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当選&モデル商法その2

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本日のお題:当選&モデル商法その2
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/

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■当選&モデル商法その2

先週の続きです。今週からメルマガをお読みいただいている方は、noteにバックナンバーを置いておりますのでそちらの方を先に読んでから今週号をお読みください。「note 呉服のきくやてんちょ」で検索すると出てきます(メルマガの仕様上外部リンクを書くことができず申し訳ございません)。

昔は当選商法は「着物は当たりましたけれど、転売防止のために必ず仕立てて帯も買ってください」という注意書きが小さく書かれておりました。モデル商法でもほぼ同じで、ファッションショーのモデル(または地域のミニコミ誌みたいなもの)に参加するためには帯も必要だから必ず購入してください、と但し書きが添えられていました。いわゆる抱き合わせ商法や有利誤認などコンプライアンス的にかなり問題のある商法なのですが、この商法が流行ったのは30年ほど前で「不適切にもほどがある」ことが今の感覚では考えられないほど多々行われていたんですね。

当然その時に購入していただく帯には着物代も上乗せされています。このメルマガを読んでいるような着物マニアの方ですと自分でコーディネートしてああでもない、こうでもないと考えるのも着物の楽しみの一つなんでしょうけれど、当時の展示会に来られるお客様はほとんどの場合コーディネートはよくわからないから呉服屋にお任せで着物を買ったら(今回は当選したものですが)帯、そして帯締め帯揚げも同時に購入してトータルでコーディネートして揃えるということが非常に多かったのです。なので着物が当選したら必ず帯を購入してください、といわれても今考えるほど抵抗感が少なかったかもしれません。

ただ、先ほど書いたようにこの方法は法的にかなり問題がありまして、実際には全員当たるのに「あなただけ当選しました」と偽ること、モデルになりませんかという勧誘方法などは景品表示法により禁じられている「有利誤認」(取引条件が実際より有利であると誤認させる)、帯を一緒に購入するのを強制することは独占禁止法で禁じられているいわゆる「抱き合わせ商法」です。当時は今から考えると「不適切にもほどがある」時代ではありますが、当時であっても明確に法的に規制されていましたので「当時はそんな時代だった」というのは通用しませんね。

それは呉服業界も気づいたのか、その次の波(注)の時には少し進化いたしました。先週のメルマガに「全員当たったのは昔の話かなぁ」と書きましたがその通り、全員に当たらなくなってしまいました。

注:あくまでも私の感覚ではありますが、こういった呉服の催事の企画は何年かに一度のサイクルで同じような企画が流行ります。

え?と思うでしょ?全員には当たらないんですよ。

当選商法という点では同じなのですが、お得意さんにはあまり声をかけず、以前に振袖を購入してくださったお嬢様やそのお母様相手に往復ハガキを送りつけたり、営業がお伺いして応募を勧めるのが基本です。振袖を購入してくださったお嬢様やそのお母様は基本全員当選。その他の着物をたくさん持っているであろうお得意さんは人を見てハズします。

今回の企画は「帯を必ず買ってください」と言ってしまうと法律違反になってしまうので(当選しましたもダメなんですが)、着物の表地と(建前の)転売防止のための裏、お仕立てのみお願いするということになりました。お客様から頂く胴裏+解き端縫い代+お仕立て代+ガード加工などで…うーん、いくらだったかなぁ。もう古い話なので曖昧ですが6-7万ぐらいだったように記憶しています。胴裏+解き端縫い代+お仕立て代+ガード加工で何とか損をしないようにしているため、単衣仕立でガード加工無し、なんて言われるとちょっと冷や汗かきました笑。

タイアップの問屋も利益ほぼ無しで表地は提供してくれるので、お客様からいただくお代が6-7万になると赤字にならないギリギリのところまで持っていくことができます。でもこれで終わってたらただの原価提供ですので利益も得られないし何の意味もありません。ところが、ここで気をつけていただきたいのは基本的に当選しているのは振袖を購入してくださったお嬢様だったりそのお母様なんですよ。つまり、今まで呉服屋とは特に取引をしておらず、おそらく着物や帯を全く持っていないということが予想できる層なんですよ。

当時はまだお嫁入り道具に訪問着や留袖、黒紋付などを持っていくのが当たり前だった時代です。成人式が終わった後のお嬢さんでしたら少しずつお嫁入り道具を揃えていくのが一般的でそれが呉服業界の売上を一端となっておりました。お嫁入りのために少しずつ貯金をしている親御さんも少なくなかった時代ですから、成人式が終わったお嬢様に訪問着が当選して、ついでに帯を勧められると「じゃあ一式コーディネートして頂こうかしら」と一式セットでのお買い上げとなるのです。帯に着物の表地代が乗っているのでやや割高にはなっていますが…。

もうお気付きのように帯を買っていただかないと全く利益が出ないため、お得意さんで帯を何本か持っていて自分でコーディネートできる方はハズします。成人式を終えたお嬢さんなどほぼ着物を持っていない方に当てるのが鉄則。ただし、お得意さんは普段からよく店に出入りしていてそういった展示会があるのを知られてしまう(言い方…)ので、全く勧誘しないとお叱りを受ける場合があるので(なんでこんなお得な企画教えてくれないの?などと言われる)、勧誘した上で「ハズれました」と連絡することになります。いつもお得意さんにはお世話になっているので当てたいところなんですが、この企画のために卸問屋が提供してくれる超特価の利益無しの着物の枚数にも限度があるのでハズさざるを得ないのです。品物に余裕があるときには当てることもありましたが…。

そして第三波目(笑)。

そろそろ不適切にもほどがある当選商法は使えなくなってきました(…といっても先週の冒頭に書いたようにまだやっているところはあるようですが)。当選商法の代わりに訪問着2000円という企画に進化いたしました。もちろんこれも「転売防止のため」胴裏とお仕立て、ガード加工は必須でした。「転売防止のため必ずお仕立てはしてください」というのが法的にどうかまではわかりませんが、以前の完全ブラックから少しグレーぐらいまでにはなってきたと思います笑。

時代に合わせて変化してはきていますが、基本いびつなやり方であることは間違いありません。当選だとか訪問着2000円などというのはやはり商品を作った職人さんたちも複雑な思いでしょう。しかし、今までこういった企画で販売してきた店は企画や目先の安さ(安く感じさせる)でお客様に購入していただいている、いわば「売上の先食い」になってしまっているので、お客様側もこういうものを求める層が残ってしまい、普通に商売をしようとしても全く売れないためそこから抜け出せなくなります。

でもね、やっぱりこういう歪な商法ってあまり感心できるやり方ではないですし、着物の好きな方、興味を持ってくださる方って、あくまでも私の主観ではありますけれどそういった歪な商法やごまかし、まやかしのような商法を見抜く力のある方が多いように思いますので、決して長続きしない商法なのではないか、と思うんですよ。

今回紹介したような商法をやっておられる店も頑張っておられるのは十分承知しておりますが、やはりできるだけ早くそういったまやかしの商法はやめて本当の店の力、着物という商材の力で勝負していくべきではないか、と思います(法律違反は論外ですよ)。そしてそういった少しの努力が着物業界が健全化していくのではないでしょうか。

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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022
https://www.kikuya.shop/

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