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汁のない麺と女子会はしご

8月15日(木)

昨日の日記で骨髄バンクのドナー候補者に選ばれたことを書いたら、「興味があるけれど、まだ登録できていないから続報を待っています」という感想をもらった。ドナー登録をうながす宣伝はよく見聞きするし、オリンピック選手が白血病の発症を発表して実際のドナー登録者はとても増えたそうだけれど、実際に登録した後、どういう流れで提供に至るのかは私もよくわかっていなかった。ちなみに私がドナー登録したのは学生時代のことだ。当時通っていた献血ルームで簡単に登録できたと記憶している。登録してから八年ほど経って、今回初めて通知が来た。

今回通知と一緒に送られてきた「ドナーのためのハンドブック」を見ると、ネット上や新聞投稿などでは、「提供日時・場所など、お互いが特定される可能性のある情報は公表しないでください」とのことなので、その部分に気をつけて、今後の流れや自分が考えたことについて書いていきたいと思う。

提供意志や健康状態、日程などについてのアンケートに記入して早速返送した。

ふしぎちゃんとあげは嬢と、12時半に上野駅中央改札で待ち合わせた。私は二人とも一ヶ月以内に会っていたが、二人が会うのは一年ぶりだという。暑いから外に出たくない! ということでアトレをうろうろし、マンゴツリーカフェでパッタイを食べた。私は汁のない麺が大好物なのだが、パッタイは世界各国の汁のない麺の中でも最上位に位置すると思う。まじでうまい。またタイでパッタイを食べたい。

最近三人ともいろいろ思うところがあって、時間をさいて「世界の解像度が低いとなんでもかんでも自分の理解できる物語に落とし込んじゃうよね」という話をした。いくつも実例が出たのだけれど、おもしろかったのはあげは嬢のお母様が、二年前私があげは嬢の結婚式に行かなかった(転職直後でどうしても仕事が休めなかった。二次会は行った)ことについて、「ぐりこちゃんはきっと離婚直後で傷が癒えなくて親友の結婚式にも出る気になれないのね」と言っていたっていう話。親世代にとっては女が離婚することも、仕事を理由にして友人の結婚式に出ないことも一大事で、それを理解しようと思うとそういうはちゃめちゃな物語を作り上げてしまうのだろう、という結論になる。ぐりこが離婚して傷を負ったとか思っている人誰もいないよねって爆笑したけれど、爆笑してくれる友人たちで本当によかった。ない傷を勝手に作られて腫れてないのに腫れ物に触るように接されても困る。

アトレを出た私たちはタピオカを求めて蒸し暑い外の世界に繰り出していく。私とあげは嬢は最近ある賭けをしていて、それに私が勝ったので、あげは嬢がタピオカをおごってくれることになっていた。上野駅と御徒町駅の真ん中らへんにあるHi茶に行って、黒糖タピオカミルクティーを頼む。

前回は日和って無糖・ホットという選択をしてしまったが、今回はちゃんと氷ありの甘いやつにした。Mサイズでも量が多くて、半分飲んだところですでにお腹いっぱいだったが、人のおごりで飲む甘くて冷たい飲み物は、甘くて冷たくてとても美味しかった。

しゃべりたりなくて再びアトレに戻り、アフタヌーンティーに入って紅茶を飲む。ふしぎちゃんのおじいさんが自分の自伝を書いたそうで、自伝を書いたことによってまたいろいろな出来事を思い出して追加で書くことが出てきたという話を聞いた。最近日記ブームの私たちは、やっぱり書くことで記憶を整理できるんだね、何歳になっても書くのは大事だね、と言い合った。あとは、おじいさんは自分が書きたくないことについては、どんなに親戚に書くよう言われても書かなかったそうで、書くことと同じくらい書かないという選択をすることも大事、という再確認をした。

さっきのあげは嬢母の話もそうだけれど、同じ出来事について語るのでも、その人のそのときの見方や感じ方次第でまったく違う物語が立ち上がってくる。自分が紡いだ物語がいつでも誰にとっても正解とは限らない。多分「正解」なんて存在しない。だからこそ友人としゃべり続けて、自分でも書き続けて、自分の物語をどんどん更新していきたいなと思った。自分の中に閉じこもってアウトプットもインプットもしなくなって、「私はこう」「あの人はこう」「世界はこう」って決めつけて思考停止したくないんだ。正直、日記を四十日以上続けてきて、毎日似たようなことを書いているなあと思うこともあるけれど、書き続けているうちにその先にある何かにたどり着けるかもしれない。だから、粛々と、日記。

早稲女同盟の交換日記が更新されたので三人で読む。グアテマラ・R・マヤがアガサ・クリスティー『春にして君を離れ』を紹介していたのだが、「信じていた世界が信じられなくなる怖さ」について書いていて、今日のテーマとしっくり来すぎていた。
アンデルセンでパンダのパンを買うというあげは嬢とふしぎちゃんと別れて、私は上野東京ラインに乗って別の女子会に向かう。改札前で猫柄Tシャツを着たメイコが待っていてくれた。アトレのプロントに入り、文芸サークル「しゃんぶるぶらんしゅ」が11月24日の文フリ東京で出す新刊の編集会議。今日はずっとアトレにいるな。

仕事の早いメイコはもう表紙と裏表紙のデザイン案を見せてくれた。私も自作小説を見せる。「ぐりこの単著のほうの原稿の進捗はどうなの?」と聞かれた(私の個人本も、編集はメイコが担当してくれている)が、不意打ちだったので私は何かをごまかすときの変な顔になってしまった。

「私ね、毎日日記がんばってるよ!!!」と話をそらすと、

「私はもう(編集のために)徹夜はしないからね」と冷たく返された。単著の原稿もがんばろう。

そこに仕事とマッサージを終えたロッキーが合流。目当ての沖縄居酒屋の開店時間を待って強風と豪雨の中移動した。私のたっての希望で沖縄居酒屋に行くことに決めていたのに、私は待ちきれずに昨日の二次会でフライング沖縄してしまったことを告白し懺悔した。

店に着いて、健康にいいと書かれたゴーヤビールを頼む。そして私は、ビールを飲むときに健康のことなんて考えたらいけないと学んだ。

ロッキーはこの前、私があげは嬢との賭けに勝つためにとった行動について本気で心配して「大丈夫?今からでも飲みにいこうよ」と連絡をくれたので、私は反省してロッキーに謝罪した。もう二度とロッキーに心配かけるようなことはしない。

ここでも世界の解像度の話をして、九月に三人で行く予定の旅行の話をして、コスメの話をして、また汁気のない麺(ソーミンチャンプルー)を食べて、さらにタコライスを食べて、解散した。帰りは雨がやんでいてよかった。

#日記 #エッセイ #女子会 #骨髄バンク #文学フリマ #早稲女交換日記

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