メルセデス・ベンツ

 まあ今も気持ち悪いんだけど、大学1~2年生の頃は輪をかけて気持ち悪い風貌で、お母さんがあかのれん(愛知県の衣料品チェーンストア)で買ってきたワイシャツと、ダボダボのズボンを着ていて、全然サイズがあってなかった。(お母さんいつもありがとう)他にも色々要因はあるけど、まあとにかく気持ち悪い見た目だったってこと。
 で、軽音部の同期で、かなり美人な女の子が居た。取ってる授業が結構被ってたり、一緒にバンドとか組んだりして、それなりに仲は良かったと思う。授業の都合で空きコマとか一緒に行動する時間があった。わかってると思うけど、もちろん男女の関係などではなく、単に利害関係の一致で行動してるだけだった。が、男と女が二人一組になっていれば、連想するものはただ一つだよね。
 そうして二人で行動したりしていると、たまに三度見ぐらいしてくる人が居たりする。俺は明らかに彼女に釣り合っていない風貌なのである。ジロジロと見られる度に、恋人の見た目ってステータスだよな、と感じた。見た目の良い恋人は、どんなに高い腕時計や、高級車にも勝る。しかし、どうやら俺にはマイナスのステータス付与の効果しかないようだった。
 友人のメルセデス・ベンツを運転させて貰った時、言ってしまえばただの車なのに、それだけで優越感があったのは確かだった。高級車や腕時計というのは良い。金さえあれば買えるし、簡単に装備することができる。金を持っている不細工かもしれないし、納得がいく。しかし、金で人の心は買えないからこそ、シルクのハンカチの横に、ボロ雑巾があるのが、人は不思議で仕方がない。
 

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