Farewell-Festival 2022

回送と回想

『この列車は車庫に入ります。引き続きのご乗車はできませんので、ご注意ください。』

回送列車はどこへ行くのだろうか。そんなことを考えたことはないだろうか。もちろん我々は、回送列車が車庫に入り、一通りの確認ののち、また折り返して走ることを知っている。

それでもなお、その先が見たい気持ちを知っている。回送列車に乗ったまま車庫に運ばれたい気持ちを持ったことはないだろうか。そこ自体には何もないのに。

世の中のあらゆる事象には終わりが存在する。列車は終点まで走ったのちに車庫に入るように、祭は閉会まで続いたのちに思い出としてしまわれる。

世の中には出会いよりほんの少しだけ多く別れが存在する。回送列車に乗り続ける執着心にも似たそれは、外から見れば決して美しいとは言い難いが。

……そう、回送列車はまた走り出すのだ。ほとんど同じ姿で、少し気持ちを変えて走り出す。
祭のあとFarewell-Festivalが好きすぎて、ほんとうの終わりと別れを知らないから、楽しかったとまだ笑えるのだ。

では、次に目を覚ました時、私は何処へ向かうのだろう?

『この列車は、ノアの方舟です。行先は、まだありません。』

今ここに居るのは、たくさんの私一人と、私以外の全てNOR一人。

「車掌さん、もしくは船頭さん。ノアの方舟は何処へ征くのでしょうか?」
「本当に聞きたいのは"何処へ征くか"、ではなく、"何故征くか"ではありませんか?」
「では、ノアの方舟は何故征くのでしょうか?」
「それはきっと、可能性を潰えさせないためでしょう。」

まだ隣の車両へ動けないからか、ここはひどく静かに感じられました。


変か変化か普遍化か

引退、という言葉がある。

引退はどのような場合に行われうるだろう。
それは、実力が出せなくなった時。
それは、一つの区切りを迎えた時。
それは、終わりを迎える覚悟の時。
それは、
それは、
それは。

実は、ある特定の者達は気軽に引退して復帰する、所謂引退詐欺的な行動を行ったりする。というのも、私がその一人であるからだ。

軽めに「休止」としておけばよいものを、「引退」としてそれそのものをエンタメと化す。そして「復帰」もまたエンタメと化すのだ。

変なことだろうか?では考え直してほしい。

非常に優れていることを「ヤバい」と言わなかったか?
感情が強く揺さぶられることを「エモい」と言わなかったか?
笑えるようなことに対して何故か草を生やさなかったか?
アルファベットの'z'を並べて眠りにつかなかったか?

そうやって言葉の意味を書き換えて、書き足して生きてきた。そんな我々だからこそ、壮大な身内ノリを「歴史」と呼ぶのだろう。

変化は、起こりうる。時間という強い力を媒介して、あらゆる変化は起こりうるのだ。
例えばそう、私自身の感情も。
ある人間は言った。「人間とは、変化をする生き物です。」
私は、私の中の変化をまだ受け止め切れていない。少しの驚きと、少しの困惑と、少しの虚脱と。

私は私に問いかける。「それはStaticではないか?」「それは普遍的な日々ではないか?」「それは本当に面白さを提供できるのか?」
心配過剰であることは分かっているし、じきに自分の正しさは証明されるだろう。その上で、私が私自身に耐えられないことはあるかもしれない。

実は私の授業は、ほとんど何も提供していない。もし印象に残ったのなら、それは授業を受けたあなた自身が、よく考え、よく行動しようとしているからでしょう。
そのうち、それだって普遍化していくでしょう。人類は、近い将来あらゆる縛りから解放され、本来の輝きを取り戻すはずです。そしてこれは、私の終点命題の一つでもあり。

もしくは、私の教えと教え方も普遍化していくのかもしれない。「グリントチルドレン」とはよく言ったもので、これは結構嬉しくて、何か心に残ったものがある人達がいて。そういった人達もいま、講師としてあの教壇に立っているのだ。
なんとなく、雛鳥を見守るようで微笑ましいよ。

変か変化か普遍化か。
GlinTFrauleinは、7期の講義をもって学園講師を引退します。

さて、いつ復帰しましょうか?
とりあえず、またN期後に会いましょうね。(天の神様と、生徒会様の云う通り、ですけれど。)


[Endmark.txt]

終わりがあることの切なさには、慣れることはないでしょう。
私はあまりにも、終わらない日常と、ハレの日を好きすぎてしまったようです。

幕引きとは何のためにあるのでしょうか?
私は、次の舞台のためにあるのだと信じています。
これは、止めるためのピリオドではなく、進むための、超えるための、紡ぐためのピリオド。

ノアの方舟は何処へ征くのでしょうか。
ここはとてもいい場所だったけれど、すこし嵐に巻き込まれてしまいました。
この身はどこまでもついていく覚悟があるみたいだから、私はたくさんの人がこの方舟に乗るのを期待しています。

私はここに、何を残せましたか?
たくさんの関わりと、楽しい思い出と、素敵な時間と、少しの秘め事。
いつか、全て笑い飛ばしましょう。
いつか、もう一度出逢いましょう。
この旅は、まだまだ先が長いみたいですから。

ここに、1つの決心と決別があって。
私は、私と向き合わないといけない。

月と星、魔法使い、文化、表現、偶像崇拝、そして仮葬生前想・再 私の終わりと全ての遺産に至るまで。
皆からもらった翼で、少しだけ前に進めそうだよ。


世界は、変えられないかもしれない。
でも、創り出すことができる。

新たな舞台で、新たな物語を紡ごう。


cp.V GlinTFraulein as "Nextage"


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