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1974年製 Fender Jazzmasterについて ①

CBS期、特に1970年代に入ってからのJazzmasterの情報をあまりみないように思うので、僕の1974年製のJazzmasterについて、自分への備忘録の意味もこめて、ここに書いておきます。いつかどなたかの参考になれば。

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製造年について

製造年は、シリアルナンバー、ポットデイト、ピックアップデイト、ネックデイト、その他もろもろの仕様から、総合的に判断されるものなんだろうと思います。このジャズマスターが1974年製であるゆえんを、あえて、最短距離で直線的に特定するとすると、

要因(1)
ネックにバインディング、指板にブロックポジション、いわゆる、バインディングブロックであることから、1966年中頃以降に製造されたことがわかる。

要因(2)
べっ甲色のピックガードが装着されていることから「1974年後半よりも前」に製造されたと思われる。(1974年後半以降は、ピックガードは黒色に変更されるため)

要因(3)
スタンプされたピックアップデイトによって、ピックアップは1974年製と特定できる。

要因(4)
ポットデイトや、その他のパーツの仕様に、1974年以降の特徴がない。

といった流れかなと思います。1974年の初期〜中期に製造されたジャズマスターと言っていいのだと思う。

シリアル番号

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この74年製のジャズマスターのネックプレートに刻まれたシリアルナンバーは、600000番台です。現在Fenderのオフィシャルサイトで公表されているシリアルナンバーと製造年の対応表 から判断すると「1976年製」となります。仮にこのジャズマスターが、もし76年製だとすると、

ピックガードはべっ甲色(黒色ではない) / ボディ材はアルダー(アッシュではない) / シリアルナンバーはネックプレートに刻印(ヘッドではない) / ペグはFender製のFキー(シャーラー製のFキーではない)

などの要素が、76年近辺の仕様とは離れすぎると思います。そこで、どのポイントを再考してみようかとなった時に、やはり、よく言われる通り、CBS期のFenderのナンバリングはとてもいいかげんであてにならないという点は無視できないんだと思います。

Fシリーズとシリアルについての説明が、A. R. Duchossoir氏の書いた「The Fender Telecaster: The Detailed Story of America's Senior Solid Body ...」というテレキャスターに関する本の中にありました。(以下ざっくり翻訳)

Fシリーズ(1965〜1976)
1965年の春頃に登場したL + 90000台シリアルは、その後、同年の中頃に、CBS/FENDERによって「L」のない6桁(100000台)シリアルに変わっていきました。その際に新装されたネックプレートには、6桁のシリアル番号と大きな「F」ロゴが刻印されました。そのことから、この年代の製品はFシリーズと呼ばれています。

1965年の中頃から登場したFシリーズは、シリーズの終わりまでの期間、重複して番号が振られてしまっています。60年代の中頃から劇的にギターの製造本数が増加したことで、Fシリーズのシリアル番号は、11年間で100000番台から700000番台まで急速に増えました。根拠のないシリアルがあらゆる種類のギターにナンバリングされ続けたため、およそ2年から4年のスパンでしか年代を特定できません。

- 中略 -

1973年以降(400000番台〜700000番台)に製造されたギターは、デイティングに関していっそう問題があります。実際の出荷日に関するおおまかな指標としてCBS/FENDERが公表したリストは以下の通りです。

シリアル「400000番台」 - 1973年4月〜1976年9月
シリアル「500000番台」 - 1973年9月〜1976年9月
シリアル「600000番台」 - 1974年8月〜1976年8月
シリアル「700000番台」 - 1976年9月〜1976年12月

今現在Fenderが公表しているシリアルナンバーと製造年の対応表 よりも具体的な(といっても、特定できる幅はいっそう広がりますが)データをCBS/FENDERは公表したことがあるということをこの記事で知りました。出荷日とナンバリング日に大きなギャップはないと仮定するならば、このデータは、600000番台のジャズマスターが、1974年製としてもありえる根拠を示していると思います。

ピックアップ

ピックアップはもちろんグレイボビンです。

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ピックアップデイトは6桁の数字「183274」がスタンプされています。1974年の32週目(8/11〜8/17日の間)に18という識別番号の職人によってワインディングされたピックアップということを表しています。

ポット

ポットはVolume、ToneともにStackpole製が付いていました。

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Volume: 1966年製- 3月第1週(シリアル : 304-6610 / Linear Curve Bカーブ)

古めのポットが使われているのは、リニアカーブで1メグのポットの在庫がなかなかさばけてなくてストックしてる古いポットから使った、くらいのことなんじゃなかろうかと想像してる。もしかすると、Fenderにリペアに出したらこのポットが付いて戻ってきたとかそんな感じなのかもしれないな、わからん。

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Tone: 1973年製- 12月第1週(シリアル : 304-7349 / Audio Taper Aカーブ)
Dilectronの丸いセラミックコンデンサー(0.03μF)が付いていました。

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ネック

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ネックはBound + Block、バインディング有りでポジションマークはブロック。ヘッド以外は、ツヤのあるポリ塗装がされています。

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接合部には、Fenderのビルダーでネック職人のハービーガステラム(Herbie Gastellum)さんのスタンプ「HERB G」があった。ネック職人のハービーガステラムさんについて、Fenderのオフィシャルサイトに記事がでていました。→こちらをご参照ください。

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シムが1枚はいっていました
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また、ネックエンドにスタンプされているネックデイトは4桁の数字「0100」のみでした。1973年〜75年頃のストラトやテレキャスにも、このタイプのネックデイトはちょくちょくあるようで、別段おかしなことでもなさそうです。

ネックデイトに関して、1972年以降のFender製のギターには8桁の数字がスタンプされているとされており、例えば、下図のような8桁の場合、

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49 = Musicmaster、Mustang、または Bronco (Model code )
00 = ローズ指板 (Neck code)
21 = 21週目 (Week code)
5 = 1975年 (Year code)
3 = 水曜日 (Day of the week code)

となります。

しかし、僕のJazzmasterには、4桁の数字「0100」のみスタンプ。8桁のネックデイトの後半4桁(週・年・曜日)を省略した「Model code + Neck code」の形式として解釈したくなるのですが、ただその場合、「0100」の後半2桁「00」は「ローズ指板 : Neck code」でよいとしても、前半2桁「01」は「Precision Base : Model code」を意味することとなり、残念なことに筋が通りません。「0100」は、どうやら8桁のネックデイトの省略形ではなく、別のルールに基づいているようです。CBS期のFender製品のナンバリングを深く追求すること自体がナンセンスなような気もします。この数字にたいした情報は入っていないように思えます。

このあたりについて、Greg Gagliano氏が、1998年に出版された20th Century Guitar magazine内の記事で書いていることの中に、以下のような記述があります。(勝手にざっくり翻訳)

1967年から1980年に製造された150台のFender製ギターの半分以上は、スタンプされたネックデイトから有益な情報を読み取れなかった。多くの場合は、汚れやインクのにじみで判読できなかったり、押印が不完全であったりする。また、ネックエンドにスタンプ自体がないギターも多くある。Model codeを使わずに緑や赤のインクで「MUSTANG」などとモデル名をそのまま書いているギターもある。

上記のことは、1969年から1980年に製造されたFender製ギターを所有するオーナーに対して、2つのコトを示唆してる。まずひとつは、、この世代のギターで、ネックデイトとして完全なスタンプがあるモノに出会う確率はせいぜい50パーセントであるということ。もうひとつは、、ネックデイトはそれほど重要度の高いデータではないということ。ピックアップデイトやポットデイトからであれば、ややこしいルールなしに情報を読み取ることができるのだから、むしろ、それらを参照して年代を結論づけていく方が理にかなっている。

この記述に共感しておく以外やりようがないなと、そんな心持ちです。

ペグ

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ペグはFキーと呼ばれるF印のあるペグが付いています。ペグの仕様の変遷をおおまかにみると(Donald Brosnac著「Guitars Made by the Fender Company」参照)

1. 1958年〜1966年の黄金期は、Kluson製
2. 1966年後期〜1976年までは、Fender製(Fマーク)
3. 1976年中期〜1980年9月までは、Schaller製(Fマーク)

で、2のFender製のFキーの中でも、

・1stバージョン - Fender製 66年後期〜
・2ndバージョン - Fender製 71年〜

の2世代があるとされています。この74年製のジャズマスターには、Fender製Fキーの2ndバージョンがついています。1stバージョンと比べて、ノブの形状が角張っているのが特徴です。個人的に、このペグが、このギターの仕様の中で最も嫌いなポイントですね(苦笑)。ぎらぎらしててかくかくしてて、むだにアピールが強い。


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