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(59日目)僕の肉


ビニルケーブルの長さを図る。
ぴったり、50mm。

そっと被覆にカッターを添えてケーブルの円弧に流れる外径に沿って切っていく。切り終わったらケーブルの方向に一本筋を入れるように切り込みを入れる。

そして、ケーブルの被覆をパカっと開きつつ中の配線をむき出しにする。
内線の一本一本を丁寧にしごく。
すこし曲がりやすくするために。

そして、圧着端子をつけるために配線の被覆を剥ぐ。

使い慣れたワイヤーストリッパーの感触を確かめ、被覆と一緒に中の寄り線も切ってしまわないよう注意してそっと被覆をはぐ。

軽く内線を摘み、よじる。

指で直接触ると手の油脂が付着してしまうので被覆は半分ほど抜いて、その被覆を摘んでよじるのがコツだ。

よじった後は圧着端子を専用の圧着工具にセットし、被覆を剥いた配線に近づけ、良い位置でグッと一気に圧着する。

少しコシの強い配線の表面、そして中線の細かさを指の腹で感じる。
圧着した時のかすかなフィードバックを感じて、きちんと圧着されたかどうかを確認する。

こう言った作業をしている時、ぼくは確実にゾーンに入っている。

「前よりも上手く。前よりも美しく。」

心の中で唱える言葉だ。

ぼくはだんだんと配線や圧着工具たちと一緒になっていく。

彼らはすでに僕の肉だ。

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