2005PRIR-12_のコピー

「見せる」意識は スポークスマンに必須 -メディアが見たイメージ戦略 vol 8- :『PRIR』寄稿記事

※本記事は『PRIR』 12月号(2005年)に掲載された日野江都子の寄稿記事からの転載です。

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2019年9月13日現在の所感

実はちょうど今、米国最大の某展示会での日系大企業のプレスカンファレンス対策の戦略を練るため過去資料のリサーチ、様子をインタビューしたり、ここ数年のその会場でのプレゼンテーション片っ端から動画でチェックしているところ。

そこではたと気づいた。日系企業に向けたプレゼンテーションの改善点・注意点としてリストしていることは、この記事を書いた14年前と全然変わっていない。どういうことなのだろう? 来年に迫った東京オリンピック招致が決定した際のプレゼンやTEDなどの影響で、プレゼンというものが認知されたかのように思えたのだが、どうやら何かが違っているように思える。「何のため、誰に向けて、どうやって、どの程度までやるのか?」その文脈が明確でないのだろう。そして、ついついテクニックに頼りすぎて、本当は何よりも重要な「伝えたい」という熱と、伝えたい相手に「伝わる方法」を心がけそれに努める冷静さの両方を同時に持ち合わせることが欠落してしまうのだろう。

ある日系大企業日本人CEOのプレゼン映像を見つつ、英語も堪能、スピーチもその場の立ち居振る舞いも非常に慣れているけれど、綺麗に作られすぎて、そこに人間っぽい温度がこもっていないような、するするっと聞けるけれど、残るものがないような不思議な物足りなさを感じ、まだまだ先は長いなぁと思うのだった。

舞台上で自然に見えるというのは、綺麗にやり切るよりももっともっと難しい。自然に見え・聞こえる「温度」と肌に感じるような「バイブ」がスピーカーの姿・表情・動き・声・言葉すべてから聴衆に伝わって初めて聴き手の心をつかむのだから。

だからこそ、14年前のこの記事をもう一度。

あれから相当な時間が経ったけれど、プレスカンファレンスでのスピーチやプレゼンで大事なことの一つは、国内・国際舞台どちらもこれだと、今改めて伝えたい。

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 新製品やブランドお披露目のプレス発表会で、企業イメージやその製品をいかにうまくメディアに伝えるかは、スポークスマンにかかっていると言っても過言ではありません。

 スポークスマンに求められるのは、その人自身を通して、「信頼感」「余裕」「自信」「期待感」を、その場に来ているメディア、そしてそのメディアが発信する情報を目にする一般ユーザーに対して感じさせること。つまり、企業の顔であり、伝道者になることなのです。

 私自身も、プレス発表会の場にご招待いただくことも多く、反対にそのような場に立つ方の事前コンサルティングやトレーニングも数多く行っています。どの企業の方もプレゼンテーション用の資料や内容に関する準備に余念がありませんが、それを伝えるスポークスマンのアピアランス(外観)の準備、その重要なポイントと効果に関してはまだまだ認識されていないことがほとんど。この大切さを伝える機会のある度に、必ず思い出す人がいます。

 それは、昨年4月に開催されたフォード・ジャパン・リミテッドの新車発表会に出席した際のこと。天井の高い、大きな会場。ステージ上には、当日発表するヨーロピアンカラーの美しい車。それを映し出す完璧なライティング。車という、大きく硬い物体を前に、その方が絶妙のバランスで立っていらっしゃいました。それが、忘れられないスポークスマン、同社マーケティング本部長アイオン・ワーナー氏でした。

 ステージにさっそうと登場されたワーナー氏は、きき取りやすい声のトーンとスピードで、スマートにスピーチを開始。視線を引きつける手振り身振り、すっと伸びた姿勢、一カ所に立ち止まったままではなく、話に合わせて歩いてみたり、立ち止まったりする際の無駄のない身のこなしは、その車のアクティブさと機能性を、効果的に印象付けていました。 そして、つややかで上質であるだけでなく、事前の手入れが完璧に行き届いていることが一目で分かるダークスーツは「威厳・余裕・自信」そのもの。前にも後ろにも座り皺・動き皺一つなく着こなしたその様子は、まさしくパワー・スーツと言うにふさわしいものでした。

 この一部始終をステージにほど近い位置から拝見し、その細部にまで配慮を感じられるアピアランスに、「これぞエグゼクティブなスポースクスマンが持つべきイメージ戦略」と実感する、そんなプレス発表会でした。

 プレス発表会の内容や企画がどんなに素晴らしくても、それを伝える役割を務めるスポークスマンであるエグゼクティブの、ステージにおける装い・立ち居振る舞いや話し方いかんでその成功が左右されます。

 最初の商品説明をエグゼクティブが行うその意味は、最初のイメージ (第一印象)が肝心だからこそです。企業や商品の第一印象を作るプレス 発表会では、スポークスマンを務める人の地位や立場の重要さが持つ說得力と重厚感・信頼感を、聞き手に 印象付ける大切な役割があるのです。

 商品内容はもちろん大事です。しかし、それをアピールするスポークスマンとその企業や商品とのイメージ バランスこそ、メディアや一般ユー ザーに強いインパクトを残すのです。 効果的なアピアランスによるイメージ戦略は一朝一夕では身につかないもの。見せるため、見られるための意識と準備こそ、エグゼクティブには必要です。

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