2005PRIR-06_のコピー

「ネクタイの締め方」 即ち仕事ぶり!? -メディアが見たイメージ戦略 vol 2- :『PRIR』寄稿記事

※本記事は『PRIR』 6月号(2005年)に掲載された日野江都子の寄稿記事からの転載です。

 男性の服装の中で注目を集めやすいポイント、それは「ネクタイ・靴 (余力があれば時計)」。人間が相手を見る際の視線の動かし方は、顔、全身を見ながら足元、上の方に戻り顔周辺となる。相手のイメージを認識 する際の比率は、顔0%対そのほか (全身)3%ともいわれることから、前述した注目ポイントの一つ『ネクタイ』は最もメッセージ性が高い装身具であることが分かる。さらに、面接などの際「相手の目(顔)を見ることができなければ、ネクタイの結び目辺りを見よう」と教えられるほど、ネクタイの結び目は顔の一部と扱われている。それは人間の顔の中で最もよく動き、音も発する、伝達力の 強いパーツ「口」の近くにあるから だ。また、ネクタイは男性がビジネスシーンで身に付ける物の中で、最も色幅が広く、その位置する場所か ら作られるイメージとして、女性で言うところの口紅やアクセサリーと同じ働きをする。口紅やアクセサリーが外観の全体イメージにアクセントを加え、バランス調整の役割を果たすのと同様、ネクタイを締めることは装いの「仕上げ」という意味合いが非常に大きく、それを自ら行い 披露することのできる部分なのである。

 それだけ、ネクタイがキマルか否かが、全体のバランスと締まり具合の良し悪しを左右し、さらにそのメッセージは、見ている側に 顕著に伝わるのだ。「パワー・タイ」という言葉が一般的になるほど注目を集めることができ、イメージ戦略を有効に行使することのできるポイントなのである。

 ビジネス上のイメージ戦略には大きく分けて2つの方向がある。「攻め」と「守り」。「攻め」とは、ネクタイにおける色・模様・デザインや、シャツの襟と顔立ちに合わせた結び方を、TPOや企業イメージ、身に付ける人の個性を踏まえて選別すること。一方「守り」はネクタイを奇麗に扱い、きちんと定位置で的確かつ丁寧に締めることだ。

 そして、今回注目すべきポイントは後者、「守り」のテクニック。「何をいまさら...」と言うなかれ、長年毎日行ってきた行為であるが故に、ついついルーティンになり、最初は意識していた細部にわたる注意を怠ってしまいがちになるもの。その結果「手を抜いている」「余裕が無い」とのイメージを周囲に与えしまっている場合が多々あるのだ。「ネクタイの締め方を見れば、仕事をどのように仕上げる人なのか、良く分かる」ともいわれるくらい、その人の状況や性格が見える部分であるネクタイ。キリリと襟元まで締め上げられた適切なサイズの結び目や、張りのある手入れの行き届いたまっすぐに下がったネクタイは、相手に信頼感を与える最大の武器だ。色合いやデザインという戦略を、より効果的にするためにも、この武器の扱い方を極めることが必須なのである。

 「基本なくしてアレンジなし」。企業の1年の締めと、ここから1年の姿勢を表すこの時期、もう一度鏡の 前で、ネクタイの締め具合を要確認!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?