課題の法的保護プロジェクトを!!

年末年始。クライミングコミュニティを震撼させる事件が発生しました。それは貴重なボルダー課題が意図的に改変された(チッピング)という情報でした。SNSは悲しみと怒りにあふれました。

岩がダイナマイトで破壊されたわけではありません。削られた岩の量は少量です。一ヶ所につき数ミリでしょうか? クライマーでさえ変化に気づかないかもしれません。「じゃあ、なぜ大騒ぎになるの?」クライマーでない人はそう感じるに違いありません。

どう説明すればよいのでしょうか、クライマーなら言葉を交わさなくとも共有できるこの気持ちを。クライマーはいくつかの特性を岩に投影しています。これらを使ってクライマーという種族が全身全霊をかけて既成課題のチッピングに抗議する理由を説明してみます。

唯一性。
この岩は世界に一個だけ。ジムの課題であれば壊れても再現できます。でも岩は壊れたらそれっきり。その課題へのトライができなくなります。永遠にお別れです、修復できないかぎり。

永続性・不変性。
岩の多くは課題を見出した者たちが去った後もそこにある、ずっと、同じ姿で。だからこそクライマーたちは世代を超えて語り合えるのです。ときに熱く、ときに静かに。

尺度性。
岩の課題は世界中のクライマー共通の物差しです。例えば、ある課題は「これがV10だよ」とその難しさをトライしたクライマーに教えてくれます。同時に「これを登れば君は V10を登る力の持ち主だよ」とも教えてくれるのです。

その岩がわずか数ミリでも削られたらどうなるでしょう? すべてはだいなしです。あの日、私たちクライマーは大切なそれらすべてを理不尽に奪われたのです(もし削った人がクライマーで異議があるなら理由を説明する道義的責任があります)。

もうNO CHIPPINGの啓蒙だけでは既成課題の保護には不十分だ。
既成課題を法的に保護するプロジェクトを始動すべきだ。

あれから約4ヶ月。既成課題のチッピング問題について本誌はそう考えています。

GoClimbing 第2号 巻頭言より

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