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「3年でやってたら手遅れ」金沢美術工芸大学サービスデザイン授業インタビュー【学生編】

サービスデザインの授業を受けた人たちは、その後どうしてるんだろう?

こんにちは、名古屋です。2017年に初めて金沢美術工芸大学(以下、金美)で行われることになったサービスデザインの授業に同行し、初回の授業をグラフィックレコーディングしてから丸2年以上が経ちました。

当時は自分もサービスデザインの海に飛び込んだばかりで、グラレコをしながらサービスデザインのポイントを再確認するような状況でした。ともに学ぶような立場で授業を垣間見ると、当惑した様子や、アイデアとはいえどう考えていったものか、なんでこれじゃダメなんだろう……と、考える姿をよく見かけました。

改めて、サービスデザインの授業を受けた学生さんは、今どんなことを考えているのか? 美大でモノを創る前に、サービスデザインの授業を受けた彼らのその後を追いかけてみました。

金沢美術工芸大学でのサービスデザインの授業とは

以前のnoteでも触れていますが、今一度この授業についてお話します。

2017年・2018年・2019年と3年、弊社の三澤が金美でのサービスデザインの授業を担当しています。金美のデザイン専攻の2年生全員(視覚デザイン、製品デザイン、環境デザインの3専攻合同)を対象とし、4月~6月の間、毎月1週間集中型で3回に渡る必修授業を行います。

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サービスデザインの概論にはじまり、実際に自分たちでサービス体験やリサーチを行い、サービスを理解し、テーマに沿った新たなサービスを検討。
アウトプットとして、カスタマージャーニーマップ、エコシステムマップ、そしてサービスをイメージできる映像を制作し、最終日にはご協力いただいた企業の役員の方を前に、自分たちで考えた新たなサービスをプレゼンします。

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やっと創作できると思った2年次、その始まりがサービスデザイン

彼らは1年次、とにかくデザインのための基礎を叩き込みます。素材の理解、形の理解、様々なものを自在に操るための基礎トレの1年。
そこから2年に上がり、ようやく自分で考えながらモノを作れる!!というタイミングで、いきなりサービスデザインを学ぶのです。

2017年の開始当初こそ彼らは「?!」となっていたようですが、最初に学んだ学生から「先輩の言葉」として新2年生に語り継がれ、今はちょっとした名物授業になっているようです。(新2年になる学生が前のめりになる結果に)

先輩からの言葉として極端だったのが「(概論などに出てくるものは)とにかく腑に落ちるまで調べろ!」「(三澤に)言われることは、いつか役立つからやりぬけ!」の2つ。

困惑を越えた先輩だからこその言葉や……と思いつつ。実際一緒に仕事している私たちもそういうところあるわーと妙な共感を覚えたりもしました。

3年生でやってたら、手遅れ

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まずは産学連携プロジェクト「これからのエンターテイメント」のプレゼンを終えたばかりの3年生グループにインタビュー。

--どんな影響がありましたか?

「今回プレゼンを終えたばかりのプロジェクトの中でも、ポスターやモックなど制作物のことだけではなく、エコシステムやどうやったらこれがお金を生み出す、価値を感じられる仕組みになるのか? を考えながら手を動かしていました。」
「あの後、どの授業でもそういうことを考えていて、考え方というか、身体に溶け込んでいる感じ。」
「そう、そもそも、この考え方がないと、考えられなくなってる。」

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影響という一言では片付けにくいほど、しっかりと血肉になったことが伺える言葉がどんどん出てきます。影響というより、有る種の業のよう。

--授業以降、新しく気付いたこととかはありましたか?

「自分が何かサービスを受けるような、例えば買い物とか、そういった社会の中にある”価値”に改めて気付きました。
「今まで感じることがなかったというか、見てなかったことを見るようになった。」

産学連携プロジェクトを通しても、これがどう社会に価値を与え続けられるのか? を考えていた結果として就活にも大きく影響していたようです。

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「プロダクトに限らず、モノ、コトを取り巻く全体をデザインしようと思ったら、やっぱり2年で知っておかないと。3年でやってたら手遅れだった。

彼らは専攻でのものづくりを越えて、”しくみやシステムを創ることへの面白さ”を知り、 これはずっと価値を生み出し続けられるのか?という視点で見るようになったことが、全体的に大きな影響として見えました。

ミサワクラッシュ?

彼らの先輩である4年生からは「ミサワクラッシュ」と呼ばれるものが聞こえてきました。サービスデザインの概論以降、自分たちでアイデアを出しながらサービスを考えるあたりで、グループの中でも意見が割れ、議論になることも。決着しない議論の最中、各班を回っている三澤は上がっているアイデアをさらっと見て「これ、面白いと思ってるんですか?」と邪気の無い一言を残して去っていったようです。

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全アイデアを打ち壊されるハンマーを食らったようで、班も「今のアイデアで議論してる場合じゃなかった!!」と一気にまとまり、新しいアイデアを練り直したそうです。
(私たちも頻繁に崖を転げ落ち、這い上がっている日々です。ハイ。)

人生の選択肢の広がりに

彼女は環境デザインを専攻し、空間づくりを考えていた方でした。その空間について「任せっきりの空間ではなく、ありそうでなかった体験(コト)から、空間を考える。」という考えに至ったと話してくれました。

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後輩に対しては「(サービスデザインは)合わなくても、絶対やった方が良い」「サービスデザインの考え方があれば、もっと面白く、新しく創り出せる」と、力強いメッセージも。

就活の中でも、ありそうでなかった体験から空間を考える環境に身を置くべく、今まで金美からの就職先としては無かった「インフラ系」に就職を決めていきました。

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もうひとりの4年生は、サービスデザインを事業としている会社を見つけ出していました。とにかく調べに調べて会社を訪ねていました。

「モノづくりに限らないこと、でも何をすればいいんだろう?」と考え、外からの情報を得ることで、自ら解を引っ張り出しています。

東京にはいくつかサービスデザインを事業としている会社がある中で、「より社会を捉えられる環境を」と進路を決めたと聞きました。春からは同業なんだ! と思うと、思いがけずかなり嬉しい気持ちになりました。

未来につながる授業

大学で受ける授業のひとつひとつが、未来を作っていくものには違い有りません。授業を通じて様々なものづくりを経て、他の学生や先輩後輩の創り出すものも見る。日々鋭く感性を磨きながら、同時に進路を考えています。

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既に、大学を出てすぐの就職がゴールでは無いことを、彼らは語るまでもなく当たり前のこととして捉えています。

先々広がっていく可能性を踏まえた上で、どんな道を選ぶにあたってもサービスデザインの考え方が強く影響していることを肌身で感じたインタビューでした。

続編では各専攻の先生方へのインタビューをお届けします。大学という社会のしくみの中で。先生方ご自身がどんな挑戦をされているのか? 続編もお楽しみに!

参考:グラグリッドの提供サービス

参考:グラグリッドが手掛けたサービスデザインプロジェクト例


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