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もしかしたら思い出になりえた場所

7/19
浅草で用事を済ませ、ぷらぷらしてるとバッティングセンター辿り着く。
直近で高速バスに乗ったり、ボーリングに行ったように、数年に一回のイベントを30代入ってから積極的にひとりでも開催している。人生の免許更新である。
1回20球×4回数券で1000円。ゆかりはなく相場は分からないけど、安い気がした。
そもそも野球をすること自体に縁がない人生だった。(例えじゃなくて本当の意味で)バッターボックスに立とうとしなかった。利き手にも難ありで、未だにどっち打ちかも分からない。知っている野球知識はほぼゲームのパワプロくんから仕入れたもので、今日打った感じ、今のおれのステータスは弾道1パワーGだった。いい運動にはなって、やる気は上がった。


7/20
ドラックストアのレジ前でポッキーに半額シールが貼っていたので、思わずカートに入れる。レジに通され90円と表示される。
「90円・・・?」
確かに安く買えた感はあるけど、ドラックストアでの標準価格が180円であることにおののく。ひと昔前の金銭感覚による大誤算であった。でもおいしく食べた。
マンションの掲示板に地域ラジオ体操の告知されているのを見て、パートナーと明日なんとか起きて行ってみようと宣誓する。


7/21
もそもそと芋虫のように這出て、ラジオ体操に行く。うすうす知っていたけど、朝運動をすると気持ちよく目覚められた。きっかけは大事だ。
昼、髪の毛が伸びてきてるなあと思っていたところに、歩いて行ける距離に1000円カット店があると知り、向かう。近くをよく通っているのにお店の存在に気づかなかったくらいに町にとけこんでいた。やわらかいおじいさんが切ってくれて、ととのった。時間が堆積していった空間には、落ち着きがある。
昼時になったので、近くでごはんを食べる。本棚に置かれていた『すきまから見る/林千恵子』が目に留まり、手に取ってぱらぱらとめくるように眺める。これは今のコンディションに合っている、とこころが反応した。コーヒーを追加で頼んで、しばらく読むことにした。教育支援センターではたらく林さんと子どものやりとりを中心に書かれているが、今の世の中のコミュニケーションでも通じることがあり、ぐっとくる。

大人だから、先生だから、親だから、役に立つことやアドバイスをしなくてはいけないという思い込みも脇に置いておきます。自分の「ワク」に相手を当てはめようとすると素直に聴けず、「いや、そうはいうけれど」と返すことが多くなります。それに気づくと、子どもたちは一気に心を閉ざします。


7/22
地元鹿児島に帰省する。東京からは飛行機で2時間弱でいける。(ただし鹿児島空港から市街地まで1時間弱かかるのでトータルはまあまあかかる)。飛行機の中で、漢字ドリルをしている小学生を見て、夏休みだった。
昼は、繁華街に出来た「天文館図書館」で本を読んだりしてくつろぐ。昨年できた民営の図書館で、手に取りやすい新しめの選書が親しみやすい。カフェもある。地元の中心地にこんないい空間があってうらやましい。
しばらく読んで涼んだら、鹿児島のカメラのキタムラで受取りにいく。朝にパソコンからフォトブックを発注したものを即日受取ができてありがたい。
中心部から少し離れた店舗まで歩いていく。地元でありながら、みしらぬ景色に不思議な気持ちになる。
しばらく歩いていると学校が見える。よく見ると受験に失敗した高校だった。たしかパワプロをやっていた時に、不合格の電話をもらった記憶がある(当時はネット発表がなくて中学校の先生が、高校に合否を見に行く風習だった)。
もしかしたら思い出になりえた場所。でも落ちてたからこそ今の人生があり、そこに訪れることになったこと。これまでのもろもろ苦労が先に沸き立ってきたが、後を追うように大学や社会人になってからのゆかいな記憶も盛り返してくる。すべてひっくるめて、おれらしいなと受け止めた。
夜は「郡元温泉」に行く。火山大国の鹿児島はいたるところに源泉にあって、銭湯の多くは温泉である。デフォルトの力が強い。深い水風呂に、高い位置のライオンの口から水が注がれる。谷底に突き落とされた子ライオンように重力を授かった、でもまろやかで心地よい水を浴びてリカバリーした。


7/23
天文館に行くと、鹿児島伝統の夏祭り「おぎおんさあ」でにぎわっていた。大通りが歩行者天国になり、神輿が通る。暑すぎる!と贅沢な文句を言ってしまいそうなくらい晴れに晴れていた。でもカラっとしているし、白い塊のような質感の雲が、東京と違う青空をしていた気がする。暑いけど、祭りの人はこれ込みで楽しみにしてたんだろうなあといわんばかりのパワーを感じる。めでたい。
夜東京に戻って、近所銭湯でリカバリーして、大仕事を終えてほっとするように、ばたっと眠りにつく。

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