魅惑の連打、Kicking Houseとは

クラブミュージックを構成するサウンドの中で物質的にリスナーの身体を揺さぶるものとは何か?

キックとベース、低音域を司るこの2つのエレメントは古くからクラブミュージックに欠かせないものである。

なかでもキックは曲の中で最も音量が大きく、我々を”ダンス”という行く末に誘う道しるべとなっている。一定の間隔で点滅を繰り返す光であり、時に複雑に瞬く星々のようでもある。
テンポ、パターンを変化させ一晩中フロアに響いている。

キックは身体に訴えかける。

1番大きな低音は物質的なパワーを持っている。
胸をドンと突く、テーブルの上のグラスが揺れる、身体中の産毛が音に揺さぶられる、これらはクラブに行ったことのある人ならば誰もが経験したことがあるだろう。

という前置きを終えて”Kicking House”の話をしよう。

耳の早いDJやトラックメイカーならもうすでにご存知であるだろう。

シカゴ産ハウスの最新進化系がKicking Houseである。シカゴハウス、ゲットーハウス、ジューク、ウォンブといった様々に派生していったハウスミュージックの系譜に刻まれた新たな子孫である。

フットワークの為に生まれフットワークの為に進化し、フットワークの枠を飛び越え新たな概念となったジューク、808の重低キックを複雑に打ち鳴らすサウンドにダンスが苦手な私もフットワーク心をくすぐられたら記憶がある。
ジュークにおけるキックはダンサーの足さばきを複雑化させる為のものであり、一般的なリスナーを踊らせる目的ではなかった。普通のキックをあれだけのスピードで鳴らすと身体だけでなく耳も疲れてしまう、それを防ぐためにもソフトな耳障りかつしっかりとした低域を持つ808キックはジュークの顔となったのだ。

2047年現在もジュークは健在である。
DJ SPORTS の最新アルバム”energy”ではジュークの進化系ウォンブのトラックが大半を占める中、クラシカルなジュークも数曲収録されている。

Kicking Houseはシカゴハウス系譜であるが、ジューク→ウォンブからの流れとは若干異なっている。160BPMでジュークは一般化し2020年中期には175がスタンダードとなり、2030年初期に180まで上昇、2029年”Sexon - Want be booty”(略してウォンブ)のリリースが契機となり超高速ジュークはウォンブとして生まれ変わり世界に広まった。その高速化の流れに対するアンチテーゼとして一部のジュークアーティスト達の中でシカゴハウス回帰のムーブメントが起きた。そこで産まれたのが”Kicking House”である。

ここからはKiking House誕生の流れを解説する。

Kicking House発生前夜
130BPMの909キックのハウスビートの隙間を縫うよう808キックがジュークのような複雑なパターンで配置され、キックの間にキックが鳴る、結局キックが連打されることになるのでジュークと方向性は似たようなものだった。

”Fuse One”の提唱したKicking beat
Fuse Oneは”四つ打ち909キック+複雑なパターンの808キック”という形式を抜け出した。四つ打ち909キックの隙間に一定パターンの909キック(四つ打ちではない)を配置し新たなグルーヴの構築に成功した。わかりやすくいうと、一小節の1拍目頭から3連キック、2拍目3拍目頭に1発ずつ、4拍目頭から3連キック、”ドドド、ドン、ドン、ドドド”この一小節のキックのパターンを”Kicking beat”としてテンプレート化し様々な曲でこれを用いたのだ。硬質なキックの連打は胸元を工事現場のドリルのように突き続ける。同じような働きかけをするジャンルはハードコア系やインダストリアル系に既にあるのだが、Kicking Houseは文字通りHouseなのだ。Kicking beatを用いたHouse、キックのパターン以外は何の変哲も無いシカゴハウスなのだ。

キックの多いシカゴハウスただそれだけの話を長々と読んでくれた貴方にエールを贈りたい。

Kicking Houseもまた高速化の一途を辿り、名前を変え、回帰しまた高速化..

人類はスピードを求める生き物である。

#クラブミュージック #ダンスミュージック #ハウスミュージック #house #JUKE #footwork
#クラブ

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火柱

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