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退職後3ヶ月:役所での手続き編

【これまでのあらすじ】
筆者は大学卒業以来、新聞社の資料部門に正社員として勤めていた。しかし鬱病で休職。休職期間中、いろいろ考えた末、寛解の見込みはない、職場復帰しても十分仕事はできないだろうという結論に自分で達した。会社が募っていた希望退職に応じて、2021年5月31日をもって退職。新型コロナウイルスの嵐が吹き荒れるさなか、独りおずおずと亀のように歩み出たのだった……

退職のいきさつについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧になってください。



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退職してから、3ヶ月が過ぎた。
その間、何をしていたのか、書いてみようと思う。

ここでは、役所での各種手続きについて、書く。
知っている人にとってはどうということのない内容だろうが、知らないままで定年退職を迎える人もいるだろう。
いつか誰かのお役に立ちますように、と祈りつつ。

区役所:国民健康保険と国民年金保険

退職してまず行ったのが、区役所。
国民健康保険と国民年金保険の加入手続きをするためである。

特に国民健康保険。これに加入していないと病院にも歯科医院にもかかれない。いや、どうしてもと頼みこめば医療は受けられるかもしれないが、きっと多額の請求が来るだろう。
それに、運転免許証を持っていない自分にとっては、健康保険の被保険者証(以下「保険証」と呼ぶ)は、パスポートと並ぶ重要な身分証明書である。
申し込んでから実際に保険証を発行されるまで、どの程度の時間がかかるのだろうか?
事前にネットで調べたのだが、どのWebサイトにも書かれていなかった。
ならば、早めに動いた方がいい。

必要な書類は、京都市のWebサイトに,一通りアップロードされていた。それらをPCでダウンロードして、自宅のプリンタで印刷して、黒のボールペンで必要事項を記入しておいた。汚い字だったが。
京都市のWebサイトには、郵送でも手続きできると書いてあった。対面での手続きは、新型コロナウイルス感染のリスクがあるためである。でも、わたしは、直接区役所に出向くことにした。一刻も早く、保険証を手にしたかった。
確か国民年金の書類だったと思うが、マイナンバーを記入する欄があった。マイナンバーカードはまだ持っていない。でも、退職する時に提出したたくさんの書類の中にマイナンバーを書く欄があったので、区役所に行って、マイナンバー入りの住民票の写しを取っておいた。その住民票がまだ手元にあった。

※一応注意書き。各種手続きについては、2021年現在、京都市でのものです。実際に手続きなさる際には、お住まいの市区町村のWebサイトをご覧になるなり電話で問い合わせるなりしてください。

結論から書く。保険証は、書類を提出して手続きが終わったその場で発行してもらえた。
手続きにかかった時間は、国民健康保険と国民年金、合わせて30分弱。
こちらが必要書類を一通り揃えていって、(汚い字だったが)不備がなかったのが良かったのかもしれない。

国民健康保険の窓口のお兄さんは、「7月20日すぎに納付書がご自宅に届きます。減免申請をする場合は、8月中にまた来てください」(意訳)と教えてくれた。そういう内容を書いたプリントもくれた。

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予言の通り、7月20日ごろ、国民健康保険料の納付書が届いた。
金額を見て、思わず、目を剥いた。月額約8万円。
国民健康保険料の額は、前年度の収入=税額によって決まるとは聞いていたが、無職の身には高い。
勤めていた時代、つまり厚生健康保険のお世話になっていた時代に払っていた健康保険料は、2万円台だった。もちろん、健保組合と折半しての金額なので、実際はその倍かかっていたということなのだが……

同じくらいの時期に、国民年金の保険料の納付書も届いた。
こちらは月額16,610円。この程度なら払える。
こちらにも減免申請することはできそうなのだけれど、しないことにした。国民年金の場合、減免が認められると、その分、将来もらえる年金が減るらしい。それは嫌だ。
金融機関やコンビニで支払うこともできたが、わたしは、Pay-easyを利用して、ネットで支払った。

8月のある日、わたしは、再び区役所に行った。
今度も、京都市のWebサイトから国民健康保険料減免に関する書類をダウンロードして、汚い字だが事前に記入しておいた。そして、離職票(後で述べる)など会社から郵送されてきた書類と、届いた納付書を添えて、窓口に差し出した。
窓口のお姉さんは、わたしに現在所得がないこと、そして新型コロナウイルスが原因での退職ではないことを確認してから、窓口の端末で即座に計算し直してくれた。
月額約3万円。よかった。これなら何とか払える。
1回目の納付書はその場で印刷して渡してくれた。2回目以降は、後日、郵送されてくるらしい。
意外にあっさり認められるものだ、と思いつつ、わたしは、帰りにコンビニに寄って、1回目を支払った。

ハローワーク:雇用保険の延長手続き

話が前後する。

離職票が自宅に届いたのは、会社を辞めてを2週間くらい後、6月半ばのことだった。
離職票。会社を辞めたことを公式に証明する書類である。
わたしがもらったものは、2枚組の紙だった。1枚にはわたしの生年月日や辞めた会社名などが印刷されていた。もう1枚には、もっと詳しいデータ、つまり過去1年間にわたしが会社でもらっていた賃金(税込み。実際に振り込まれていた金額はこれより安い)や退職理由が印字されている。

ハローワークでの手続きについても、事前にネットで調べた。しかし、Webサイトによって書いてあることが違って、混乱した。
手続きには2つのルートがあるようだった。
1つは雇用保険、以前は失業保険と呼ばれていたお金をもらう手続き。離職票の1枚目には、振込先の口座を記入したり顔写真を貼ったりする欄がある。
もう1つは雇用保険の延長をする手続き。
わたしの場合、どちらが該当するのだろうか?

「雇用保険の延長」というのも、今ひとつ分からなかった。
最長3年延長されるということだが、その間、お金はもらえるのか、否か。明確に書かれているWebサイトが見つからなかった。。

以前読んだとある漫画も、混乱の原因となった。
主人公の女性は、序盤でメンタルを壊して会社を辞める。その後、主人公は、働く気がないのに、雇用保険をもらうために、ハローワークに行って仕事を探すふりをしているという描写があったのだ。
ということは、メンタルを壊していても、雇用保険はもらえるということなのだろうか?

6月後半のある日、わたしは、2枚の離職票を持って、ハローワークに出かけた。
どちらに転んでもいいように、一応、駅前のヨドバシカメラで顔写真を撮ってもらった。撮ってくれたお兄さんが使ったのは、富士写真フイルムのもののように見えた……これはどうでもいい情報だが。

窓口のお姉さんは、わたしが主治医から就労の許可をもらえていないことを確認すると、「雇用保険の延長申請をするように」(意訳)と言った。
ただし、実際の手続きができるのは、離職後1ヶ月経ってから、つまり7月に入ってからになるということだった。
書類を書いて、離職票と一緒にお姉さんに預けた。医師の診断書の類は求められなかったが、書類には病院名と主治医の名前を書く欄があった。きっと、主治医のところに確認がいくのだろう。

お姉さんははっきり言った。「雇用保険は最長3年延長されます。その間、手当は発生しません」。
手当が発生しない、つまり、その間、お金は出ないということだ。

ということは、あの漫画の描写は……?
主人公はメンタルを壊した、といっても症状が軽くて医師から就労の許可が出ていたのか? それとも……?
……まあ、深く追及はするまい。

書類一式は、7月上旬、ちゃんと返送されてきた。
就労が主治医から認められたら書いて提出するように、という紙も同封されていた。
つまり、ハローワークから、「届け出なしに働いてはいけない」と公式に言われた、ということになる。

再び区役所:自立支援医療と精神障害者保健福祉手帳

「自立支援医療(精神通院医療)」については、説明が必要だろう。

国民健康保険でも厚生年金保険でも、通常、診療科を問わず、患者側が負担する医療費は3割である。しかし、この制度を利用して精神科にかかると、医療費の負担がが1割になるという制度である。

つまり、仮に精神科で1万円の医療費が発生した場合、通常、患者側が負担する医療費は通常は3000円。これが、1000円になるという。差額は公費で穴埋めされる。

もちろん、無条件で、ではない。
都道府県又は政令指定都市が指定した「指定自立支援医療機関」でしか適用されない。かつ、利用する病院と薬局を、1ヶ所ずつ(場合によっては2ヶ所認められるケースもあるらしい)、事前に届け出ておく必要がある。継続して通院する必要があるという主治医の診断書も必要になる。
つまり、精神科に通い始めたばかりの患者や、あちこちの病院にドクター・ショッピング的にかかっている患者には、この制度は使えない。

この制度の存在はだいぶ前に知った。だが、これまで利用していなかった。主に所得の問題である。
でも、今のわたしに所得はない。使えるものは何でも使おう。そう思った。

精神障害者保健福祉手帳(以下「手帳」と呼ぶ)についても、その時調べた。
等級には三種類ある。
一級は「日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」。
二級は「日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」。
三級は「日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの」とのことだった。
よく分からないが、一級が一番重い症状であることは分かる。
申し込み窓口は区役所の、自立支援医療と同じ窓口。ならば、一緒に申請してみよう、と思った。

正直なところ、今のわたしにとっては、手帳を持つメリットはあまりない。展覧会や映画の入館料が割引になることがある、その程度である。
むしろ、好奇心の方が大きい。主治医に就労を止められている、日本国憲法に定められた三大義務の一つ「勤労」が果たせない状態の自分。そんな自分が、果たして障害者と判定されるのか、いったい何級に判定されるのか知りたい。

7月のある日、精神科の診察室で、わたしは主治医に頼んだ。「自立支援医療と手帳の申請のための診断書を出してください」。
主治医は、「病院の受付で申し込んでください」と教えてくれた。
会社を休職する時に上司に提出した診断書は、主治医に頼めばその場で発行してもらえた。しかし、決まった書式のある、役所に提出する書類の場合、それなりの手続きと日数と費用が必要であるらしかった。
診察を終えて、会計を済ませてから、病院の受付で申し込んだ。自立支援医療と手帳を同時に申請する場合、診断書は手帳用の1通でいいらしい。それでも、5500円かかると聞いた。会社に提出していた診断書の倍額。
でも、やむを得ない、と思った。京都市のWebサイトで診断書の書式を見たところ、A3サイズの決まった書式に、たくさんのことをこまごまと記載するようだ。これは手間がかかる。主治医に少しでもお手当や手数料のようなものが病院から払われるといいな、と思った。

何日か後に病院の受付で受け取った診断書の封筒には、しっかりと封がされていた。だから、中の診断書に何が書いてあったのかは知らない。
その封筒と、健康保険証のコピーと、例によって京都市のWebサイトからダウンロードして汚い字で記入した申請書を持って、わたしは区役所に出かけた。
手帳の申請には顔写真が要る。ハローワークに行った時に撮った写真のデータがまだあったが、今ひとつ気に入らなかったので、四条通沿いのカメラのナニワで改めて撮ってもらった。撮ってくれたお姉さんが使ったのは、Canonのカメラだった……と、ここでも余計な情報。

※念のためもう一度。各種手続きについては、2021年現在、京都市でのものです。実際に手続きなさる際には、お住まいの市区町村のWebサイトをご覧になるなり電話で問い合わせるなりしてください。

窓口のお姉さんは優しく素早く手続きしてくれた。診断書の封は、わたしの目の前で切られることはなかった。
提出した書類に不備がないことを確認すると、日付印を押して、控えを渡してくれた。「自立支援医療については、今度病院や薬局に行った時にこの控えを見せて『現在手続き中です』と言ってください」(意訳)とのこと。
正式な証明書や(判定が通れば)手帳は、後日発行されるということだった。

そして、今は、それらを待っているところである。

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これで、お役所通いの日々は、ひと段落ついた。
次に行くとすれば、来年春の確定申告。それも、ネットで済ませるつもりである。

今回、わたしが接した役所の窓口の人たちは、みんな親切だった。少なくとも、わたしの基準では。
なのに、どうして、役所に行くのは、こんなに緊張するのだろう……

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