見出し画像

台風15号 徘徊

今回のブログはタイトルの通り、台風15号の中、傘もささずに街を徘徊してきたというシンプルな話だ。

昔からずっと夢だった。
真夜中の暴風雨の中、傘もささずに街をうろついてみるのが。
今回、そのしょうもない夢が叶ったのでとても嬉しい。


さて鬱病不眠症を患うわたしは、午前3時頃あまりの轟音に叩き起こされた。
「そっか、台風か」と思い、外を見るとものすごい暴風雨だった。
「台風が来ます!」といっても、ここは東京。よくテレビのニュースで見るような宮崎や沖縄のような激しい雨が降ることはあまりない。
ぶっちゃけ、どしゃ降りくらいで済むことが多いような気がする。
でも今回は違った。ヤバいやつだった。

わたしの夢が叶いそうだ!
わたしは急いでどうでもいい下着とどうでもいい服を着て家を飛び出した。


河川などに近づくのはアホがやることなので(わたしも充分アホなのだが)近所をぐるりと一周することにした。

マンションを出ると、一気にブワッと風が吹いてきた。
楽しみが増す。

一歩二歩と足を進めただけでずぶ濡れになった。
風雨が全力でわたしに向かってくる。
痛いくらいの雨がわたしを叩きつけてきた。
というか本当に痛い。


とりあえず暴風雨に耐えながら、最寄駅まで行ってみた。
すると駅前の木が倒れて、車が通れなくなっていた。
いつもは深夜でも割と人がいる駅前なのに、わたししか人がいない。
まるで世界の住人がわたしだけなような、そんな心地がした。すごく気持ちが良かった。


ぐるりと遠回りをして家の前に戻ってきた。
鳴り止まない暴風と、叩きつける雨。
何分もそれに晒されているわたし。
バカバカしいなあと思い暴風雨に耐えていると、足に物がゴツンと当たった。
大きなゴミ箱だった。

その瞬間、笑けてきた。
きっと暴風雨の中、この街でひとりで雨に打たれてアハハと声を上げて笑っている女はわたししかいなかっただろう。


この数ヶ月たくさんのことがあった。
ブラック企業に入って、鬱病不眠症になって、過食嘔吐やパニックに苦しんできた。
過食嘔吐が特に酷くて、入社前より5キロ以上太った。
パニックは何かモノがなくなったりするたびに過呼吸になって、30分以上身体も思考も動かなくなる。
人生でいちばん死にたい数ヶ月だったと思う。
何度もリストカットをした。
気持ち悪いと言われて、5月頃当時の彼氏にも振られた。


辞めた職場のことを思い出した。
ああ、鬱病って書いてある診断書を出してるのに「何でそんなにネガティヴなの?」って言われ続けたな。
ああ、わたしが今の彼氏に、付き合う前お土産として買ってもらった大切なクスコのマグカップ、先輩に割られたな。
ああ、わたしが準備してた資料、先輩に渡したら何故か怒られたな。
ああ、先輩に基礎が全然なってないですって笑顔で言われたな。
ああ、何故か昼休みを削って仕事をしてたな。
ああ、過呼吸で苦しんでたら可哀想な目ではなく仕事をしろよという目で見られたな。


そんなバカバカしい思い出がパッとフラッシュバックしてきたが、豪雨がわたしの心から洗い流してくれた。
すごくスカッとした気持ちになって、さらに笑けてきた。
さっきぶつかってきたゴミ箱を、道路へぶん投げてやった。コロコロと回転しながらどこかへ消えていった。

でも自然の驚異の中では、わたしの病気・悩みやクソみたいな思い出などちっぽけなことなのだ。
木をなぎ倒すほどの風と雨。だんだんと川のように水かさが増してくる家の前の道路。

立ってるのも精一杯の風が打ち付ける。
痛いほどの雨が打ち付ける。
それでもわたしは気持ちよかった。
こんな清々しい気持ちになったのは、いつぶりだろう。
本当に清々しくて、空を見上げてずっと笑っていた。


朝起きると、台風一過というやつか青空が広がっていた。
ベランダを見ると、ベランダ用のサンダルがなくなっていた。どうやら飛んでいってしまったみたいだ。
コンビニに行くため街を歩くと、たくさんの人がいた。
いつも通りの変わらない街が、戻っていた。


みんなに迷惑かけまくりの台風15号。
だけど、わたしには爽快感をくれたね。
ありがとう。
でも、もう悪さしちゃダメだよ。

#ブログ #note #台風 #台風15号 #暴風雨 #轟音 #雨風 #叩きつける雨 #ずぶ濡れ #ゴミ箱 #自然の脅威 #鬱病 #不眠症 #過食嘔吐 #パニック #ブラック企業 #台風一過 #ありがとう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?