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第8回 暮らしを愉快に、人生を豊かにするケアを広げたい!

<ケアクリ会議 VOl.4 ゲストトーク・ダイジェスト>
清水愛子さん
一般社団法人グッドネイバーズカンパニー 代表

「ケアの現場をもっとクリエイティブにしたい!」というパッションで、2014 年から年に1 度、開催されてきたシンポジウム「ケアクリ会議」。会の最後に、主催者であるGNC代表の清水愛子さんが登壇し、GNCの活動の趣意を紹介しました。

*以下は取材参加した記者の要約です。実際の講話内容と一致してはおりません。

楽しく嚥下力アップ、誤嚥性肺炎予防の「くちビルディング選手権」

GNCが提唱している“プレイフルケア”とは、生活者が主体となり、能動的に参加する健康づくり活動で、健康増進はテーマの一端ではありますが、むしろ暮らしの中の楽しみになり、地域社会の人のつながりづくりやまちづくりにもなる、人生丸ごと豊かに、健やかにする、そんな活動をイメージしています。

私が広告代理店勤務の折、人々の暮らし全般に関わるフィールドリサーチに携わる中で、高齢者の食生活を垣間見て、食べる力を維持することの大切さ、そのむずかしさを知る機会がありました。家庭の食生活は多様で、食べることにおいて大切にされていることも人それぞれでしたが、「食べるための筋肉には無頓着」という共通点が見えました。そこで、食べる筋肉アップをテーマとして、イメージしていた“プレイフルケア”を実現しようと取り組んだのが「くちビルディング選手権」です。ボディビルにインスパイアされ、食べる力を楽しく鍛え、くちビルダーを育てる運動会イベントは、老若男女楽しめるものにすべく、改良を重ねてきました。

ケアをクリエイティブで醸成し、社会化するためのケアクリ会議

もう一つ、かつてのフィールドリサーチで知り得たことは、地域には保健・福祉・文化活動等に発展する可能性がある、原石のような活動がたくさんあるものの、ほとんど自覚も、発見もされていない場合が多数あるということでした。誰かが気づいても、誰につなげば社会化されるのか、曖昧だとも感じました。そのような原石的活動を熟成し、関わる人たちのモチベーションを上げ、社会に開くには、クリエイティブの力が必要です。そのため2014年から「ケアクリ会議」を開催しています。

地域の医療・保健・福祉の現場で課題意識を持って活動しているケア系人材と、さまざまな分野・視点からケアの課題解決に興味を持つデザイナー、クリエイター、研究者、社会起業家といったクリエイティブ人材が出会い、議論を交わしてきました。私自身が、ケアとクリエイティブの中間領域で活躍する人材になることをめざしながら、抱える悩みを原動力に変えるために、なくてはならない場となっています。

4度の開催で「ケア×クリエイティブ」の可能性を共有する人がたくさんいることを実感し、登壇者や参加者からヒントを授かり、大きな力をもらっています。

皆の人生を豊かにする「プレイフルケア」普及

“プレイフルケア”と言っても、まだ「エビデンスは?」「資金は?」と冷ややかな反応が返ってくることも少なくないですが、GNCは「くちビルディング選手権」と「ケアクリ会議」を重ねながら、「ヘルスケアからプレイフルケアへ!」の確信をより深めてきました。

人は健康を目的に生きているわけではなく、楽しさやワクワク感を味わうためにさまざまな活動に取り組みます。ソーシャルケア、地域づくりの目的を人の心にフィットするところにもっていくことで、ケアに携わる人とケアを受ける人、双方の人生が、社会が、豊かになります。

本日のケアクリ会議や、4月22日に開催する「いいご近所づくり大会議2018 “食べる”と“笑う”を支える摂食嚥下の専門家に学ぶ1日」で得る学びを糧に、プレイフルケアの普及という次のフェーズへ駒を進んでいきたいです。

「くちビルディング選手権」を知ったのは、数年前のこと。医療の中で「食べること」はどのように扱われているのか、栄養の管理ではない食のケアはあるのか興味をもち、取材を始め、摂食嚥下障害などの知識を得てしばらくした頃でした。当時はまだ「くちビルディング選手権」ではなく、その前身イベントで、名前も違っていたと記憶しています。それまで取材した食支援のどの取り組みともムードが違うケアの在り方だと思い、食支援を取材する楽しみが増したと思いました。

そして、食支援について書きながら、個人的に地域活動をする中、一般の元気な人に食支援の大切さを伝えるむずかしさを感じるたび、プレイフルな「くちビルディング選手権」を思い出し、自分の地域でも開催したいと思慕してきたのです。

「くちビルディング選手権」は、私が知った頃とは違う、よりプレイフルなケアに進化を続けているとのこと。愉快なメンバーがそろっているGNCが、より愉快なケアになるよう、大切に育ててきたそうですから、ますます身近な仲間や先輩と、いつか楽しみたいと思います。
(まとめ・文 フリー編集者・ライター 下平貴子)

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