化、体験を表現する即興劇のための道具)を行っています。

▼コミュニティ活動の例1(チームにフォーカス)
はじめてあった参加者同士が、これからの社会のあり方、自分たちのあり方をディスカッションするワークショップ。集まったのは立場は違えど、社会に対して率先して活動に取り組んでいる実践者たちでした。彼らが選んだテーマに対して、思いをだしあい、限られた時間内で深めてアクションを考えていくことが目的でした。
思いあふれる熱量のあるディスカッションでは、その熱量をそのままに記録し、お互いに問いを投げ合い流れを変えていきます。あえて構造化はせず、スピードとその場の流れによりそって描いて促すという関わり方となりました。

▼コミュニティ活動の2(ひとりひとりにフォーカス)
はじめてあった参加者同士が、防災活動と内発的な動機を紐づけて考え、相互のつながりを育むことが目的でした。年代や所属を超えて、お互いの状況・気持ちといった背景を理解し、共有しあうために、「人」にフォーカスをあてた関わり方、描き方(構造化)をしています。



1990年代の世田谷のまちづくりのように、まちづくりのプロセスと可視化が密接に紐づいている時代を経て、今はグラフィックレコーディングやファシリテーショングラフィックなど「視覚文法習得」の学習機会がたくさんあります。運営する主体によって、ある分野でのプロセスや目的が存在するものもあれば、話し合いの基礎としての視覚文法など、活かし方も様々です。

大事なのは、目的やプロセスの見極めと、そこに沿った適切な手法選択・関わり方の見出し方!そう私たちは考えて、日々現場に向き合っています。

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