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なぜ、YCC修正の緊急性が乏しいと言えるのか

先週末、ブルームバーグから「日銀は現時点でYCC副作用に対応の緊急性乏しいと認識」という報道があった。話題になったので記事を読んだ方も多いだろう。

一ヶ月ほど前に、これについては解説記事をアップしているが、明日の会合を前にもう一度書いておく。

YCCの維持について、日銀が懸念していたのは債権市場の機能低下である。

債権市場サーベイ

そして、日銀が4月の会合でその機能度を測る上で"注目している"と言及した調査が「債券市場サーベイ」だった。4月会合の主な意見に記載がある。

国債金利の指標金利としての機能度など、市場機能は、依然低いままとの声が多い。イールドカーブ・コントロールは、円滑な金融を阻害している面も大きいと感じており、今後の債券市場サーベイ結果に注目している。

4月会合、主な意見より

この調査は生命保険、損害保険、投資信託委託会社などを対象として、債券市場の機能度や長期金利の先行き見通しなどについて質問をしたものだ。

四半期に一度行われるこの調査は、4月会合の後では5月に発表されている。

2023年5月の債権市場サーベイ結果

その結果がこちら。

今年に入ってから、植田総裁のハッキリとした緩和維持の方針の表明もあり、イールドカーブの歪みが解消されたこともあり、5月時点で機能度はかなり改善していた。

※イールドカーブの歪み

一般的に償還(返済)期間が長い国債ほど利回りが高くなる。しかし、日銀によるイールドカーブ・コントロールによって10年債の利回りが抑えつけられ、グラフを見た時にそのポイントだけ凹んでいるのがイールドカーブの歪み。

5月の債券市場サーベイが公表された後も、債権市場は比較的落ち着いていて、昨年末のような歪みは生じていない。

これがYCC修正の緊急性が乏しい理由の1つだ。


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