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(70日目)エピソード

自分のことを「アウトボクサーな猿」だと思ってる。

寂しい寂しいとキーキー泣いている。
ある程度の距離感で群れにいると落ち着く。
おだてられるの大好き。好奇心旺盛。
しかし、同時にものすごく不安がりの怖がり。

この最後の特性からか、ぐっと距離を縮められると、寂しい、人恋しい、安心、という感覚から、一気に「不安」「怖い」という感覚に切り替わる。

身体がこわばる。

「あなたの恋人候補にしていただけませんか?」

初めて会った方だった。

初めて訪れた美術館で、
初めて会って、
そのあと一緒に見て回って、館内で休憩していたときの出来事だ。

会って2時間たっただろうか?分からない。

彼女はおもむろにマイナンバーカードをぐっと僕の目の前に見せて、「私はこういうものです」と言わんばかりに僕の目の前に押し出し、そしてまさしく同じような言葉を僕に発した。

日本人で女性か男性かはわからなかった。

多分、女性だ。

声が美しい人だな。
はっきり、そしてすぐに自分の思っていることを表現する人だな。
歯の形が気になるなぁ。(すべての歯の真ん中が窪んでいる)
独特な言葉の言い回しをするなぁ。(英語圏の方が日本語をしゃべるような日本語)
黒を好んで着ているんだろうなぁ。
全体的にはなんとなくミステリアスで好みの雰囲気なんだよなぁ。

自分の五感の知覚を使って観察し、そしてこの提案を受け入れられるかどうか気持ちを吟味する。

まず、すぐに出てきた感情は「拒絶」だった。
緊張。軽い吐き気。危ない。危険だ。この場をどうやり過ごそうか。
その次は「保身」。相手を傷つけたくない。同時に自分も傷つけたくない。

女性に対する根源的な欲求よりさっさと危機回避と保身に舵を切る僕の脳みそ。
とっても優秀。生きるためにフル回転だ。

ある本で不安をつかさどる偏桃体という場所は「火災報知器」のような存在で、その設計は「なんとなくでも危なそうならとりあえずアラームならしとけ」的なまぁなんというか制御でいうとかなりリスク回避全振り型らしく。

たださぁ。
女性とお近づきになったり、ちょっとアバンチュール(昭和)みたいなことしても、ねぇ。死なないよ?大丈夫だよ?今フリーだろ?いいじゃん。

ってかそれくらい楽しませて体験させてくれよ。僕の好奇心を殺さないでくれよ。

とまぁ。ねぇ。
そんなうわべの説得で脳を制御できていたら苦労しないわけで。
こちとら紀元前云万年前から脈々と受け継がれて変化し続け激しい環境に適用するために形作られた脳みそ様なんでぇ。てやんでぇ!ってなもんだ。

僕の遺伝子は何か昔こういった人間関係で危機的状況?(痴情のもつれ?男女間のいざこざ?六本木心中?)をいくつも体験し回避し、その結果僕がいるのだとしたら… ご先祖様はさぞかし苦労しただろうなと思いつつ。

そんな経験せんでも程よいエロい人となんも考えず「のぺーっとへらへら」暮らしときゃよかったんじゃん?なんて思ったりするが、仕方がない。

そして、多分、というかそういうことできる人間は間違いなく僕じゃないよな、なんて自己肯定しつつ

彼女への返事は、もちろん、まだしていない。
たぶん、ずっとしない。

***
点滅社の「鬱の本」という本をたまたま手にし、いろいろな方のいろいろなエピソードを読むうちに「自分の鬱の話も書きたい」と思い書いてみました。

PS.
青木真兵さん。「うつをベースの社会に」めちゃくちゃ賛成です。

100回くらい首肯しました。首ちぎれそう。





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