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【アカネ落城 4】

『落城』それは……
字の如く、城を攻め落とされる事と、口説かれて拒みきれずに承認する事を意味するらしい。

どちらも、色恋沙汰と似ている様に思える。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

茜の職場はファッションビルだ。
いくつかのフロアにテナントのショップが入っていて、近所付き合いの様に隣り近所のショップのスタッフ同士で、話したりと交流もしばしば……

テナント用の回覧板を持った、隣のショップスタッフがスタスタと、レジカウンターで事務処理をする茜に話しかけた。
「お疲れ様、回覧だよ。」
「お!お疲れ様~!ありがとう。」
回覧板を渡しても、茜の傍を離れない男。
休憩スペースでも、たまに話したりもする間柄の彼は、犀太(せいた)

「最近、よく椿ちゃんと飲み行ってるみたいだね?」
茜は店に入る所を見ていたのかと思い、何の警戒心もなく犀太と話す。
「そうなの、ご飯1人で食べるのちょっと嫌でね。」
「え?彼氏帰りが遅いとか?」
笑顔を貼り付けて茜が言葉を返す。
「違うよ、別れたからだよ。」

これを聞いた犀太は、胸が踊った。
「じゃあ、空いてる日一緒にご飯いこ!」
まさかの言葉に、茜は驚いた……
誘われている事に気付きながらも、久しぶりの事に動揺する。
「あ、うん。全然いいよ!」

茜の返事を聞くと、書くものを借りて犀太は自分のLIMEを書いて茜に渡した。
「これ俺のLIMEだから、都合いい時に連絡して。」
そうして去って行く犀太の後ろ姿を、茜はぽかんと見ていた。
突然の出来事に茜の頭はついていかない。

ただ、この時に茜は『あれ?私って意外と需要あった?』そう思った。

正直なところ、自分はモテないだろうと考えていたのだ。
また彼氏が出来るとも思っていなかった茜に、犀太がどんな話をしてくるのか興味がわいた。

茜は休憩時間にメモの文字を携帯画面へと打ち込んだ。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

犀太は、メンズのアパレルショップで働く店員。
綺麗めカジュアルが良く似合う、少しアウトローな雰囲気の30歳。

茜に彼氏がいるのは、たまに話す休憩室での雑談で知っていた。
その頃から犀太はフリーで、タイミングを待っていたのだ。

犀太は茜の明るい雰囲気と顔が好みで、想いをただ募らせていた。

そんな犀太に朗報が入れば、先手を打たないわけがない。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

あれから、茜は犀太と仕事の合間にLIMEを良くするようになった。
そして「今日さ上がったらご飯行こうよ。」と、犀太からLIMEが届く。
予定がなかった茜は「いいよ!」と返事を返す。

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