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【社会保険の二以上事業所勤務者とは?】届出方法や、保険証の取り扱いについて、わかりやすく解説


「現在経営している会社のほかに、新しく会社を立ち上げることになって…」


「今、A社で働いているんだけど、今度B社にも役員で入ることになって…」


「来月から、ダブルワークをすることになって…」


複数の会社に勤務することになった場合社会保険の加入はどうしたらよいのでしょうか?


今回は、複数事業所に勤務することになった場合の社会保険の加入について分かりやすく解説します!



■「二以上事業所勤務者」とは?

〇「二以上事業所勤務者」とはどういう人?【具体例】


「二以上事業所勤務者」とは、

①同時に複数(2ヵ所以上)の会社(適用事業所)に勤務し、

②かつ、複数の会社で社会保険の加入要件を満たす人

をいいます。


なお、ここでいう社会保険とは、「健康保険・厚生年金保険」を意味します。

では、実際にどのような人が「二以上事業所勤務者」に該当するのか、具体例をみていきましょう。


【例1】
「現在経営しているA社のほかに、新しくB社を立ち上げることになって…」

A社でもB社でも代表取締役(常勤役員)に就任するなら、「二以上業所勤務者」に該当
※「常勤役員」は適用事業所において1円でも報酬を受けることとなると社会保険の加入要件を満たします


【例2】
「今、A社で働いているんだけど、今度B社にも役員で入ることになって…」

①A社で社会保険に加入している+B社で常勤役員に就任=二以上事業所勤勤務者に該当

②A社で社会保険に加入していない+B社で常勤役員に就任=二以上事業所勤務者とはならない(B社でのみ社会保険加入)


【例3】
「今、A社で働いているんだけど、今度B社でもダブルワークすることになって…」

①A社で社会保険に加入している+B社では社会保険加入要件を満たす=「二以上事業所勤務者」に該当

②A社で社会保険に加入している+B社で社会保険加入要件を満たさない=「二以上事業所勤務者」とはならない(A社でのみ社会保険加入)

③A社で社会保険に加入していない+B社では社会保険加入要件を満たす=「二以上事業所勤務者」とはならない(B社でのみ社会保険加入)


「二以上事業所勤務者」に該当すると、必ず届出が必要になります。届出方法は後述で説明します。


〇雇用保険に複数加入は無い!

一方、雇用保険については、複数事業所に勤務することとなっても、同時に二以上の事業所で加入することは、今のところできません。※

生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係にある会社(受ける賃金の多い方)で加入することとされています。

※雇用保険の二以上事業所加入については現在検討中とのこと。
https://note.com/goal4864/n/nb95603c8b12c#1b35ba7f-3c5e-4ee8-ae90-cba71eb57d7←こちらの記事の「適用拡大の検討に当たっての留意事項」を参照
※例外「雇用保険マルチジョブホルダー制度」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000136389_00001.html

■「ニ以上事業所勤務者」になると、どうなるの?

〇保険料が変わる!

社会保険料は、被保険者が会社から受ける報酬によって決定されます。

「二以上事業所勤務者」になると、それぞれの事業所で受ける報酬月額を合算した月額により標準報酬月額を決定します

〇保険料は事業所ごとに納める

保険料は、それぞれの事業所で被保険者から徴収し、納付する必要があります。各事業所で納める保険料は、上記で決定された標準報酬月額による保険料額を、それぞれの事業所で受ける報酬額の割合で案分したものになります。

<例>
・標準報酬月額 300千円
・A社の報酬 20万円
・B社の報酬 10万円
・健康保険料15,000円、厚生年金保険料27,450円

【A社で納める健康保険料・厚生年金保険料】
15,000  ×  20万円/30万円  =  10,000円(健康保険料)※
27,450  ×  20万円/30万円  =  18,300円(厚生年金保険料)※

※さらに労使折半した金額が被保険者の負担額


■「二以上事業所勤務者」になったときの手続き

①「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択/二以上事業所勤務届」を提出


二以上事業所勤務者に該当することとなったら、「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択/二以上事業所勤務届」を選択事業所を管轄する年金事務所(事務センター)に提出します。

これは、二以上事業所勤務者の主たる事業所を決めるための届出になります。

複数事業所に勤務するといっても、保険証が二枚、三枚と発行になるわけではありません。どこの事業所の保険証を持つか、被保険者自身が選択する必要がある、ということです。

主たる事業所を「選択事業所」、それ以外を「非選択事業所」と呼びます。

一般的に、報酬の多い事業所を選択される方が多いですが、そうしなきゃいけない、という決まりは特にありません。被保険者に、お好きな事業所を選択してもらってください。


② ①と同時に「健康保険・厚生年金保険 資格取得届」を提出


「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択/二以上事業所勤務届」に記載するすべての事業所において、社会保険の資格を取得する必要があります。

届出先は「選択事業所」を管轄する年金事務所(事務センター)です。

つまり、「非選択事業所」での資格取得の場合も、届け出先は「選択事業所」を管轄する年金事務所(事務センター)になります。

なお、会社の設立直後で同時に「新規適用届」の提出が必要な場合は、「新規適用届」「資格取得届」「二以上事業所勤務届」の3つを提出することになりますが、その場合の届出先は、必ずしも選択事業所を管轄する年金事務所(事務センター)とはならない可能性がありますので注意が必要です。

どこへ提出すれば手続きがスムーズに進むか、事前に年金事務所に問い合わせると良いでしょう。


③保険証が届く


①と②の届出から間もなくすると、選択事業所宛に、必ず、新しい保険証が届きます。

「えっ!選択事業所を変えていない場合も届くの?」

届きます。もともと選択事業所での保険証を持っていて、ただ非選択事業所が増えただけという場合も、被保険者番号が変わるため、必ず新しい保険証が届きます。

古い保険証は従業員から回収し、選択事業所を管轄する年金事務所(事務センター)に返却してください。


④通知書が届く【保険料の確認】


届出が受理されると、各事業所宛に「二以上事業所勤務被保険者決定及び標準報酬決定通知書」が届きます。

この通知書には、その事業所で納めるべき「二以上事業所勤務者」の社会保険料が記載されています。
表示されている保険料は労使折半前の金額になりますので、その半額を従業員から徴収しましょう。



■おわりに

今回は、「二以上事業所勤務者」になった際の手続きについてご紹介しました。さまざまな働き方が増えてきている今、会社の従業員が「二以上事業所勤務者」に該当するケースも少なくないと思います。

従業員が副業を開始したら必ず報告をしてもらうこととし、「二以上事業所勤務者」に該当するのかしないのか、判断が必要です。


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