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大規模化に向き合うグロービスの開発組織マネジメント

こちらは2020年のグロービスアドベントカレンダー25日目の記事です。
グロービスにて開発統括をしています @sue738 です。昨年もアドベントカレンダーで振り返り記事を書きましたが、今年も1年の締め括りとして開発組織全般を振り返る記事としたいと思います。

4年で開発組織も74名に成長!

現在のグロービスの開発組織は74名の組織になってきました。

入社当初、エンジニア1人だった時の状態からこれだけ大きい組織にできるとは思っていなかったので、関わっていただいたみなさんに本当に感謝です。代表から「だぶつくまで採用!」との掛け声をかけてもらったこともあり多くの素晴らしいメンバーに集まっていただけました。

現在の組織構成
・プロダクト開発チーム:54名
 ・プロダクトオーナー:9名
 ・デザイナー:9名
 ・バックエンドエンジニア:24名
 ・フロントエンドエンジニア:8名
 ・アプリエンジニア:3名
 ・専任スクラムマスター:1名
・基盤チーム:17名
 ・SREチーム:5名
 ・QAチーム:7名
 ・データサイエンスチーム:5名

スクラム開発に関してはグロービスは力を入れて推進しており、プロダクトオーナー、スクラムマスターのみなさんにはほとんどの方にPO研修/SM研修に参加して資格を取得していただいています。POだけではなく経営層の理解浸透を深めるためにも経営メンバーにもPO研修に行ってもらい、プロダクト開発組織の理解浸透を進めてきました。

人数比に対してPOの数が多いようにも思えるかもしれませんが、私たちはScrum@scaleを採用しており、スクラムチームの人数は大体4-5名程度、プロダクトに1名のPOではなくチームに1名のPO体制を組んでいます。

逆にデザイナーの比率、QAチームの人数が少ないのが課題です。この領域の採用に対しては積極的に強化を進めていきたいと思います。

開発しているプロダクト
・GLOBIS 学び放題
・GLOBIS Unlimited
・研修向けシステム
・新規事業プロダクト
・基盤システム

開発しているプロダクト群も増えてきました。新規事業プロダクトやGLOBIS Unlimitedという海外向けのプロダクト開発が今年は大きなチャレンジでした。グローバルへの挑戦も進んできており、私たちのミッションである"デジタルテクノロジーを活用し、世界中のビジネスパーソンが成長するための新しい価値を創り出す"に向けて今年でだいぶ仕込むことができたと思っています。来年に向けてより一層加速をしていきたいと思います!

事業開発に関してはGLOBIS 学び放題事業リーダーのこちらの記事もぜひ見てみてください。

大規模スクラム Scrum@scale

今のグロービスの開発体制における大きなチャレンジは大規模スクラムのフレームワークであるScrum@scaleです。

グロービスではスクラム開発を中心に進める中で、横の連携や大規模化に向けて一定の方針が必要でした。世の中にはいくつかの大規模スクラムのフレームワークがありますが、私たちはScrum@scaleを採用し、推進しています。

Scrum@scaleはスクラムを開発したジェフ・サザーランドが提唱したものですが、フラクタルのような組織体制を持つ、より自由度の高い大規模スクラムのフレームワークの一つです。

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https://scrumatscale.scruminc.com/scrum-at-scale-guide/

通常スクラムチームの適性人数は3-9名ですが、Scrum@scaleでは4-5名が最適と言っています。4-5人を超えたらチームを分割しろ、チームの依存関係はスクラムマスターの連携MTGであるスクラムオブスクラムで自律的に管理しろ、と組織構造をより現場で柔軟に意思決定できるように規定されています。

課題としてはPOやチームが多くなるのでチーム間連携部分には細心の注意が必要です。Scrum@scaleは導入を開始して1年が経とうとしているところですが、自由度が高い分、難易度も高いのが見えてきているところです。

マトリクス型の組織体制

組織規模拡大に伴い、チーム数も増えるとマネジメント体制も難しくなってきます。育成・評価ができるようなテックリードクラス、エンジニアリングマネジャークラスの人材を各チームに配置することはできません。また、フロントエンド、バックエンド、デザイナーといった各領域においてメンバーがしっかり成長していけるために専門性の高い方にリードを担っていただきたいと思っています。

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縦軸が事業軸・横軸が職能での横断軸

職能リーダーのみなさんには以下のことをお願いしてマネジメントを進めてもらうようにしています。各職能リーダーの皆さんには具体的なプロジェクトのリードを期待をしてはいません。グロービスでは1on1をしっかり推進しています。プロジェクトのリードはメンバーが実施していくものですし、課題はスクラムの振り返りにて解決すべきものです。職能リーダーの皆さんには以下の領域でのマネジメントを進めることで、個々のメンバーがしっかりと能力強化をしていただけるようお願いをしています。

・担当職能を引き上げるリード
・メンバーのWillとCan、事業のMustを考えた最適配置
・評価の並列化

Scrum Inc. の和田さんが書かれたこちらの記事は組織構築において非常に参考になりました。

Notionによる更なる情報の透明性の向上

今年大きく変わったと思うのがNotionの導入です。Notion LOVEです。仕事を開始するとまずNotionを開いています。

4年前、グロービスに入ってすぐに導入したのがQiita:teamでした。ドキュメンテーションの文化はエンジニア組織を作る上ではとても重要なことだと考えています。従来型の組織だと情報はトップから降りてくるものだと思いますが、クリエイティブな組織では情報発信を民主化していくのはとても重要なことです。

一方でQiita:teamの課題も見えてきたんですよね。マークダウンなので非エンジニアがあまり書かない。どこにドキュメントがあるかがわからない。メンテナンスされない。同時編集できない。数年経った中での課題感は強まるばかりでした。

Notion上では、経営のバックログにて経営課題を可視化し、PLの状況なども毎月アップデートがされています。会議の議事録は一元化されており、誰でも自由に情報を取りに行くことができます。

Qiita:teamの時には記事を書いていたのは約60%のメンバーでした。それが現在Notionに移行して100%の方がNotionにドキュメントを書いて利用をしてくれています(社内アンケートの結果)。

組織規模拡大をしていく中で、情報を誰でもが取りに行けて自ら意思決定をしていける土壌はとても重要だと思います。

Notionを使ったレトロスペクティブの事例もアドベントカレンダーで書いてくれているのでよければご覧ください。

メトリクスを計測し、改善が進む体制へ

Scrum@scaleにおいて推進する中で、メトリクスの計測も取り組んできました。開発においては主に以下の観点でのメトリクスを取りながら推進を進めています。チームが多岐に渡ってくるとチームの状況を個別で把握するのは難しくなってきます。全体としてメトリクスを計測し、組織が健全に価値をデリバリすることができているかを確認することは規模拡大においては非常に重要なことだと思います。

・d/d/d(デプロイ頻度)
・平均CI時間
・レスポンスタイム
・稼働率

メトリクス計測で大事にしていることとして自動で取れるものかつ恣意性が入らないものと考えています。スクラムにおけるベロシティを計測する案もありましたが、恣意性が入ること、自動での計測が難しいことからメトリクスとして全体計測はしていません(振り返りに使っているチームもあります)

この中で特に重要だと思っていることがデプロイの頻度です。変化の激しい中に置いてどれだけ高速に価値をデリバリできるかは組織の競争力につながります。

プロダクト開発の初期においては毎日でもデプロイしていたものが、ステークホルダーが増え、影響範囲が増えていくとデプロイの頻度はどうしても下がってきます。そこでも意志を持って、デプロイ頻度に対して向き合い、高頻度デプロイを実現していくことは拡大において非常に重要な取り組みだと考えています。

デプロイ頻度に関してはメトリクスを計測をし、ビジネスサイドへの理解浸透も進めてくれて以下のような結果も出すことができました。

徹底した自由と自己責任・性善説を元にした文化

私たちの部門は完全フレックスで、1日の最低就業時間も設定していません。フレックスのコアタイムもありません。フルリモートでの勤務も可能です。

テック企業だとそれだと午後出社をする人が増えてしまいミーティングが設定しにくい、といった問題を聞くことも多いですが、多くの方がしっかりと自己管理をしてくれています。

このような柔軟な制度になったのも現場メンバーからの声で、「深夜メンテナンスが辛い」との話からでした。深夜メンテナンスが極力発生しないように開発も進めていきたいところですが、どうしてもデータベースの刷新などインフラに関わる部分においては深夜作業が発生します。

グロービスにおける価値観として「1に自分、2に家族、3に仕事」という明確な優先順位もあります。そういった中で、各メンバーが自己管理できるのであればコアタイムも、最低就業時間もなくして問題がないのではないか、との議論から柔軟な制度として刷新をしてきています。

4年前に入社した時からフレックスでコアタイムは1時間、と当時にしてはかなり自由でした。それが時代が進むにつれてボトムアップにてかなり自由な組織風土になってきていると思います。大事な価値観を前提に、ボトムアップからもしっかりとルールは時代に合わせて変えていきたいと思います。

メンバーも面白い記事を書いてくれています(笑)

テクノロジー人材向けの評価制度のアップデート

評価制度もとても重要だと捉えており、継続的に変更をしてきました。まずテック系人材のために切り出したテクノロジー職制度というものを用意しています。

今年大きく変更をしたのは、評価サイクルの短縮化です。グロービスではこれまで1年に1度の報酬改定でしたが、テクノロジー職から半年に1度に変更するというトライアルを行いました。

技術の進化は本当に早いです。そしてそれをキャッチアップする能力の高い人の成長スピードもすごいです。従来の1年に1度だとどうしても若手で急成長する人に報いることができません。

グロービスでは年功給与ではなく、成果主義、能力主義に基づいた報酬体系にしたいと思っています。自由と自己責任をより強化するためにもメリハリのついた報酬制度にしていくことが重要だと思っています。

こういった報酬制度も今年の位置付けはトライアルというのも興味深いです。ルールはどんどんPDCAを回しながら、より良い組織文化を作っていきたいと思います。

グロービスでは社会人育成を刷新するエンジニア・デザイナーのみなさんを募集しています

グロービスは国内でも圧倒的No.1の入学者数を誇る経営大学院を展開しています。これだけ大規模な開発体制を組むことがができているのも、グロービスが社会人教育領域で圧倒的なブランド力、コンテンツ力を抱え、教育領域のDXを推進すべく動いているからだと思っています。

まだまだ改善をしなければいけないことは多数あります。理想の組織状態に向けてやっていきたいことも多数あります。

規模拡大を目指して一緒にプロダクト開発、組織開発を推進いただけるメンバーを募集しています。ぜひ世界に戦えるテック企業を一緒に作っていきましょう!


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