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【アカネ落城 10】

茜の中で思い出に変わっていく3人。
その裏にぼんやりと頭の何処かで思い出していたのは卯木だった。

その色や形はボヤけてみえなくとも、茜の頭の何処かでソレに叫んでいた。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「お姉ちゃん!このライブに行きたいんだけど、一緒に行こう!?」
LIMEの相手は茜の妹、紫苑(しおん)
紫苑は26歳で、姉の茜とは仲が良い。

ライブの場所を見ると卯木のいるライブハウスだった。
紫苑は卯木との事は知らなかった。

「なるほどね。」と、思うと、可愛い妹に「聞いてみるね。」と返信する茜。

卯木に久しぶりに連絡をすると、暫くして卯木から返事があり「チケット2枚取っとくから。」
これを伝えると、紫苑は喜んでいた。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

茜は、紫苑とライブに行く。
ライブに夢中になっている間、茜はカウンターにいる卯木と話していた……

「このアーティストさん、人気なんだね?」
「うん、若い子に人気かなぁ。」
2人は普通に会話する。

「あれからどうしてた?」
卯木の質問に、茜は淡々と答えて言った……

彼氏が出来て結局上手くいかなかった事も、好きにはなれなかった事も。

「怒涛のモテ期だった!」
笑って話す茜に、卯木は「そっかぁ。」と、言うと自分の事を話した……

茜の事を考えて、毎夜せつないラブソングを聴きながら泣きはらしていた事や、壱衣とはもう付き合ってはいない事……

茜はそれを聞いて笑った。

「そんな事して、泣いてたの?!」
「う、うん……」

恥ずかしそうに、笑う卯木は「だからさ……」と、言った。

「もっかい、やり直さない?」

言われるかもしれないと予想はしていた、だから答えも用意していた茜。

「うん。」

結局は、卯木を忘れられなかった。
好きになれなかったのは、卯木が好きだったから。

ーー茜は過去の卯木を許す事にした。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

椿が引っ越すとの事で、茜は2人でいつもの居酒屋へ誘った。

「椿に、報告があるんだよね……」

報告とは、今回の結末だ。
椿が「なに?!」と、食いつくと茜は笑った。

卯木とはヨリを戻したが、同棲はしない。
引っ越す予算もないのだが、別々に暮らすくらいがお互いに丁度いいと分かったのだ。

喧嘩も前のようにしなくなったし、茜もストレスフリーに仕事に集中できた。

上手くいっている現状に茜は満足している。

「そっか。まぁ、上手くいってるなら私は満足だよ。」
「この距離感が、丁度いいみたい。」

笑って話す茜は、すっかり3人の元彼の事は良い思い出にした様子だった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

自分にストレスとなる部分は、見なくていい。
そうすれば上手くいくならそれでいい。
恋愛は疲れる……

茜は平穏な日々を手に入れた。

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