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血の海と化すナイトプール、そこは戦場だった。

7月29日(月)

朝から家にいるのが久々なのでめずらしく家の大掃除に着手。しかし隣の家の解体工事が始まって騒音がひどいので、シャワーを浴びて化粧をして出かけることに。皮膚科に前回と同じ薬の処方箋だけもらいに行って、それと引き替えに薬局で薬をゲット。

近所のカラオケに行って大森靖子縛りで全力ヒトカラ。今週末、はるばる名古屋まで大森靖子のライブを見に行くのでその予習である。

前の人は松田聖子縛りだった模様。それも楽しそうだ。

合間にあげは嬢に「せんせいあたしパーなんです」「ねえアイドルになりたい」などと歌詞をLINEしまくり、「断片的だとやばい人みたい笑」と返事をもらう。どうもやばい人です。

「オリオン座」が名曲過ぎるとかねてから思っていたのだが、歌いながら改めて歌詞を見たら本気の名曲だった。ライブで聴けたらたぶん泣く。

カラオケを終えて沖縄料理屋に入り遅い昼ご飯。ソーキそばを食べる。その後スタバで、早稲女同盟交換日記の原稿書き。なんちゃらフラペチーノには目もくれずいつも通りにホットコーヒー。

交換日記、ネタは決まっていたのにこの日記のようにすらすら文章が書けず、無理やり書き上げたけれど今一つしっくりこない。あげは嬢に下書きを送りつけて相談(回す前にネタばらしするという交換日記の概念を揺るがす行為)。

「交換日記というテーマに縛られてサービス精神が出すぎてる感」「一言でいうと切実さがない」

とのこと。言いたいことはわかりすぎるくらいわかるのだけれど、交換日記の2ページめ、まだ全員回りきってもいないうちから切実さかもしてたら頭おかしいし、この日記や文フリで出す同人誌とも差別化したい気持ちはある。というわけでもう少し悩ませてください(編集部への私信)。

そういえば交換日記止める子っていつも同じだったよね。

朝からこれだけアクティブに動いて休日を満喫しているのにまだ日が沈む気配はない。それでも約束の18時が近づいてきたのでスタバを出る。今日はTとナイトプールに行く約束をしているのだ。

どう見てもナイトプールの主要客層からはずれまくっている我々のナイトプール選定基準は以下の通りだ。

①CanCamプロデュースじゃない

②DJイベントをやっていない

③酒と食べ物が充実している

無事にこれを満たしたナイトプールを選んだおかげで、ウェイウェイした人々に囲まれて居心地悪い思いをすることなく楽しめた。

徐々に日が暮れてくると、プール全体がピンクの照明でライトアップされ、インスタ映えしそうな浮き輪が係員の手で次々と水に浮かべられていく。ひときわ目を引くのはばかでかい白鳥の浮き輪である。

プールを囲むビル群と東京タワーに明かりが灯り始めた。長いすに寝ころんでシャンパンを飲みながら、どのフロアにも明かりが灯っているビルを指さして「これはブラック企業ばかりのビル」、明かりがまばらなビルを指して「これはホワイトなビル」と言い合う悪趣味な遊びに興じる。

オーダーしてからちょうど十分後に運ばれてきたフィッシュアンドチップスとマルゲリータは美味であった。レンチンじゃない、揚げたて焼きたてのおいしさ。
半裸でビル風に吹かれて酒を飲んでおいしいものを食べながらごろごろしているのはなんて幸福なんだろう。旅行でもアウトドアでも飲み会でも、基本的に落ち着いた空間で旨い酒と食べ物があってのんびりできれば私たちはそれで幸せになれる。

シャンパンを飲みながら、五人組の若くて可愛い女の子が順番に白鳥型の浮き輪にまたがり写真を撮りあう様子をほほえましく眺めていた。すると、そのうちの一人がオムツのように股上の深いビキニを履いているのに気づいた。

「せっかくあんなに可愛くてスタイルがいいのになんであんなにダサい水着を着ているんだろう、お母さんのを借りてきたのかな」
と私が真剣な声でTに耳打ちすると、
「今年はあれが流行りらしいよ」
とTが同じくらいまじめに答えた。にわかに信じられなかったが、ググってみたところ本当らしい。オムツ水着ではなくハイウエストビキニというそうだ。
「オムツなんて言わせないよっ。ハイウエストビキニを可愛く着こなすhow to」というサイトには、オムツもといハイウエストビキニを着こなすための、インナーマッスルを鍛えるガチめのエクササイズが紹介されていた。布地で隠せるなら贅肉がついてても毛が生えててもいいか、などと意識が低いことを考えて水着の上からユニクロのUVパーカーを羽織っている私とは覚悟が違った。
無知でごめんねっ。もうオムツなんて言わないよっ。ちゃんと可愛く着こなせてるよっ。

五人組女子や外国人観光客の集団が白鳥浮き輪との写真撮影に飽きたようだったので、私もフリーになった白鳥を拉致して乗ってみることにした。三回チャレンジして三回とも転覆してプールの底に沈む羽目になるとは知らずに。

みんな白鳥の首にまたがって騎乗位を思わせる動きをしたり、白鳥の背で立ち上がってHOT LIMITばりに踊ったりしていたのにおかしい。なんで私だけ。仕方がないので、ひっくり返った白鳥を「獲ったどー」とばかりに三回頭上で掲げたのだった。

帰宅後、男が撮影した私の写真をあげは嬢に送ると、「ピンクにライトアップされたプールが血の海にしか見えない」「ぐりこさん全身赤く染まってるけど殺めた後ですか」という辛辣なコメントをいただいた。そういえば、私のシャンパングラスにだけ、なぜか小さな羽虫が次々と飛び込んできて、その都度取り除いて死骸を放り捨てながら酒を飲んでいたことを思い出した。飛んで火にいる夏の虫とはまさにこのことだ。

死んだ虫や横転した白鳥やオムツが浮かぶ血の海、殺すか殺されるかの真夏の饗宴。
イケイケDJやCanCam女子がいなくても、ナイトプールはやはり狩り場、すなわち戦場なのであった。

#日記 #大森靖子 #一人カラオケ #ナイトプール

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