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2025年日本ではじめてのデフリンピックが開催されます


1.デフリンピックについて

国際オリンピック委員会が「オリンピック」という名称の使用を許可しているのは、オリンピックのほか、デフリンピック(Deaflympics)、パラリンピック(Paralympics)と、スペシャルオリンピックス(Special Olympics)4つで、デフリンピックはオリンピックの翌年に開催されています。

2年後の2025年11月15日、デフリンピックは東京で開催が決定しています。1924年の開催以来、初めての日本での大会です。参加国は70~80か国、約3000名が21の競技に参加します。

デフリンピックの特徴は、当事者であるろう者自身が運営を行うという点、そして国際大会のため、国際手話によるコミュニケーションで交流がなされる点です。

以前は国際ろう者スポーツ委員会も、パラリンピックに加盟していましたが、1995年に組織を離れたそうです。理由は国際手話でのコミュニケーションを行うという特徴に加え、聞こえない選手のために配慮された競技環境以外はオリンピックと同じルールで運営するという点を実現するためだったといいます。

日本ろうあ連盟HPより

デフリンピックのカラフルなロゴは「OK」、「GOOD」、「GREAT」を意味するサインが重ねられていて、まさしく「手話」を表しています。また赤、青、黄、緑のカラーは、アジア太平洋、ヨーロッパ、全アメリカ、アフリカの4つの地域連合を意味しているそうです。

選手の出場条件は、補聴器や人工内耳を外した状況で、55デシベル以上聞こえないこと、また、全日本ろうあ連盟に登録していることが必要になります。参考までに55デシベルの目安は、一般的な会話が聞こえないレベルです。公平にプレーするために、競技する際は補聴器や人工内耳をつけることはできないことになっています。

2.ろう者のスポーツ参加への差別

全日本ろうあ連盟の資料によれば、1967年に当時の東京教育大学付属ろう学校の高等部3年の生徒が、男子100M、200Mの決勝で優勝したのですが、その後の関東地区高等学校陸上競技選手権へ出場資格が認められなかった、という出来事がありました。理由はろう学校の生徒であり、聞こえないと危険が伴うというものだったといいます。

その後も、1974年、全国高等学校軟式野球大会福井県予選大会で、福井県立ろう学校が他の県立高校を破り、初優勝を飾ったのですが、県の野球連盟は準優勝の県立高校を県代表と認め、北陸大会へ出場することになったそうです。理由は連盟の規定でろう学校は出場権を与えられないというものだったそうです。その後、この決定に対し全国から抗議の電話や手紙が殺到し、結局、この結果は覆ったそうです。

2004年には聴覚障害を持つ、石井裕也投手が史上初めて、中日ドラゴンズにドラフト指名され、プロ1軍デビューを果たしました。個人の実力、努力に加え、長い間、多くの人が差別と闘ってきたことが歴史を変えてきたのだとあらためて実感させられる出来事です。

スポーツの世界で、実力があっても、根拠のない差別に苦しんできた選手の思いを考えると、差別の根の深さ、機会が平等に与えられない、くやしさはいかほどだったろうかと思います。状況は変わってきたとはいえ、社会に依然として存在する壁の存在についても、私たち一人一人が、関心をもっていくことが必要なのだと感じます。

3.デフリンピックの様々な配慮

①聞こえないことがもたらすハンデ


耳が聞こえないことは、スポーツをする際にどのような影響をもたらすのでしょうか?

1点目は「バランスをとる」ことに支障がでるという点です。内耳の中の三半規管、前庭器官は、体の平衡バランスなどの動きを脳に伝えたり、指令を出す働きをしています。この機能がうまく働かないと、姿勢制御ができなくなったり、めまいがおきたりするのです。

2点目はコミュニケーションの方法が限定されるという点です。チームで行うスポーツは特に、声でコミュニケーションをとる場合が多いと思います。聞こえない場合は、目や表情で合図をしたり、手話で伝えたりという方法になるでしょう。

3点目は音による情報を入手しづらいということです。目で見る情報はもちろん重要ですが、ボールの飛んでくる音、用具に当たった時の音、人の動きにまつわる音などの情報はどうしても限定されてしまいます。

②デフリンピックでの様々な配慮

デフリンピックでは「目で見える」様々な工夫がなされています。陸上競技のスタートの合図はフラッシュランプや音響装置によって知らせます。


日本ろうあ連盟HPより

サッカーやラグビーなどでは審判の笛の合図とともに、旗をあげて選手に知らせます。


日本ろうあ連盟HPより

4.デフリンピックで活躍が期待される競技

デフリンピックで活躍が期待される選手は、たくさんいるのですが、今回はその中で2種目だけになりますが、紹介します。

①デフサッカー男子日本代表

2023年10月にマレーシアで行われた、デフサッカーワールドカップ決勝で、男子日本代表が銀メダルを獲得しました。デフリンピック東京大会での活躍が期待されます。

②デフバレーボール女子日本代表

2017年大会では金メダルを受賞しています。連覇を目指した2021年大会では、日本選手団内で新型コロナ感染を理由に全競技棄権という結果になってしまいましたが、2025年東京大会ではリベンジに燃えています。

5.2025年大会の競技と開催会場のリスト

2025年大会の開閉会式は東京体育館で行われる予定です。競技は全21競技、すでに会場も決定しています。あなたもお気に入りの競技を見に会場に足を運んでみませんか?

Tokyo forward 2025 HPより

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