広告主に伝えたい。「ウザがられない」広告とは

こんにちは。GMOアドマーケティングでコンテンツプランナー(コンテンツを活用したマーケティング戦略や広告の支援)をしている、萬里小路です。

前職では小売・流通のマーケティング担当をしておりまして、広告は「出す側」でした。

その経験から私のpartでは、広告主の方に向けて「広告がおもしろくなる」とは何か?を記事を書いていこうと思います。

※このnoteは、「インターネット広告はあやしい・不快・うざい」という問題点に立ち向かうべく、インターネット広告業界の裏側や新しい試みをご紹介するnoteです。理念はこちらどうぞ。


今の広告を「恋愛」に例えてみると……

「あなたのことが好きです。好きです!好きです!!」

もし、あなたが知らない人や興味のない人から、いきなりこんな風に言われたらどう感じますか? 恋人や好きな人から言われたら嬉しい言葉でも、知らない人や興味のない人からの「好きです」3連発は正直キツいですよね……(笑)

インターネット広告は現状、生活者にそのように感じられているのではないでしょうか? つまり、「うざい」「しつこい」という感情を、インターネット広告は生活者に持たれてしまっているのです。

マーケティング → 「あなたのことが好きです」
広告      → 「あなたのことが好きです。好きです。好きです」
広報      → 「あなたのことを彼が好きと言っています。」
ブランディング → 「わたしもあなたのことが好きです。」

現状の広告を私なりに“恋愛”で例えてみると、まさにこのような感じです(※ 比較ができるよう、マーケティング・広報・ブランディングの定義もしました)。

私はこのイメージを変えたいと思って、日々プランニングをしています。

「ちょっとお茶しませんか?」

このくらいのゆるい感じにしたい。どうしてこんなにゆるいほうが良いのでしょうか? 今のインターネット広告の何が問題なのでしょうか?

広告が本来持つべき役割から、もう一度考えてみたいと思います。


”ストーカー規制法”がない広告

「あなたのことが好きです。好きです!好きです!!」

もし相手の気持ちも考えずに、一方的に自分の気持ちを押し付け過ぎると、ときにはストーカー行為となってしまいますよね。広告も同じです。

特にインターネット広告はインターネットそのものの発展やテクノロジーの進化により、企業と生活者の両者共にできることが拡大しました。

生活者はインターネットを利用して、ありとあらゆる情報を自由に閲覧し、また発信できるようになりました。

一方、企業側は生活者のインターネット上の行動やデータを取得できるようになり、そのデータを使って、広告配信を行えるようになりました。リスティング広告は生活者が検索エンジンに入力したキーワードを基に、リターゲティング広告は生活者が訪問したサイトの履歴を基に、広告配信をしています。

企業側も生活者側もテクノロジーやインターネットの進化によって、できることの幅や選択が増え、一見すると「自由化」が進んで良いことのように思われますが、果たして本当にこのままで良いものでしょうか? できることが増えたからこそ、今のウザい広告に繋がっているとも言えるのではないでしょうか。

少なくとも、表現の自由・知る権利がありますので、生活者側を規制し制限することは正しい選択とは言えません。

そうなると、企業側に一定のモラルが必要だということになりますが、そのモラルを誰もが理解できる言語で定義すること、もしくは場合により規制や制限をすることが難しいのが実態です。

つまり、広告にはストーカー規制法がないのです。決して規制が必要だという話ではないですが、生活者を不快な感情にしてしまうということは避けなければなりません。


多様化するユーザー vs テクノロジーによる個人化

よく「ユーザーの価値観や行動は多様化している」と言われていますが、この表現は前提が抜けています。正確に定義をすると、「インターネットの進化により、ユーザーの価値観や行動は多様化している」が正しいと思っています。

つまり、企業が一方的に情報を伝達していたマス広告(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)時代から、マス広告+インターネット広告の時代になり、さらにスマートフォンというデバイスの普及により、いつどこでもインターネットに生活者が自由にアクセスし、情報を取得できる時代になったのです。

インターネット上の情報量の増加や表現の自由化により、生活者が様々な選択ができるようになった結果、価値観の多様化になったのです。そうなると、その多様化に企業側は応えていかねばならないという時代とも言えます。

この多様化への対応は、ここ数年では「パーソナライズ」(個人化)という言葉をよく使いますね。このパーソナライズが今や当たり前になり、テクノロジーの進化によって、その対応を可能にし始めています。

しかし、この多様化に対する生活者のニーズとテクノロジーによるパーソナライズ化には、まだまだ差があります。そのギャップを企業側のモラルで埋めるのか、規制で制限するのか、テクノロジーが1日でも早く多様化に追いつくのか……インターネット広告はそれらをきちんと考えていかねばなりません。

そして、これらは広告に関わる方全員に言えます。広告を依頼する広告主も、その依頼を受ける広告代理店も、広告を配信するメディアも、広告の仕組みやプラットフォームをつくる広告会社もです。

この多様化と個人化の戦いは、3つの項目で整理をしていくことが必要です。

・ターゲット   → どの生活者に広告を届けるか
・クリエイティブ → 生活者にとって有益な情報やビジュアルであるか
・フォーマット  → 広告を届ける場所とタイミングは最適であるか

例えば、美容コスメの情報を知りたいと思っている女性に、興味のない車の情報はターゲットとして誤っています。その美容コスメの情報は、事実やデータに基づいていない嘘や誇大な表現はクリエイティブとしてNGです。そして、美容メディアで情報収集している時に邪魔をするようなフォーマット、または商品を比較している時に「買いましょう!」としつこく誘うようなフォーマットは嫌われてしまいますよね。


広告をポジティブなものに変える「RとLの法則」

ではどうしたら、知りたいと思っている生活者に、有益なクリエイティブを、最適なフォーマットで広告を届けることができるでしょうか?

私が定義した「RとLの法則」を紹介します。

Relationship → 関係をつくる
Laugh       → 楽しんでもらう
Remember    → 覚えてもらう
Like     → 好きになってもらう
Reviews      → 自然に評価してもらう
Lead       → 離れられない状態にする 

RとLで始まる英単語が各3つずつあります。

よくマーケティングでは、消費者が商品を購入するときのプロセスにAIDMAやAISASを使いますが、この「RとLの法則」は、より広告が果たすべき役割として定義しました。

私が冒頭に、広告のイメージを「ちょっとお茶しませんか?」に変えていきたいと述べました。それを実現するプロセスと言い換えられます。

「RとLの法則」をまたまた恋愛に例えてみましょう(男性から女性へのアプローチ)。

あなたは気になる女性(ターゲット)に「ちょっとお茶しようよ」という関係をつくることから始め、自身が何者かを表現し共通の趣味や価値観を見つけながら(クリエイティブ)、その場を楽しませ女性を笑顔にしてあげます(フォーマット)。
女性は「この人といると楽しい」とあなたのことを覚えてくれ、さらに関係が続けば好きになります。そして、女性は友人や同僚にあなたのことを自然の会話の中で話したり相談したりします。その状態になれば、お互い離れられない存在になっています。

AIDMAやAISASは、どちらもはじめはAttention(認知してもらう・注目してもらう)からスタートします。しかし、いきなり認知と注目をしてもらえるでしょうか? いきなり「好きです!」と言われてもピンと来ないし、ましてや興味がなければうざいだけですよね。

そのため、広告は生活者との関係をつくる「Relationship」がはじめに必要です。関係をつくるというアクションをとらない限り、いつまで経っても広告は今のままのイメージです。

だからこそ、「ちょっとお茶しようよ」というゆるい関係からスタートすることが大事なのです。それもいきなり「二人きりで会おうよ」的な誘いではなくて、共通のコミュニティやイベントみたいな場に誘うのが良いのです。そして、その場で楽しんでもらうことが大事です。そのプロセスを経て初めて、Attentionになるのではないでしょうか?

「RとLの法則」から見えることは、本来広告の役割は「人の心を動かす」ということです。それも、うざい・邪魔という感情ではなく、ポジティブで楽しい感情です。

そう考えると、「あなたのことが好きです。好きです。好きです」というコミュニケーションは少し違和感に感じてきませんか?


行動データだけでは見えない「裏の心理」とは

テクノロジーの進化で、コミュニケーションをとりたいターゲットにアプローチする方法や精度は日々高まっています。しかし、その技術だけに頼るのではなく、一方で企業側は常に生活者を直接見ることが必要です(ストーカー的に行動観察をするという意味ではないですよ)。

なぜ生活者を直接見ることが必要なのか? それは人の心理は表に出ている部分だけではないからです。つまり、裏の心理を見つけることが大事です。

インターネット上の行動データだけでは、この女性は「美容コスメに興味があって、このブランドの商品をよくみている」程度しかわからないのです。
その行動データのみに頼って広告をつくろうと思うと、美容コスメの情報かブランド情報しか作れないはずです。

なぜ女性はそのそのブランドの美容コスメ情報を見ているのか?という心理を考えてみましょう。もしかしたら、

・自身のためではなく大事な友人へのプレゼントしたい
・来週、彼氏との大事な記念日デートだからキレイになりたい
・そのブランドを持っていることをステータスと感じたい

かもしれないですよね。

3つとも同じ情報を見ていても、心理は全く異なるのです。そして、これらの心理はインターネットの行動データだけでは到底見つからない心理です。
そのため、常に生活者のリアルの行動を見ること、さらに普段から自身の行動を俯瞰的に見ることが大切です。自身であれば、よりその行動や裏の心理がわかりますよね。

もう一つ、「なぜそのブランドを買ったのですか?」とインタビューすると、「そのブランドが好きだから」とほとんどの人が答えると思いますが、これは“表”の心理です。

しかし、裏の心理は「なくては困るもの」で、そのブランドを購入しないことによる自身へのリスクや後悔があるのです。これはRとLの法則の“Lead”の企業側が生活者を離れられない状態にリードすることなのです。

そのため、広告の役割の始めは関係をつくることですが、終わりはブランドを好きになってもらうこと(Love)でなく、離れられない状態=そのブランドを使わないことによるリスクと後悔を与えること(Lead)なのです。


何ではなく、なぜを語ろう

私の広告主の経験と現在の広告会社での仕事の両方の視点から、インターネット広告の今を整理し、広告の定義や役割を考えてみました。

企業側の一方的な押しつけ広告、事実やデータに基づかない広告、生活者の情報収集を邪魔する広告など、これらの生活者にとって不快になる広告がなくなり、生活者一人ひとりに最適な広告が届けられることを願います。

私も広告に関わる人間として、プランナーとしてこれからもよりよい広告体験を企画し提供していきたいと思います。

最後に、私の好きな動画を紹介します。この動画はリーダーに対して物事の考え方や伝え方を説いておりますが、これは広告にも同じことが言えると思っています。一言で表すと、「何をではなく、なぜを語ろう」ということです。人の心を動かす本質がこの記事と動画から少しでも伝わると嬉しいです。

TED.com
サイモン・シネック氏 「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」



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