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ネクタイ業界の苦難: 今のご時世、ネクタイ購入で人が得たい成果と提供が望まれる効果って何だろう?と考えてみた。

世界的カジュアル化と言われ始めて、もう何年経つだろうか。

日本のクールビズもこの夏14年目。これは本来暑い中でいかに快適に仕事をするか?という目的のもと始まったことだが、目的の如何を問わず、この期間は確実にカジュアルダウンした装いへとシフトする。当初は6月1日〜9月30日の4ヶ月だったその適用期間も、2011年〜2015年は5月1日〜10月31日の6ヶ月と長くなり、2016年〜今年2019年は5月1日〜9月30日の5ヶ月間となっている。

WWDのこの記事を見て、いろいろ考えてみた。

この14年間、年の約半分がビジネスシーンでの装いはカジュアル化され、特にネクタイを締めない装いをする比率が高くなっている。

「立場・仕事柄ネクタイはきちんとします」という方がいたとしても、そういう方であったとしても、それをする必要のない時にはビジネスカジュアルの装いをする機会が自然と増えているはずだ。なぜなら周囲の環境=当たり前が軽装化しているのだから、不思議なことではない。

カジュアルダウンした時、最初に取り除くのがネクタイ。この14年でビジネスパーソンのネクタイ着用頻度が約半分に減っているとするなら、購入頻度も当然比例して減っているのはあきらかだろう。

ビジネスパーソンなら誰でも当たり前に必要なもので、消耗品。最高級の品だったとしても手の出せる価格だからこそ、バリエーションを保つためにも自分で購入し、服のようにサイズを考える必要がないからこそ(本当はあるけれど)、ギフトとしても用いられていたネクタイ。

従来のやり方のままでは、ネクタイが必要のない時期の長さ、世界的な服装カジュアル化、業界の慣習などなどの煽りを受けてしまうのは当然なのだが、何とも切ない。

いつの時代もネクタイを着用するからこそ成立する存在感というものがあり、それを求められる立場や場面というものがある。

しかし時代は様々な場面で多様化しており、正しい答えはひとつとは限らなくなっている。これをつけておけば安心というものはなくなってしまったのだろう。

もしかしたらネクタイもそのひとつなのではないだろうか。

究極の選択で、ジャケットにシャツ、カジュアルなパンツの人よりも、よれっとしているけれど一応スーツ(上下揃い)、レギュラーカラーで古臭い感じだけど白のドレスシャツ、剣先に髭が生えているかのように糸がボソボソ出て、結び癖でしわしわになっているネクタイだけどそれらを着用している人の方が良いとされる時代は完全に終わったということは言える。

自分にとって必要なもの、自分にとって価値のあるもの、そして自分にとって最も相応しいものを、自分の立場や状況・目的を踏まえた上で、自分の頭で考え・判断し・選ぶ、その能力が試されている。

その中に、ネクタイをする・しないの選択肢があり、どういう人たちがこれからもネクタイをする人で、その人たちはどういう時にする、どの目的を果たしどういう結果を求める方こそ必要とするのか?

その希望を叶えてくれるネクタイだったら、数は少なくとも、それなりの額の成果の上がるものをこれからも購入するのだろう。

ちなみに筆者は仕事のひとつとして、エグゼクティブ向けの服から装飾品のアドバイス、日本国内では出回らないものをNY側で探して届けることも承ることがあるため、彼らのビジネス文脈での目的を果たす戦略的ツールとして最も力を発揮するアイテム選びには定評がある。中でもネクタイは、毎回驚かれるほどだ。

スーツやシャツは、1日の間に着替えることはないが、ネクタイは会う対象者や出席する場、話す内容によりどんどん付け替えて、メッセージ伝達とリンクさせ、コミュニケーション・ツールとして知的に使うことができる。

欧米のエグゼクティブたちは、1日に何度ネクタイを取り替えるかしれない。それほどフルに活用しているのだ。

日本のネクタイ業界に今度望まれることの一つは「ネクタイをしていればとりあえず大丈夫」という、意味考えずにそれに従っていた時代の終わりを踏まえ、ネクタイを着用すると自らにどのような効果をもたらせてくれるかという具体的なメリットや、その理由、その選び方を消費者にしっかり認識させ、意味を持って選ばせる流れと動きを作っていくことなのではないだろうか?

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