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コツをつかむ 

職場での話。必要に迫られて床のモップがけをしていたところ、年配の職員がコツを伝授してくれた。ぼくのモップの使い方があまりにもぎこちなく、見るに見かねて教えてくれたというのが正しい。

ここでほら、くるっと回して…… そうそう、回すのがだいじなのよ。Tさんの言うとおりやってみると、なるほどたしかに効率がよいし、なによりモップがけのプロになった気分だ。まさにモップがけのコツである。

そのコツを用いると、ギクシャクとしていたものがスルスルと動くようになる。もはやちょっとした魔法と言っていい。


ところで、辞書で「こつ」と調べるとものごとの要点や要領、勘どころとある。一発で勘どころをとらえるのはやはり無理だろうから、コツとは長年の経験の上にようやく会得された知恵と言っていい。

そのコツをあっさり伝授してくれるのだ。秘伝のタレなどと言ってもったいぶるのと違い、ああ、なんて太っ腹なことか。教える=教わるという関係には、だから大文字の“愛”が感じられる。


次にモップを使う日がいつになるかよくわからないけれど、そのときはまるで十年選手のような流麗かつ優美な動きでもってぼくはモップを操ることだろう。そしてきっと、コツを伝授してくれたTさんのことを思い出すのだろう。

魔法といえば、10cm(シプセンチ)の歌声を聴くといつも魔法みたいだなと思う。10cmとまではいかなくとも、確実に0.5mmは地上から浮いている。

きのう君が僕を捨てた タイトルはちょっと悲しい。

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