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かってに島本新聞 再掲(かってに島本新聞第4号掲載内容) 幻想的な初夏の風物詩を守りたい

島本町でホタルと言えば水無瀬川が有名ですが、桜井(島本駅西地区)の御所が池周辺でも五月から六月上旬にかけてヒメボタルが見られます。ゲンジボタルに比べて知名度は低いですが、パッパッパッと断続的に光る様子は幻想的で、緑地の初夏の風物詩にふさわしい存在です。大阪府の準絶滅危惧種に指定されている希少な存在は、開発によりその生態が脅かされようとしています。

生息地ごとの固有性

ヒメボタルは、体長がオス9㎜、メス7㎜程で、ゲンジボタル(オス約15㎜、メス約17㎜)やヘイケボタル(オス約10㎜、メス約12㎜)と比べて小さく、幼虫の生態もゲンジボタルやヘイケボタルが水生なのに対して、ヒメボタルは藪や草地で陸生の貝類(オカチョウジガイ、キセルガイ等)を食べて成長します。成虫は緑地に生息し、カメラのフラッシュのように断続的に黄色く光ります。最大の特徴としてメスは後翅(こうし)が退化していて飛ぶことができません。よって生息地によって固有性が高くなります。また、水無瀬川のゲンジボタルの活動が20時前後に活性化するのに対して、桜井のヒメボタルは23時前後に活性化します。活動期間も短く、町内でも知名度は低いようです。

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生息地での絶滅の危機

桜井では島本駅前開発が行われており、計画上は、広瀬桜井幹線より西側の、御所が池の周辺を「農住エリア」として田畑を保全する地区としています。ただし、「当面は」という前提がつき、いずれ宅地開発を可能にする為に生活道路を通し、一旦更地にする計画です。開発関係者は「ホタルだから飛んで移動するだろう」という認識ですが、ヒメボタルは前述の通りメスは飛ぶことができない為、そのまま開発が進むと生息地での絶滅の危機に瀕しています。

有志が生態調査へ名乗り

保全の為には生態の確認は不可欠です。町内在住のAさんはじめ住民有志は、工事代行者の(株)フジタに協力を仰ぎ、農住エリア予定地区でのヒメボタルの生態調査に乗り出しました。Aさんは「島本緑と水を守る会」の会員として動植物の観察会に参加する傍ら、二十年以上も町内のヒメボタルをはじめゲンジボタル、ヘイケボタルの調査を続けています。Aさんたちは十月から十一月にかけて御所が池周辺の緑地にて、仕掛けを設置して、十頭以上もの幼虫を捕獲し、生息を確認しました。(株)フジタの調査の中間報告では、「名神高速沿いの緑地では生息を確認できたが、御所が池周辺では確認できなかった」とされているところでした。

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豊中では市が保全活動

豊中市春日町では、生息地を守る為、「春日町ヒメボタル特別緑地保全地区」を指定して市が保全活動を後押ししています。桜井では二丁目の古民家跡でもヒメボタルが見られましたが、今は更地になってしまいました。生物多様性を顧みない開発の中にあって、希少な初夏の風物詩の生息地を何とか保全しようと活動する人々に心打たれました。来年もその幻想的な光を拝めるよう島本町でも保全の方向に舵を切ることを切に願います。

2020年12月1日

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